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超期待作『葬送のフリーレン』特集

「マンガ大賞2021」大賞を受賞したマンガファンならだれしもが知る傑作がついにアニメ化!地上波では初回4話分を『金曜ロードショー』で放送するなど、これまでにない大作の予感!

魔王を倒すまでではなく、倒した「後」の物語

© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

ファンタジー作品にもさまざまなストーリー展開があるが、その多くはパーティーを組み、打倒すべき敵や達成すべきタスクをもっている。
 しかし本作は、魔王を倒したあとからはじまる、大いなる「後日譚」だ。
 主人公の魔法使いフリーレンは、勇者のヒンメル、僧侶のハイター、戦士のアイゼンと4人パーティーとして10年間をともに戦い、魔王を倒して王都に帰還した。王都では盛大な祝福を受け、すべてがめでたし、めでたし、というところからがスタートなのである。
 しかし、この一見タスクのないフリーレンの「その後」を描くことで、この物語はこれまでのファンタジーものでは描かれることの少なかったテーマを浮き彫りにする。
 それは「生と死」、異なる種族との相互理解。現代の私たちが見るに値する深淵なテーマが横たわる作品なのだ!

異種族間の「寿命」に着目した感動作

© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

エルフであるフリーレンは寿命1000年はあろうかという長命種。そんなフリーレンにとって勇者たちとの10年間は、ほんの一瞬に過ぎなかったが、人間寿命の勇者ヒンメルにとっては人生のもっとも輝いた時間をささげた10年間だ。
 ともに戦った4人は、王都凱旋のあと、50年に一度の流星を見る約束をして別れるが、50年後に再会したときにはヒンメルもハイターも年老いていた。ドワーフのアイゼンもエルフほど長命ではないが、徐々に老いはじめていた。
 ほどなくしてヒンメルは寿命を全うして亡くなるが、そのさいフリーレンは人としてのヒンメルのことをまったく知らなかった事実に気づき、大きな後悔をする。
 こうしてフリーレンは「人を知る旅」に出ることになる。
 コメディタッチのなかに「生と死」を感じさせるハードボイルドな感動作だ。

異なる種族との共生と理解

© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

 寿命の問題と連動して、この作品には他のファンタジー作品同様、さまざまな種族が登場する。時間の流れ方もちがえば、考え方や生き方もまるで違うキャラクターが数多く登場する。そんな彼らがときに協調し、ときに衝突しながら生きている。
 このことは、ひるがえって隣人すらどんな生活をしているかわからない現代の私たちの生活に重なって見えてくる。生活スタイルもちがえば、思想も信念も好みも人種や出身地もあるで違う。自分にとっての正義が相手にとっての迷惑であることもある。「多様性」ということばの裏には、「異種族」と形容しても良いほどの隔たりが、多くの人にあるという意味がある。
 考えようによっては、恐ろしい世界に生きているともいえるが、この作品を見たとき、それでも健気に想いあって共生している世界の素晴らしさに気づく。

もちろんアクションシーンも見どころ!

© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

 明確なタスクのないなかで旅に出るフリーレンだが、死期の迫った僧侶ハイターから、弟子の育成を任される。未熟な弟子とのやりとりのなかで、魔法使いとしてのフリーレンのすごさを視聴者は体感することになる。
 こうした魔法やバトルシーンのアクションは、アニメならではの「動き」で迫力がある。
 手がけるのはアニメ界のアクションを支え続けている制作会社マッドハウス。
 ファンタジーな世界観の生活のディテールからアクションシーンまで、色と動きを最大限に楽しめるのもこのアニメの大きな魅力!
 浮き立つテーマ性とアニメならではの魅力をもつ『葬送のフリーレン』、見ない手はない!

「葬送のフリーレン」はこちらから▼

サンキュータツオ プロフィール

1976年東京生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として都内の寄席などで活動。
早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。
アニメ、マンガなどを愛好しており、二次元愛好ポッドキャスト「熱量と文字数」を毎週水曜日配信。「このBLがやばい!」選者、広辞苑第七版サブカルチャー項目執筆担当者。一橋大学などで非常勤講師も務め、留学生に日本語や日本文化も教えている。Twitter:@39tatsuo

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