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【Buzz部門1位】THE FIRSTが作り上げたオーディションドキュメンタリー

Huluの2021年間ランキングが発表され、「THE FIRST -BMSG Audition 2021-
」がBuzz部門で1位を獲得した。

 SKY-HIの主催によるボーイズグループオーディション「THE FIRST」をドキュメントしたこの番組は、2021年4月2日に配信スタート。脚本なし、演出なしによる審査の過程をリアルな内容に配信開始直後から注目され、多くのメディアで特集が組まれるなど、社会現象と言っても過言ではない、大きな反響を集めた。

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 このオーディションから誕生した7人組ダンス&ボーカルグループ“BE:FIRST”のデビュー曲「Gifted.」はBillboard JAPAN「総合ソング・チャートJAPAN HOT100」「オリコン週間ストリーミングランキング」をはじめ各配信ランキングで1位を獲得。さらに米ビルボードの “Hot Trending Songs” の24時間チャートで4位に入るなど、彼らが目標とする世界進出に早くも一歩近づいた。「THE FIRST」が2021年のエンターテインメントを象徴する存在だったことは異論の余地がないだろう。

 SKY-HIが立ち上げたマネジメント/レーベル「BMSG」による「THE FIRST」。“クリエイティブファースト、クオリティファースト、アーティシズムファースト”を掲げたこのオーディションは、多くの点でその他のオーディションと違っていた。グループに選ばれる者、選ばれない者を選別するのではなく、すべての参加者の適性や才能、今後の課題などを正確に捉え、それぞれが成長できる場所を提供すること。そして、日本のエンターテインメントが抱えている問題を踏まえたうえで、現在〜次の世代のグローバル・ポップの市場で勝負できる状況を作り出すこと。この二つの点を挙げるだけでも、「THE FIRST」の意義をわかってもらえるはずだ。

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 すべての起点になっているのが、SKY-HI自身の経験や挫折、そのなかで得たスキルと知見であることも改めて記しておきたい。すでに多くのメディアで語られていることだが、10代の頃からラッパーとして活動を始めた彼は、知名度が上がるにつれて、様々な偏見に晒されることになる。当時のSKY-HIが欲していたのは、自分自身を丸ごと認めて、適切なアドバイスをくれる他者と、自らの才能を自由に伸ばせる活動の場。「THE FIRST」における審査よりも育成を重視したレギュレーションは、思うような活動ができず悩んでいる若いアーティストに手を差し伸べることはもちろん、“当時の自分を救うことでしか、トラウマや傷は解消できない”という動機があったのではないか。

 実際にSKY-HIは参加者に対し、「あなたのことが素晴らしい」「ここを伸ばせばもっとよくなる」と語り掛けた。最終審査でも、BE:FIRSTに選出されたメンバーひとりひとりに対し心のこもった言葉を投げかけ、メンバーから外れた参加者にも、この先のビジョンを示し、「僕にできる手助けの形は、僕にできる形でしてきたいなと思っています」と告げた。
「死ぬまでのどこかのタイミングで、本当にTHE FIRSTという現象を作れてよかったと、みんなが同時に思うタイミングが一瞬でも来たら、それは最高の人生なんじゃないかなと思うので、それまでは各々が各々のスタイルで磨き続けていきましょう」という言葉も心に残った。勝者と敗者を分けるのではなく、1回のオーディションで参加者を消耗させてしまうのでもなく、それぞれの才能を伸ばし、メンタルをケアしながら、より豊かなエンターテインメントを作り上げていきたい。このコメントの背景のあるのは、そんな真摯な姿勢なのだと思う。

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 BMSGはBE:FIRSTのメンバー7名に加え、1名とアーティスト契約、3名と育成契約を結んだ。第1弾アーティストのNovel Coreとともに、最初の布陣が揃ったと言っていいだろう。

 筆者はデビュー前のBE:FIRSTのメンバーに取材する機会を得たが、7人が揃って話していたのは、「約半年のオーディションによって、全員がアーティストとして成長できた」ということだった。(LEOは「『ドラゴンボール』に例えると、“精神と時の部屋”に入ったような感じでした」と言ってました(笑))グループの一員になれた、オーディションに合格できた喜びも当然あっただろうが、それ以上に自分自身と仲間の成長や進化を強く感じ取り、さらに質の高い楽曲やパフォーマンスを目指したいという意識がはっきりと伝わってきたのだ。それはまさにSKY-HIが望んでいたことでもあり、彼のイズムがしっかり浸透していることの証左だ。

 デビュー以降の目覚ましいチャートアクションは、前述した通り。さらに地上波の音楽番組への出演、初のワンマンライブ(2021年11月5日/東京・立川ステージ・ガーデン)を成功させるなど、理想的なスタートダッシュを切った。

 そして2022年1月29日、30日に神奈川・ぴあアリーナMMでイベント「THE FIRST FINAL」の開催も決定。「THE FIRST」の参加者に熱いエールを送り続けてきたファンーーBE:FIRST誕生までのストーリーを共有した——への感謝を込めて行われるこのイベントは、Huluで独占配信中のドキュメンタリー番組「BE:FIRST Gifted Days」で発表され、BE:FIRST、SKY-HI、「THE FIRST」の合宿審査まで進んだNAOKI、RAN、REIKO、RUI、SHOTA、SHUNSUKE、TAIKI、TENの出演がアナウンスされている。「THE FIRST」の集大成とも言える同ライブに対してSKY-HIは「改めてTHE FIRSTが何であったか、どのような空気で僕や彼等があそこにいたのか、皆様にしっかりとお届けして、且つ音楽ファーストのライブに致します」という言葉を寄せた。彼らにとっては当たり前かもしれないが、“音楽ファースト”を貫いているコメントにどうしても胸が熱くなってしまう。「THE FIRST FINAL」開催までのストーリーもまた、「BE:FIRST Gifted Days」で紹介されるので、ぜひチェックしてほしい。

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 言うまでもなく、「THE FIRST」の参加者、BE:FIRSTのキャリアはまだ始まったばかり。彼らがこれから進んでいく道を、世界中の音楽ファンとともに共有し、新しい熱狂が生まれるーーそんなシーンがすぐそこまで迫っている。 

Text/森 朋之