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繊維産地たる浜松市に、これから求められること(「布の教科書」発刊に際して)

浜松市内の小学生向けにまとめられた「遠州さんち -布の教科書-」という冊子が浜松市でできました。本日(4/21)の中日新聞にも紹介されています。

一言ではなかなか説明が難しい遠州織物ですが、難しい専門用語も小学生向けの言葉や説明で工夫してまとめられてて、とてもいい冊子です。丁寧に丁寧に編集されたことが、よく分かるものになっています。

遠州さんち -布の教科書-
遠州さんち -布の教科書-
遠州さんち -布の教科書-

ただ、「布の教科書」ということでたくさん子どもたちに読んでもらえていいな、と思っていたのですが、実際には学校には各校に1部ずつしか配布されないようで、少し切なさを感じます。

市の繊維の担当者さんはここ数年何人か変わってきましたが、どなたもこれまで、少なくなってしまった予算・人数(兼務職員が1人)のなかで一生懸命、認知が広がるようにと想いをもってがんばってきてくれています。

こちらの冊子も、一定の学年には市内の全生徒さんに行き渡るようにとがんばって編集されていたのですが、そういうわけにはいかなかったようです。

名古屋松坂屋での催事

HUISをスタートしてから8年になりますが、ブランドスタートの頃から隣の名古屋の百貨店で販売することが多く、毎日多くの接客をさせていただいてきたのですが、愛知のお客さまの特徴は、とにかく繊維業についてもともとよくご存知だ、ということとトヨタへの誇りがすごい、ということです。

織物(おりもの)や織機(しょっき)のことをお話しすると、とにかく「そうよね、トヨタももともと織機(しょっき)からはじまったものね」「この地域は繊維で発達した地域だから技術もすごいものね」と返ってきます。

織機(しょっき)の写真を見てもらうと、「そうそうこれこれ」「この技術が自動車になっていったのよね」とほんとに高確率で返ってきます。8年前も、今も。

このことは、年配の方だけでなく、若い方にお話ししても同じことが起こります。

静岡県や、他県で接客していてこういう現象は起こらないので、なんでかな?と当初はとても疑問だったのですが、接客を続けているうちに、その疑問はすぐ解けました。

とにかく、みなさん小さい頃から社会科見学で「トヨタ産業技術記念館」という、トヨタの発明と自動車事業への変遷の歴史を体感できる施設に、何度も行っているのです。

トヨタ産業技術館の様子(「industry-co-creation」より)

「トヨタ産業技術記念館」には僕も行ったことがあるのですが、衝撃を受けたことをよく覚えています。豊田佐吉が発明した歴代の織機(しょっき)が時系列にストーリー性をもって展示され、そこにいるスタッフの方々が「この時代の織機(しょっき)はここがこう改良されてこうすごいんです!」というお話を、嬉々として実演を交えながら解説してくれます。

こうしたことを啓発してきたトヨタという企業はやはりすごいな、と思いますし、やはり教育の面も含めて行政とともに大切に取り組んできたのでしょう。

トヨタ産業技術記念館は一例ではありますが、おそらく、小さな頃からこういう「本気で伝えたい」という気持ちのこもった情報に触れてきたからこそ、地域産業の歴史がしっかりと地域の人たちに刻まれているのだと思います。
それは、自分たちが住む地域への誇りとともに。


冒頭の「遠州さんち -布の教科書-」へ話は戻りますが、浜松市において生徒への配布が叶わなかった理由は、“学校事務の負担が生じるから”、とのことのようです。あらためてですが、少し切なさを感じます。



遠州さんち -布の教科書-
(上記リンクではPDFでご覧いただけます)

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