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言語概説

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北大言語学サークル員による各言語の概説
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#語学学習

アイヌ語概説 #4 文の成り立ち

アイヌ語を4回に分けて解説する記事の4本目です。できれば#1、#2、#3を先にお読みください。#4では文の成り立ち、統語論について見ていきます。まず品詞分類やTMAなど文法カテゴリについて、続いて節や句の構造について説明します。 文法カテゴリ品詞分類 アイヌ語の単語は、動詞、名詞、連体詞、副詞、助詞、間投詞に分類されます。 日本語と比較すると、大きな違いの一つは形容詞が存在しないことでしょう。アイヌ語では、日本語でいう形容詞に相当するものは動詞に含まれており、動詞と文法的

アイヌ語概説 #3 単語の成り立ち

アイヌ語を4回に分けて解説していく記事の3つ目です。できればアイヌ語概説 #1、#2を先にお読みいただいてからこちらを読んでください。#3では形態論、すなわち個々の単語の構成について見ていきたいと思います。 さて、#1でも書きましたが、アイヌ語は抱合と膠着を行う言語です。今回はそれぞれどんな要素がどんなルールで抱合され、膠着するのか見ていきます。どうしても専門用語が多くなってしまいますので、適宜記事の終わりにある用語の(大雑把な)解説も参考にしてください。 動詞の数動詞の数

アイヌ語概説 #2 アイヌ語ってどう読むの?

アイヌ語を4回に分けて解説していく記事の2つ目です。できればアイヌ語概説 #1を先にお読みいただいてからこちらを読んでください。#2では発音やアクセントなど音声、音韻論に関わる部分を解説します。 表記と発音ラテン文字表記で用いられる字母とその発音を以下にまとめました(音声はIPAに準拠しています)。音素としてアイヌ語には12の子音と5の母音があります。 字母の一覧とその発音 発音の特徴、注意 有声音/無声音、有気音/無気音および短母音/長母音の区別が一般に認められない

アイヌ語概説 #1 アイヌ語ってどんな言語?

今回から4回に分けてアイヌ語について大まかに説明していきます。主な種本は佐藤知己(2008)『アイヌ語文法の基礎』、田村すず子(1997)「アイヌ語(言語学大辞典)」、Bugaeva Anna(2014)「北海道南部のアイヌ語」です。他文献については参考文献に記します。 初回となる今回は、アイヌ語がどんな言語か知っていただくために、基本的な情報について書きたいと思います。 系統現時点で、アイヌ語は系統的に孤立した言語だとされています。語借用関係にある言語は日本語をはじめ複数