マガジンのカバー画像

短編小説

3
風城の短編小説置き場
運営しているクリエイター

#現代ファンタジー

短編小説「神社の彼女」

 これは僕が体験した不思議な出来事について話そうと思う。  その日は何もない日で、本当に何もない日だった。  部屋の窓を開ければ、心地よい風が頬を撫で、少し伸ばし過ぎた髪の毛を持ち上げる。横にわけていた前髪が視界を軽く塞ぐ。ストレートヘアが厄介だってよく思う。  無理して昨日買ったペットボトルのコーヒー、口直しのホワイトチョコレート、部屋の隅に何故かある毛布、点きっぱなしのテレビには今日の天気予報が映っていた。 「――今日の天気は快晴です。雲を見ることが無いでしょう。」  

短編小説「青銅色の鍵と夕暮れ」

 これは私が体験した不思議な出来事について話そうと思う。  ある日、私は友人に呼び出された。友人の名は真壁。何の仕事をしているのか分からないが、度々私に骨董品などを見せてくれたりする。私にとっては”得体のしれない物”への入り口となってくれている存在だ。きっと次の記事のネタになるのだろうと内心うきうきとしていた。  赤桐町内にある真壁の事務所に着き、呼び鈴を2回鳴らす。少し間を空けた後、大きめの足音が近づいてくる。 「少し早かったな、入ってくれ」  ドアを開けて真壁がそう言