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令和5年版 防衛白書 26 第4章

第4章 地域社会や環境との共生に関する取組

防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人一人、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要がある。

第1節 地域社会との調和にかかる施策

防衛戦略は、自衛隊及び在日米軍が、平素からシームレスかつ効果的に活動できるよう、自衛隊施設及び米軍施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力をこれまで以上に獲得していくこととしている。
このため、日頃から防衛省・自衛隊の政策や活動、在日米軍の役割に関する積極的な広報を行い、地元に対する説明責任を果たしながら、地元の要望や情勢に応じた調整を実施することとしている。同時に、騒音などへの対策を含む防衛施設周辺対策事業についても、わが国の防衛への協力促進という観点も踏まえ、引き続き推進することとしている。
また、地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊による急患輸送が地域医療を支えている場合などが存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地などの配置・運営にあたっては地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮することとしている。

1 民生支援活動

防衛省・自衛隊は、地方公共団体や関係機関などからの依頼に基づき、様々な分野で民生支援活動を行っている。これらの活動は、自衛隊への信頼をより一層深めるとともに、隊員に誇りと自信を与えている。
陸自は、全国各地で発見される不発弾などの処理にあたっており、2022年度の処理実績は1,372件(約41.9トン)で、沖縄県での処理件数が全体の約34%を占めている。海自は、機雷などの除去・処理を行っており、2022年度の処理実績は、3,779個(約2.7トン)であった。
また、駐屯地や基地を部隊活動に支障のない範囲で開放するなど、地域住民との交流に努めるほか、各種の運動競技会において輸送などの支援を行っている。加えて、一部の自衛隊病院などにおける一般診療、離島の救急患者の緊急輸送などにより、地域医療を支えている。
さらに、国などの方針を踏まえ、分離・分割発注の推進や同一資格等級区分内の者による競争の確保及びオープンカウンター方式の導入など、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保も図るなど、地元経済に寄与する各種施策を推進していく。

2 地方公共団体などによる自衛隊への協力

(1)自衛官の募集及び再就職支援への協力

厳しい募集及び雇用環境の中、質の高い人材を確保し、比較的若い年齢で退職する自衛官の再就職を支援するためには、地方公共団体や関係機関の協力が不可欠である。

(2)自衛隊の活動への支援・協力

自衛隊の駐屯地や基地は、地域社会と密接なかかわりを持っており、自衛隊が教育訓練や災害派遣など各種の活動を行うためには、地元からの様々な支援・協力が不可欠である。さらに、国際平和協力業務などで国外に派遣される部隊は、関係機関から派遣にかかる手続の支援・協力を受けている。
また、各種事態において自衛隊が迅速かつ確実に活動を行うため、地方公共団体、警察・消防機関といった関係機関との連携を一層強化している。

3 地方公共団体及び地域住民の理解・協力を確保するための施策

全国8か所に設置された地方防衛局は、部隊や地方協力本部などと連携し、それぞれの地方との協力関係の構築に努めている。2022年度は、日米共同訓練をはじめとする各種訓練や、馬毛島における自衛隊施設の整備、鹿屋航空基地への米軍無人機MQ-9の一時展開などについて、地元説明を実施した。また、防衛政策全般に対する理解促進のため、地域住民を対象とした防衛問題セミナーの開催や地方公共団体などに対して防衛白書や2022年12月に策定された安保戦略などの説明を実施した。

