【インタビュー企画】vol.1 藤田太郎 地域の人が自分の街に誇りを持てる町づくりを目指して ~前編~
0, はじめに
こんにちは!
インタビューを担当させていただきます藤井達也です。
今回は東京大学文学部4年の藤田 太郎さんにインタビューしました。
藤田さんは2019年2月〜3月、岩手県大船渡市の民間まちづくり会社「株式会社キャッセン大船渡」にて、1ヶ月半のインターンシップ を行いました。そのインターンで立ち上げた市民大学「大船渡まちもり大学」は、現在も地域の方に愛される「学びの場」となっています。
深く掘れば掘るほど出てくる藤田さんの魅力を2部構成でお届けします。
今回は、藤田さんがキャッセン大船渡から与えられたミッションに、「いかに立ち向かったのか」「どんなことに取り組んだのか」そして「大船渡まちもり大学」の概要や立ち上げに至った経緯などをお伺いしました。
1, キャッセン大船渡を「消費の場」から「生活の場」へ
ーはじめまして!本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、キャッセン大船渡では、どのようなミッションが与えられたのかお聞きしたいです。
キャッセン大船渡から与えられたミッションは「キャッセン大船渡を生活の場にする」ことでした。震災後の大船渡市では津波防災等の観点から、BRT大船渡線の海側を商業エリア(キャッセン大船渡エリア)、山側を居住エリアと分けた「商住分離」のまちづくりが進められてきました。
住宅地と商店街が分断された中で、商業エリアであるキャッセン大船渡が日常的に人が集まる商業施設となるためには、キャッセンが買い物などを楽しむ「消費の場」だけでなく、地域住民が集まる「生活の場」なることが必要でした。
そこでキャッセン大船渡を生活の場にすべく、コミュニティを作ることを目標として活動をしました。
ー難しいミッションですね…。課題解決のためにどのような活動をされたのですか。
キャッセン大船渡には、私を含め2名のインターン生が参加しました。「キャッセン大船渡を生活の場にする」ためには、人々の集うコミュニティ作りと、そこで活躍できる人材の育成の双方が必要と考えました。私は主に人材育成を担当し、「大船渡まちもり大学」という地域のひとが先生になって教え合う市民大学の立ち上げを行いました。
2, まちづくりの担い手を育成する市民大学「大船渡まちもり大学」開校へ
ー2名で同じことをするのではなく、それぞれ役割分担をして取り組んだんですね!「大船渡まちもり大学」の立ち上げに至った経緯と内容について詳しくお伺いしてもいいですか。
まずキャッセン大船渡のインターンに参加するまでの期間で、コーディネート団体より事前課題が与えられました。インターンでやりたいことや地域の事前リサーチなどを800字程度でまとめる課題が与えられていたこともあり、人々の集うコミュニティ作りと、そこで活躍できる人材の育成と仮説を立ててインターンに臨みました。
しかし自分の案にどこか納得のいかない気持ちもありました。
そのためインターンの最初の2日間は「キャッセン大船渡を生活の場にするためには何をすべきか」を考えるために、テナントさんやキャッセンのスタッフ、買い物を楽しむ地域の方に声をかけて回るヒアリング調査を行いました。ヒアリングの中で私が「これだ!」感じたことは、地域に唯一あった大学の北里大学が震災で撤退したことにより、大船渡から大学がなくなってしまったことです。「大船渡に大学を復活させたい!市民が主体的に学び、まちづくりの担い手を育成する市民大学こそ町の課題を解決できる!」と考え、「大船渡まちもり大学」の立ち上げに踏み切りました。
ここでは若手人材の育成のために、3つの段階を踏むことによって市民が主体的にまちづくりに関わる仕組みづくりを目指しています。
①先進的にまちづくりに取り組む先輩から話を聞く、まちづくりの基本と思いを聞く
②実際にやってみたいことを、プロジェクトとして立案してみる
③プロジェクトを実際にやってみる。
上記の3つの段階を踏むために、地域の人が先生になって興味分野について教える「講義」形式のイベントと学んだことを実際に活かし形にする「ゼミ」形式でのイベントを具体的には行っています。
ーただ学ぶだけでなく、実際に形にするところまで落とし込むところまで設計されているのが素敵ですね。まちもり大学を立ち上げるに当たって大変だったことはなんですか。
まちもり大学の立ち上げにあたり、お披露目会と第一回のイベントの2本を1ヶ月半の間で実施しました。大学の今後の方針を考えながら、イベントのために地域の方にアポを取って企画の説明をしたり、プレスリリースを作成したりして集客を行うことは、やはり大変でしたね。
ただPDCAのサイクルを何度も回し、地域の方を巻き込み0から大学を立ち上げた経験は、一歩踏み出してみることの大切さを学ぶ機会となりました。
今でもまちもり大学のイベントを開催する際は、大船渡を訪れるのですが、町の方々から「おかえり」と迎えていただける新しい故郷となったのもこの活動があったからこそだと思います。
3, 最後に
今回は藤田さんが1ヶ月半の間で取り組まれてきた活動についてお伺いしてきました。0から大学を作り上げた経験は、他の地域では体験できない貴重なもので、今も財産となって藤田さんの中にあることがわかりました。
次回は、そんな藤田さんの「人」に迫るインタビューを高橋ひなこさんにお願いします。
ぜひそちらもご覧ください!
後編記事はこちら
(2020年5月取材)