初連載を終えてとこれから

※拙作に関してのちょっとしたネタバレがあります。
 8話を読んだ方や、特に気にしないという方だけ先にお進みください。





こんにちは。漫画家の深水恵(フカミズ ケイ)と申します。

講談社のWeb雑誌の姉フレンドさんにて、「潮海部長のぬいぐるみ」という作品を連載しておりました。先日ようやく最終話の配信がされ、今は無事最後まで描き切れたことにホッとしています。

元々中高生向けというか、学生が主人公の少女漫画を投稿していたものの結果が振るわず、漫画を描くのをやめようかと思っていた頃に姉フレさんに出会いました。自分も20代後半で、同じ年くらいのキャラの方が描きやすいんじゃないかと思って、あくまでも投稿の息抜きとして描いていたのが千春と潮海部長でした。

コンペで選考していただきデビューですって連絡が来たとき、「あ、そうなんだ」と全く実感が湧かず、ちゃんと仕事として意識できたのは掲載号が決まってからでした。

なので今日は、デビューから連載を終えるまでに色々あったことを書きたいなと思います。自分の気持ちを整理するいい機会にもなるかなと。


①連載中大変だったこと
 これはもうWワークという状態で描いていたことに尽きます。。
 週5のフルタイムで働く中でデビューと連載が決まったので漫画の方が後なのですが、本当にしんどかったです。
休みでも日中働いてても締め切りは来るもの。帰宅してからも4〜5時間は作画の時間。通勤中はスマホのメモにプロットを書いて、昼休憩は食べずに寝る。食べると午後の仕事が眠くて笑
元々ショートスリーパーだったけど本当に寝る時間の確保が大変でした。
長期休暇のある職場ですが、大体は作画でつぶれました。
2徹で会社行くこともありました。おかげで仕事中の記憶ないです。
でも会社にとって私が漫画描いてるとかは関係ないし、編集部にとっても私が会社員やってることなんて関係ないですから。無理に両立しろなんて言われてないですしね。辛いなら仕事やめて漫画描けば良いだけの話。
むしろ「健康が一番だから」と3回も休載を下さった編集部の皆様には感謝しかないです。
それにまだクリスタちゃんを全然使いこなせていないので、多分勿体無い使い方してるんだろうなとは…思います…絶対いまより時短できるはず。
 世の中ね、仕事や家事や育児や介護なんかで2足の草鞋で連載されてる方なんてたっくさんいらっしゃるんですよ。私はこんなに忙しくて大変!アピールみたいに書きましたけど、私より忙しい方だって絶対いるはずなんです。
専業なら楽かって言われるとそれは違うと思うし、週刊連載なんてどんなスケジュールやねんって思ってます。想像もしたくない。
まあ通勤中の妄想なんかは割と楽しかったりもします。
マスク生活のおかげでニヤついててもバレにくいのはありがたい。

②デジタル作画に苦戦
 これまでデジタルに触れたことが少なく、投稿中はフルアナログだった私にとって、電子書籍での連載は鬼門!!!!いやアナログ原稿でもスキャンしちゃえばいいんですが…スキャナーもないし画材を買うために新宿まで行くのも結構めんどくさかったので、思い切ってデジタル化することにしました。
 コンペのためにiPadを購入⇨プロット〜仕上げまでフルデジに変更しました。
 クリスタのアイコンも意味不明でした。
 その他も原稿サイズの確認だったり(その節は大変ご迷惑をおかけしました)、実際配信された時のペンの太さや描き込みの量などを調整するのに苦労しました。自分では綺麗だと思っててもいざ誌面だと掠れてたり、、でもベタやトーンの仕上げは本当に楽!!何より画材にかかっていたお金がだいぶ減ったのが結構大きかったですね。買いに行かなくても良いのも◎
トーン貼るの楽しいです。クイックマスク大好きになりました。