図表IV-4-1-1 地方協力確保事務について

4 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策

 1 防衛施設の特徴と周辺地域との調和関連事業

(1)周辺対策事業など

防衛施設は、用途が多岐にわたり、広大な土地を必要とするものが多い。また、日米共同の訓練・演習の多様性・効率性を高めるため、2023年1月1日現在、在日米軍施設・区域(専用施設)の土地面積のうち約29%、76の専用施設のうち30施設を日米地位協定に基づき自衛隊が共同使用している。一方、多くの防衛施設の周辺地域で都市化が進んだ結果、防衛施設の設置・運用が制約されるという問題が生じている。また、航空機の頻繁な離着陸による騒音などが、周辺地域の生活環境に影響を及ぼすという問題もある。
そのうえで、防衛施設は、わが国の防衛力と日米安全保障体制を支える基盤としてわが国の安全保障に欠くことのできないものであり、その機能を十分に発揮させるためには、防衛施設と周辺地域との調和を図り、地域住民の理解と協力を得て、常に安定して使用できる状態に維持することが必要である。
このため、防衛省は、1974年以来、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(環境整備法)などに基づき、自衛隊や米軍の行為あるいは飛行場をはじめとする防衛施設の設置・運用により、その周辺地域において生じる航空機騒音などの障害の防止、軽減、緩和などの措置を講じてきた。

騒音防止工事の助成(北海道川上郡標茶町標茶中学校)

また、防衛施設の設置及び運用による障害を緩和するため、民生安定施設の整備に対する補助や、生活環境などに及ぼす影響が特に著しい防衛施設の周辺自治体に対する特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付などを実施している。なお、特定防衛施設周辺整備調整交付金については、施設整備だけでなく医療費助成などのいわゆるソフト事業にも活用されている。
2023年には、特定防衛施設の運用の態様やそれに伴う周辺地域への影響によりきめ細かく対応するために、特定防衛施設周辺整備調整交付金の算定における評価事項を見直すとともに、訓練の多様化などを踏まえて、特定防衛施設以外の防衛施設などにおける自衛隊及び米軍などの訓練を対象とする訓練交付金を創設し、さらには、地元自治体からの要望などを踏まえて、民生安定施設の助成内容を拡充するなど、自衛隊などの運用、そして地域への影響や地元からの要望といった実状を踏まえた制度の改正を行った。
防衛省としては、防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策のあり方について、関係地方公共団体からの要望などを踏まえ、厳しい財政事情を勘案し、より実態に即した効果的かつ効率的なものとなるよう引き続き検討している。

図表IV-4-1-2 在日米軍施設・区域(専用施設)の自衛隊との共同使用状況
図表IV-4-1-3 自衛隊施設(土地)の状況
図表IV-4-1-4 在日米軍施設・区域(専用施設)の状況
図表IV-4-1-5 令和5(2023)年度基地周辺対策費(契約ベース)

(2)在日米軍再編を促進するための交付金等

再編交付金は、再編を実施する前後の期間(原則10年間)において、再編が実施される地元市町村の住民生活の利便性の向上や産業の振興に寄与する事業の経費にあてるため、防衛大臣が再編関連特定防衛施設と再編関連特定周辺市町村を指定した後、在日米軍の再編に向けた措置の進み具合などに応じて交付される。
2023年4月現在、8防衛施設12市町村が再編交付金の交付対象となっている。そのほか、在日米軍再編を促進するため、予算措置により追加的な施策を実施している。

(3)その他の措置

①漁業補償
防衛省は、自衛隊又は在日米軍が水面を使用して行う訓練などのため、法律又は契約により制限水域を設定し、これに伴う損失を補償している。

②基地交付金など
総務省所管の防衛施設に関する交付金の制度である国有提供施設等所在市町村助成交付金(以下「基地交付金」という。)及び施設等所在市町村調整交付金(以下「調整交付金」という。)についても、防衛省は、各種情報提供などの協力を行っている。
基地交付金は、米軍や自衛隊が使用する飛行場などの施設が市町村の財政に著しい影響を与えていることから、固定資産税の代替的性格を基本として、その施設が所在する市町村に対して交付されるものである。
調整交付金は、米軍資産に対する固定資産税が非課税とされていることや、米軍の軍人や軍属にかかる市町村民税などが非課税にされていることから、米軍資産の所在する市町村に対して交付されるものである。

