「大丈夫か?」って聞く奴

 今まで生きてきた中で何人か、こういう奴がいた。特になにがというわけでもなく「お前、大丈夫か?」と聞く奴。心配とか確認ではなく、ただ意味もなく理由もなく聞く奴。それも何度も何度も。完全に自分より目上の人間である。その度に、俺は内心「お前が大丈夫かよ」と思っていた。
 じゃあなんですか? 大丈夫じゃない、駄目だって言ったら、なんかしてくれるんですかね? そもそも大丈夫か大丈夫でないかで分類したら、人類のほとんどは、大丈夫じゃねえんだよ。歴史的に見ても、大丈夫だった時期なんてほとんどねえんだって。俺もお前も、そこらへん歩いてるガキもジジイも主婦もサラリーマンも、みんなみんな生きているんだ、大丈夫じゃないんだ。それを確認してどうしようと言うのかね、君は。
 そんな風に、内心思っていましたとさ。
 まあ、だいたいそういう奴らは、俺が無口で普段からぼうっとしているから、注意喚起のつもりで言っているんだろうけれど、俺からすると、そういう奴らの方が無駄に動くし、それが雑だしで、不注意の結果、転んだりぶつかったりで、骨を折ったりしていたので、大変だなあと思っているよ。
 まあ、人に注意をすることで有能な自分を確認したい人間ってのは一定数いるものなのだ。ただ、本人に能力がないと、そんな適切な注意はできない。だって、それには訂正させたい行動を言語化し論理的に説明する能力が必要だ。だからそんな面倒なことはしたくない、でも注意はしたい。注意してシュンッってなったアイツの顔が見たい。それを肴に一杯やりたい。そういう輩が世の中には存在する。メルド。
 要するに、注意したいが先に立っているせいで、人のあら探しをすることに脳のリソースを割いているわけですわ。そのせいで、自分のことがお留守になってるってわけですわ。その注意の方向を、自分の方に向けて欲しいって思うわけなんですわ。そうしたら世の中にもっともっと鬱の人間が増えると思うぜ。ほどほどにしておけよ。とも思う。どっちだよ。
 いずれにしてもさあ、意味もなく大丈夫か? って聞くの、やめない?
 
 

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