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これはわたしが体験した不思議な出来事について話そうと思います。 ある日の夜のこと。 わたしは仕事帰りで、心身共に疲弊していて、おまけに紙で指を怪我をした。 そんな日だった。 自宅までの道のりがいつものように遠く感じた日。 少しの勾配があれば辛いなと愚痴を溢した日。 到着しては家の鍵を探すのに手間取る日。 そんな日だった。 玄関を開ければ、足の踏み場も見えない真っ暗な闇で、上がり框に足の指をぶつけては荷物を落とす日。 手を洗おうと蛇口を捻れば、シンクのコ
これは僕が体験した不思議な出来事について話そうと思う。 その日は何もない日で、本当に何もない日だった。 部屋の窓を開ければ、心地よい風が頬を撫で、少し伸ばし過ぎた髪の毛を持ち上げる。横にわけていた前髪が視界を軽く塞ぐ。ストレートヘアが厄介だってよく思う。 無理して昨日買ったペットボトルのコーヒー、口直しのホワイトチョコレート、部屋の隅に何故かある毛布、点きっぱなしのテレビには今日の天気予報が映っていた。 「――今日の天気は快晴です。雲を見ることが無いでしょう。」