 2 在日米軍の駐留に関する理解と協力を得るための取組

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、在日米軍のプレゼンスとその即応性の維持は、わが国の安全を確保する上で極めて重要な要素である。在日米軍の安定的な駐留のためには、防衛施設周辺の地方公共団体や地域住民の方々の理解と協力を得ることが不可欠であり、様々な取組を不断に行っていくこととしている。

(1)在日米軍の部隊運用に関する地方公共団体などとの調整

防衛省では、在日米軍再編や在日米軍の訓練、部隊の展開、新規装備の配備などに際し、関係する地方公共団体及び地域住民に対して事前に説明するなど、在日米軍施設の維持や部隊運用に対する地元の理解の促進に努めている。

(2)在日米軍の運用における安全確保など

在日米軍の運用にあたって、地域住民の安全確保は大前提である。政府としては、首脳や閣僚レベルを含め、米側に対し、わが国の考え方をしっかり伝え、安全な運用の確保を最優先の課題として、日米両国で協力して取り組んでいる。
防衛省においては、米軍機の墜落、部品落下・遺失などが発生した際には、米側に対し、速やかな情報提供、安全管理及び再発防止の徹底などを求め、得られた情報は直ちに関係自治体などに説明しているほか、生じた被害が迅速・適切に補償されるよう措置している。
また、日米両国は、米軍機が日本国内の米軍施設・区域の外で墜落などした場合に備え、航空機事故に関するガイドラインを定め、迅速・的確に対応することとしている。
また、米軍人などによる飲酒に起因する事件・事故については、防衛省は、米側に対して、累次の機会を通じて、綱紀粛正及び隊員教育の徹底を申し入れている。
米側は、夜間飲酒規制措置、19歳以下の米軍人を対象とする夜間外出規制措置などを含む勤務時間外行動の指針(リバティ制度)を示すなどの対策を実施している。今後も日米間で協力して、飲酒事案の再発防止に努めていくこととしている。

(3)在日米軍と地域住民の交流の促進

防衛省では、日米の相互理解を深める取組として、地方公共団体と米軍の理解と協力を得ながら、在日米軍施設・区域周辺の住民の方々と米軍関係者がスポーツ、音楽、文化などを通じて交流を行う「日米交流事業」を開催している。
また、在日米軍においても、基地の開放(フレンドシップデー)、ホームページ・ソーシャルメディアを活用した情報発信など、地域の方々との相互理解を深めるための取組を行っている。

5 国家行事への参加

自衛隊は、国家的行事において、天皇、国賓などに対し、儀じょう、と列、礼砲などの礼式を実施している。諸外国からの国賓や公賓などがわが国を訪問した際の歓迎式典などにおける儀じょうは、国際儀礼上欠くことのできない行為である。
2022年9月27日、安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀に際し、儀じょう、と列、弔砲及び奏楽を実施するため、約1,390名の自衛隊員が参加した。

国葬儀にと列する隊員

6 南極地域観測に対する支援

自衛隊は、文部科学省が行う南極地域における科学的調査に対し、南極地域観測が再開された1965年から砕氷艦「ふじ」を、1983年以降は砕氷艦「しらせ」を、2009年以降は砕氷艦「しらせ」(2代目)をもって人員・物資の輸送及びその他の協力を行っている。
2022年11月から2023年4月の第64次南極地域観測協力においては、のべ142名の人員輸送、約1,120tの物資輸送、艦上観測支援、野外観測支援及び基地設営支援を実施した。

7 部外土木工事の受託

自衛隊は、自衛隊の訓練の目的に適合する場合に、国や地方公共団体が行う土木工事などの施工を受託している。陸自は、創隊以来8,271件の部外土木工事を受託している。
こうした活動により地域の災害対策に貢献するとともに、地域との連携を強化している。

