【みた】ザ・エレクトリカルパレーズ、でもエレパレの話はほとんどしてない

思い出したことがある。

わたしは昔、新宿にあるファストファッションの店で働いていた(今はもうない)
休憩室で一人椅子に座って休んでいたら、
バックヤード担当の年下の男の子に声をかけられた。
「タイヤさん、何読んでるんすか?」
わたしは正直に答えた。
「前付き合っていた人の今カノのブログ読んでる」
彼はあきれたように笑った
「休憩中は、ちゃんと休憩してください」
少しうれしかった。

元恋人には何の未練もなかった。
人間としては魅力的だけど、恋人としてはもう何とも思っていなかった。
ではなぜ彼女のブログを読んでいたのか?
私のなれそうでなれなかった、なりたいものに彼女がなっていたからだ。
彼女の話をしよう。
私から見ると彼女は、読モとして成功していた(つけまつげやカラコンのプロデュースをしていたのが、何よりの証拠だ)
そして次のステップに進んでいこうとしていた時期だったように思う。
読モと呼ぶにはもう地位が確立されていた。
個性的なモデルであり、女優であり、本も出す。

ファッションスナップやサロンモデルで
ちらっと撮られたことがあるだけのわたしから見ると、
宇宙みたいに遠い話だけど、
見知っている人間があいだに挟まることによって、
がんばれば辿り着いた場所のように感じていた。
何より、彼女の好きだと言っているものは、
わたしも好ましいと思うものばかりだった。
だから余計に悔しかった。
悔しいから読みたくないけど、ついつい読んでいた。
読みながら呪っていた。

そこで冒頭にもあるように、声を掛けられたのだ。
「タイヤさん、何読んでるんすか?」
きっとすごい顔をして読んでいたんだと思う。
「休憩中は、ちゃんと休憩してください」
という言葉には、悪霊を退散させる効果があったらしく、
少し馬鹿らしくなって、気が楽になった。
その後もちょこちょこブログは読んでいたと思うけど。

ガーリィレコードチャンネルの高井さんが、
窓から公園で集うエレパレを見ていた時も
吉川きっちょむさんが、ラジオを撮っていた時も
同じような種類の顔をしていたんじゃないかと想像する。
ちょっと違うかもしれないけど、カテゴリーは同じはず。

エレパレのオレンジのTシャツがすごく印象的だった。
ぼろぼろでくしゃくしゃでうっすら汚いのだ。
洗濯してアイロンをかけて持って行ってもいいはずなのに。
そこには積年の何かを感じる。
だから西村さんは臭いと言っていたのではないか?
西村さんには特に匂うのではないか?考えすぎか。

動画の初めにしゃべっていた芸人さんたちは
エレパレに関わっていなかったはずなのに、
なぜか妙に詳しいのだ。

これは青春限定のものだろうか?
本当に若気の至りだろうか?
死ぬまで私たちに付きまとう、
忌まわしくも愛おしい感覚だと思えてならない。

ザ・エレクトリカルパレーズおもしろかった。


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