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『半妖の夜叉姫』いまが見どき! な理由

高橋留美子原作の『犬夜叉』、アニメ化や映画化、TVシリーズ完結からも10年以上が経っているが、その世界観を受け継ぐ作品『半妖の犬夜叉』をいまこそ見どきな理由に迫る。

アニメオリジナル作品で、現代に続編を見る意味

『犬夜叉』の世界観を受け継ぐ作品でありながら、これまで原作や2000年代のアニメを追っていなかった人でも、この作品から視聴して楽しめるような工夫が随所にあるのがすごいです。お話はアニメオリジナルで、3人の少女を主人公として進みます。

そして、この3人の女の子「とわ」「せつな」「もろは」は、これまでのファンも全く知らないキャラクターなのです。つまり、よーいスタート! で、はじめての方も、これまでの作品を見ていた方も同時に楽しめるようになっています。

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そして、14歳の「とわ」「せつな」「もろは」がこれまでどういう人生を歩んできたのか、どういう環境で生まれ、どういう人に育てられてきたのかを追えば、原作も旧作アニメも自然に頭に入ってくるようになっています。
『犬夜叉』を観ていたお父さんやお母さんも、お子さんと一緒に楽しめる可能性大!

現代の悩みのひとつ 自分とは何者かを見つめる物語

「とわ」と「せつな」は、殺生丸(犬の大妖怪)の子で双子の女の子。「もろは」は、犬夜叉(殺生丸の異母弟、妖怪と人の子である「半妖」)の子です。したがって「夜叉姫」なわけです。そして、それぞれ母親は人間です。

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物語序盤では、それぞれ自分たちの両親の存在を詳しく知らず、自分の能力についても正確には知りません。なぜ「いま、ここにいるのか」もわからない。ついでにいうと、とわは「女の子なんだから〇〇しちゃダメ!」と言われることにモヤモヤした感情も持ったり。
自分たちは何者なのか。なぜここにいるのか。そして、ここにいていいのか。物語は少しずつ謎が明かされながら進んでいきます。
現代に生きる視聴者にとっても、同様の悩みやモヤモヤを抱えている人はいるはず。作品を通して「自分とは何者か」を考えさせてくれるようになっています。

「馴れ合い」ではない「共生」を、現代に見る!

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妖怪、半妖、人間。
1人でも生きていける力を持った者たちが、いわゆる「人種」のような壁を越え、あえて共闘する。そして共生していく。
妖怪なら妖怪の中で、人間なら人間の中で生きていくだけでも大変なことです。現実世界がそうであるように、「人種」などで括ってもひとつにまとまらないことは明らかです。ですが、属性ではなく、個と個が違いを深く知っていくことで理解し合い、手を取っていく姿がこの作品では描かれています。

理想を言うのは簡単ですが、その「共生」の仕方が、非常に細かく描かれているので、現実に置き換えるとこういうことが大事なのかな、と思えるようになっています。

殻に閉じこもらずに、勇気をもって他者のことを深く知ろう、というメッセージを読み取ることもできる作品です。

Text/サンキュータツオ

『半妖の夜叉姫』弐の章 Huluで先行配信中!

サンキュータツオ プロフィール

1976年東京生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として都内の寄席などで活動。
早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。
アニメ、マンガなどを愛好しており、二次元愛好ポッドキャスト「熱量と文字数」を毎週水曜日配信。「このBLがやばい!」選者、広辞苑第七版サブカルチャー項目執筆担当者。一橋大学などで非常勤講師も務め、留学生に日本語や日本文化も教えている。Twitter:@39tatsuo

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