③担当さんとの打ち合わせ
 これは私の語彙力がなさすぎ&説明が本当に下手っていう面で苦労した話です。
 プロットやネームである程度の内容は伝わるものの、じゃあどうしてキャラがこんな行動をとるのか、このコマでこの構図にしたのはなぜかを説明ができない。
このネームにした理由など伝えたいことはあるのに、それを順序立てて喋れない。
だけど担当さんは私がつまづいても最後まで話すのを毎回待ってくれるんです。
それが嬉しいのに申し訳なさすぎて、小説や活字を読むことの大切さを思い知らされました。
あと担当さん返事がめっちゃ早い。これはもう感謝しかないです。
どんなに忙しくても3日以上空くことはなかったです。逆にネームが途中までしかできてなくて連絡しなかったら、全然途中でも良いから送って相談してって言ってくださり、合間に雑談挟んでリラックスさせてくださったり。
いつも頑張れ、深水さんならできるよって絶対背中を押してくれるんです。
デジタルに慣れず担当さんだけでなく編集部の方にも迷惑をかけてしまった時も見捨てず助けていただいて、、漫画を描くことは自分の幸せのためだけど、担当さんに対しての恩返しという意味でも、もっと頑張りたいなと思っています。

上記で書いたように、プロットやネームなんかが途中で行き詰まったら、できているところまででも担当さんに送ってもいいと思います。全ボツ食らうより、少しずつ軌道修正するのは悪いことじゃないです。
でもそれはきちんと担当さんにご相談してからがベターです。ここまではできているのですが見ていただくことは可能ですか?と。
編集さんによってはまとめて送ってくれって方もいらっしゃるでしょうし、逆にもっと細かく見てくださる方もいるかもです。もうそれは人それぞれなので、まずは相手方のご都合を確認してからの方がいいです。


④キャラクターを立体として考える
 漫画を描く上でよく言われたのが、キャラクターの言動を展開に合わせないことでした。多分他にも悩んでる人いるのではと思います。
ヒロインとヒーローが出会う⇨仲良くなる⇨ケンカやすれ違いなどの障害⇨乗り越えてハッピーエンドみたいな流れの場合、障害のために無理やりケンカさせなきゃ!ってしちゃってたんですけど、それってキャラをペラペラの絵として考えていたからでした。その方が動かしやすいですから。
自分と同じ3次元の人間(立体物)として考えたとき、この子ならこんな風に考えるかも…でもそれだとケンカはしなさそう…いや無理にケンカさせなくても良いのかも?
みたいな感じで、障害は発生しなかったけど別の展開が生まれやすくなりました。
実際しおぬいでは千春と部長は大きなすれ違いはしないし、めっちゃ暗い展開もないです。読んでネガティブになるよりは、ほんわか癒されてほしい。これは担当さんと話してそういう方向性でってのもあるけど、私が悪い人を描けないのもあったり…笑
そういった考え方をだんだんできるようになったので、打ち合わせの場面でも、「千春はそうは考えないと思うんです」って話すことが多かったです。作者だけどキャラクターの友達みたいな感じでした。これが一番大きな成長だったかも。


⑤意地とこだわり
 作画にあたって、人物に関してはクリスタの便利機能である3Dと、左右対称と反転は使わないようにしていました。(背景はたまに使ってた)
誤解してほしくないのですが、使うのが悪とは1mmも思っていないです。私の場合はそれらに慣れていないので、好きなポーズに設定するまでに苦労する時間がもったいない気がして使ってないだけですので、、
でもせめて人物だけはとにかく画力を上げたかったので下絵も線画もイチから描いてました。もちろん歪みや荒さは目立ちます。それでも1話と8話を比べたら画力は上がっていたし、練習になったので良い取り組みだったかなと。
これはこれからも続けていきたいです。
 もうひとつは表情のこだわり。キャラの感情を伝える大事な要素なのはもちろん、単純にいろんな顔を描くのが好きなんです。
千春が怒っているとき、眉の角度ひとつで怒り度が変わったり、笑うときは頬の赤らみの有無、口の大きさでどんな笑顔になるのかを実験するのが楽しかったです。
あとはキャラが見ている方向(目線)に違和感をなるべく無くすようにしてました。

