蝉蛻

姦しい蝉吟と扇風機の生温い風が鬱陶しくなり目を覚ました。甘い物で腹を満たしたような、うざってえ満腹感と似た気分だ。陰鬱な気分の中、最寄駅への隘路を注視して歩いていると、蝉蛻が散見できることに気付く。先程は蝉を謗るような言い方をしたが、彼らは7年もの期間土の中で耐え続け、僕よりも早起きをして世に出てきたんだと考えると、急に畏敬の念を抱き始める。閑話休題。私事になるが、1か月後には大事な資格試験がある。昨年は及第点に1点及ばず辛酸を舐める結果となった為、捲土重来の精神で発奮し、1年間勉強に汲々と努めてきた。成体になる為に7年間耐え続けた蝉が沢山いると思えば、命運を分ける残りの1か月を頑張らない理由は無い。因みに、蝉蛻という語には蝉の抜け殻という意味以外にも、迷いから抜け出て悟りの境地に達するという語意がある。いつの日か蝉蛻できるよう、日々精進していく所存だ。

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