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「君のことだけ見ていたい」特集

傑作漫画『メタモルフォーゼの縁側』がこのほど実写化されるのに合わせて、作中のBLマンガ『君のことだけ見ていたい』がHuluオリジナルで実写化!

BLで繋がった年の差58歳の友情物語が実写映画化

まず『君のことだけ見ていたい』を紹介する前にその前提をお話しよう。
鶴谷香央理先生の『メタモルフォーゼの縁側』という人気漫画作品がこのほど実写映画化された。
この作品は、書店でまちがってBLマンガを買ってしまった75歳の雪さんと、その書店のアルバイト店員である17歳のBL好きな女子高生うららが、そのマンガ漫画がキッカケで出会い交流を深めていく物語だ。
映画ではこのうららを芦田愛菜さん、雪さんを宮本信子さんが演じるということで、あの芦田愛菜さんが腐女子を演じるという衝撃、あの宮本信子さんがBLにハマっていくという意外性にはやくもザワザワが止まらない!
そして、肝心な、二人が交流するキッカケとなる、雪さんがBLと知らずジャケ買いしてしまう漫画こそ、今回スピンオフとして制作された『君のことだけ見ていたい』なのです!

空気階段 水川かたまりによる繊細で詩情豊かな脚本

作中劇のスピンオフ化はこれまでも二次元コンテンツで試みられてきたが、ここまで本気の実写化はほかにない!
 いや、正直、オリジナル作品だし、脚本は芸人さんだしということで、もしかしたらナンチャッテ感満載の、少し笑わせる方向でいくのかなと不安に思っている人や、あまり期待していない人もいるかもしれないが、この作品はすごいぞ!
 原作で垣間見られる空気感よりもさらに清涼感が高まっており、「どうせこういうの好きなんでしょ」感はゼロ、本気で人間群像劇です。びっくりしました。水川さんの脚本はモノローグも会話も詩情に溢れ、これは観て良かったとだれもが思ってくれるはずです。
 少年でもなく大人でもない男子高校生、咲良と佑真の心のひだを、見事にセリフや、セリフのないカットに落とし込んだ脚本だと思いました。

咲良が佑真を見る表情に注目してほしい! 俳優陣の好演

「オタマジャクシはオタマジャクシじゃん? カエルはカエルだよな。じゃあ、オタマジャクシに足が生えたのは、なんていうの?」
  「その曲、なんていう曲?」「亜麻色の乙女だよ」「亜麻色ってどんな色?」
 咲良と佑真の会話を聞くと、白か黒かはっきりしない「グレー」な部分が多い。子どもでも大人でもない。友情なのか恋情なのかわからない。つねに濃度を変える二人の関係を映像化して最高に良かったのは、たとえば寝ている佑真を見る咲良の、なんともいえない優しい表情。ここに、想いのすべてが詰まってる。これは実写の動画だから表現できた最高のシーンで、咲良役の倉悠貴、佑真役の水沢林太郎の演技力にも惹きつけられた。ぱっと見た感じだと口説かれそうな倉のほうが咲良役っていうキャスティングにときめきました!

Text/サンキュータツオ

サンキュータツオ プロフィール

1976年東京生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として都内の寄席などで活動。
早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。
アニメ、マンガなどを愛好しており、二次元愛好ポッドキャスト「熱量と文字数」を毎週水曜日配信。「このBLがやばい!」選者、広辞苑第七版サブカルチャー項目執筆担当者。一橋大学などで非常勤講師も務め、留学生に日本語や日本文化も教えている。Twitter:@39tatsuo

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