⑥レビューについて
 デビュー&初連載&誌面の表紙というのは本当に嬉しかったし、すごいことだと今でも思っています。投稿作では匍匐前進での成長しかできなかった自分が…!?みたいな。
1話配信前は緊張で吐きそうだったんですが、どんなレビューを書いてもらえるかな〜なんて思ってたんです。まだまだ下手だけど自分の絵柄は好きだし、表情にはこだわりを持って描いている。1番じゃなくても負けてるとは思えない。
「可愛い」「好き」ってコメントはあったけど、「面白くない」という意見ももちろんありました。そしてその両方とも、思ったより全然増えない。それに対し想像以上に凹んだんです。途端に自分の漫画が恥ずかしくなったり。
 好きなことしかしたくないタチなので、感想やファンレターをもらうために漫画を始めたわけじゃない。でもやっぱり貰えた方がモチベになるじゃないですか。

そもそも感想をいただけるってすごいことなのに、それを当たり前みたいに考えた自分がすごい嫌になりました。ちょっとだけ愚痴ったことがあったんですが、自分はスッキリしたけど聞いた相手はモヤモヤしたかもなって後で少し後悔もしました。


 私はよくネットショッピングしますが、あんまりレビューはしません。それは買った商品は全然良品で使えるけど、感想を言いたくなるほど素敵なものだとまでは思わなかったことがほとんどだからです。読者にとって私の漫画がそうだっただけで、別に普通のことだと思います。

上記はあくまでも私個人の考え方なので、正解不正解かは別として、、

悔しい気持ちでいっぱいです!!!!!!!!

綺麗に完結できたし、色んな方の力を借りて素敵な作品にできたと本気で思っています。私だけじゃここまで来れませんでした。
千春も部長も、私を救ってくれたキャラクターであり、二人とも可愛くて大好きです。だからこそもっと書きたかったし、もっと実力があれば来月も連載が続けられるチャンスだってあったかもしれないのにって思うと悔しくて。
8話で部長が千春にプロポーズするシーンは「2人がお互いを想う気持ち」と「続けてあげられない悲しさ」という、漫画の内容と作者としての後悔が入り混じって泣きながら描いてました。
8話納品後も描きたいシーンがどんどん出てくるんです。マジで辛かった。
でも新人のうちにぶつかっておいて良かった壁だとも思います。見てほしいくせに、目を引く告知やそれなりの努力を怠ったせいでもあるので、対策を練れる良い体験でした。

だから次はもっとみんなが読みたくなるような作品になるように頑張ります。これだけです。


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とまあこんな感じで書ける範囲で色々書かせていただきましたが、もう今は次回作に向けてのキャラ設定を考えています。遊んだりはしてるけど早く漫画が描きたくて仕方ないです。運動も勉強もダメで、唯一続いているのがお絵描きなので。
キャンバスがトイレのドアや裏面が白紙の広告チラシから、iPadというデジタル機器になっても、やりたいことは変えられないですね。

レビューの話でマイナスなことばかり書いてしまいごめんなさい!
どうしても書いておきたかったことなので訂正はしませんが、もちろん私の作品が好きで応援してくださっている方がいらっしゃるのは重々承知しております!!!
その方達のお言葉が私にとってどれだけ大切で幸せなものだったか、これはもう感謝してもしきれません。
これ書きながらまた泣きそうです。。笑

いますぐたくさんのファンを増やすことは無理でも、まずは応援してくださっている方に向けて、また私の作品でほんわか癒されてくれ〜〜という気持ちで頑張っています。色々勉強しなくちゃですね。

最後に、「潮海部長のぬいぐるみ」を読んでくださり、ありがとうございました。商業作品としては処女作であり拙い部分だらけだったにも関わらず、応援いただけたことは本当に嬉しかったです。TwitterでDMやリプでの感想は何度も見返してはニヤニヤさせてもらってます。連載中にしおぬいのイラストを下さった方もありがとうございました!みんな大好きです!

現在練っている次回作の企画がまた姉フレさんで連載できるかどうかは自分の努力次第ではありますが、もし実現したら、今回の連載ではできなかったことに挑戦したり、8回以上連載を続けヒット作にしたいです。
そのために伊勢神宮にも石神神社にも愛宕神社にも挨拶と願掛けしたので!

途中で偉そうなことを言ったり色々書いてしまいましたが、また何かあれば綴りたいですね。ここまで読んで下さりありがとうございました!

今後ともよろしくお願いいたします。


2022/06/05 sun  深水 恵