8 その他の取組

 1 自衛隊機・米軍機に対するレーザー照射や凧揚げによる妨害事案への対応

飛行中の自衛隊機・米軍機に対するレーザー照射や凧揚げによる妨害事案が発生している。これらは、パイロットの操縦への障害につながり、墜落などの大惨事をもたらしかねない大変危険で悪質な行為である。そのため関係する地方公共団体の協力を得て、ポスターの掲示などにより、地域住民にこのような行為の危険性などについて周知するとともに、警察への通報について協力を依頼している。また、2016年12月に航空法施行規則が改正され、このような行為が規制対象とされるとともに、罰金などが科せられることとなった。

 2 防衛施設の上空及びその周辺における小型無人機などの飛行への対応

近年、民生用を含むドローンを用いたテロ事案やテロ未遂事案が各国で発生しており、それらの中には軍事施設を対象としたものも含まれている。わが国においても自衛隊の施設や在日米軍の施設・区域に対するドローンを用いたテロ攻撃が発生する可能性があるが、これらの施設に対する危険が生じれば、わが国を防衛するための基盤としての機能に重大な支障をきたしかねない。このため、2019年6月13日、改正小型無人機等飛行禁止法が施行され、防衛大臣が指定する自衛隊の施設や在日米軍の施設・区域の上空及びその周辺における小型無人機などの飛行が禁止されることとなった。2023年3月末現在、主要部隊司令部などが所在する260の自衛隊の施設及び45の在日米軍施設・区域が対象施設に指定されている。

 3 重要土地等調査法に関する対応

防衛省は、2013年12月に策定された前安保戦略において、安全保障の観点から防衛施設周辺における土地利用等のあり方について検討することとされたことを踏まえ、2013年度から防衛施設に隣接する土地所有の状況について、計画的に把握するための調査を行っている。
2020年7月、「経済財政運営と改革の基本方針2020について」(いわゆる「骨太の方針2020」)(令和2年7月17日閣議決定)において、「安全保障等の観点から、関係府省による情報収集など土地所有の状況把握に努め、土地利用・管理等のあり方について検討し、所要の措置を講ずる」ことが決定された。この閣議決定を受け、内閣官房に「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」が設置され、同会議の提言を踏まえた「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(いわゆる「重要土地等調査法」)」が、2021年6月23日に公布され、2022年9月20日に全面施行された。
2022年9月、「重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本方針」が閣議決定され、同年12月には初回の区域指定が公示された。一部の防衛関係施設の周囲は注視区域や特別注視区域に指定されている。
本法は、国防上の基盤である防衛関係施設の機能発揮を万全にする観点からも大きな意義があり、防衛省としては、内閣府と連携のうえ、適切に対応していくこととしている。

第2節 気候変動・環境問題への対応

地球環境の持続可能性に対する危機感は、国際的に高まっており、2015年には、持続可能な開発目標(SDGs)の国連における採択や気候変動に関する国際枠組みであるパリ協定の採択などを受け、各国で取組が進められている。
わが国においても、2018年に第5次環境基本計画を閣議決定し、持続可能な社会の実現に取り組んでいるところであり、国内外における取組をさらに加速させる旨表明している。また、2021年10月に地球温暖化対策計画、気候変動適応計画などを閣議決定し、2050年カーボンニュートラルや2030年度目標の達成に向け、具体的な気候変動対策が進められている。
こうした国内外における取組の加速を受け、防衛省としても、政府の一員として気候変動や環境問題の各種課題に対応し、解決に貢献するとともに、自衛隊施設及び米軍施設・区域と周辺地域の共生についてより一層重点を置いた施策を進める必要がある。
また、気候変動の問題は、将来のエネルギーシフトへの対応を含め、今後、防衛省・自衛隊の運用や各種計画、施設、防衛装備品、さらにわが国を取り巻く安全保障環境により一層の影響をもたらすことは必至であり、これらへも適切に対応していく必要がある。

1 防衛省・自衛隊の施設に関する取組

防衛省は、従前から政府の一員として、環境関連法令を遵守し、環境保全の徹底や環境負荷の低減に努めてきたところであり、「防衛省環境配慮の方針」のもとで環境への取組の推進を図ることとしている。2021年度には、本省内部部局に防衛省・自衛隊の環境政策全般を担当する環境政策課を新設するとともに、2022年度には、全国の地方防衛局に環境対策室を設置するなど、環境問題への対応について防衛省として一元的・効果的に実施する体制を整備したところであり、引き続き、さらなる施策の推進に取り組んでいく方針である。

 1 防衛省気候変動対処戦略

気候変動を安全保障上の課題として捉える動きが、国連安保理をはじめ各国の国防組織にも広がってきている。防衛省では、2021年5月に、防衛省気候変動タスクフォースを設置し、気候変動がわが国の安全保障に与える影響について評価及び分析し、必要な対応について幅広く検討を行った。
2022年8月、「防衛省気候変動対処戦略」を策定したところである。同文書は、気候変動が今後与える直接的・間接的な影響に対し、的確に適応・対応すべく、防衛省において今後推進すべき具体的な施策を掲げたところである。防衛省としては、同文書に基づき、気候変動への対処を防衛力の維持・強化と同時に進めていくこととしている。

 2 再生可能エネルギー電力の調達

防衛省・自衛隊は、約25万人の隊員を有し、日本全国の各地で施設や様々な装備品を運用しており、政府の機関で最大の電力需要家(政府全体の約4割)として、温室効果ガスの排出の削減などに貢献するため、2020年度から、防衛省・自衛隊施設の電力の調達にあたり、再生可能エネルギーにより発電された電力(以下「再エネ電力」という。)の調達を積極的に進めてきたところである。
2023年度においては、契約件数は全国で969件あり、その内50施設等において、再エネ電力の調達が実現した。また、36施設等では、再エネ比率100%の電力の調達が実現した。2023年度の再エネ電力の調達見込み量は、約9千万kWh(一般家庭約2万世帯超の年間電力使用量)であり、防衛省・自衛隊全体の予定使用電力量(約12億9千万kWh)の約7%を再エネ電力で調達することになる。2023年度の再エネ電力の調達は、ロシアによるウクライナ侵略を機としたLNGや原油価格の上昇、電力需給のひっ迫などの影響を受けた電力価格のさらなる高騰などにより、前年度に比べ調達量が大幅に減少したところであるが、防衛省としては、政府の一員として、引き続き、再エネ電力の調達比率が向上するよう努力していくこととしている。

図表IV-4-2-1 令和5(2023)年度再エネ導入施設一覧(予定使用電力量 上位10契約)

 3 再生可能エネルギーと安全保障の両立

気候変動問題への対応として風力発電を含む再生可能エネルギーの導入が進められており、風力発電設備は今後増加していくことが予想される。風力発電設備は、その設置場所や高さによっては、警戒管制レーダーの発する電波が遮られるなどして、航空機やミサイルの探知が困難になるなど、自衛隊や在日米軍の活動に影響を及ぼすおそれがある。このため、防衛省・自衛隊としては、事業者をはじめとする関係者との調整を事業計画の早期の段階からきめ細やかに行っている。
また、防衛戦略で、海空域や電波を円滑に利用し、防衛関連施設の機能を十全に発揮できるよう、風力発電施設の設置などの社会経済活動との調和を図る効果的な仕組みを確立する必要があるとされていることを踏まえ、引き続き、風力発電設備の設置による自衛隊や在日米軍の活動への影響を回避しつつ、再生可能エネルギーと安全保障の両立を図るための施策を推進していくこととしている。

 4 防衛省におけるPFOS(ピーフォス)処理実行計画

防衛省においては、PFOSを含有する泡消火薬剤などについて、PFOS処理実行計画を定め、交換及び処分を実施しており、2023年度末までの交換及び処分完了を目標として迅速に進めている。
また、2022年7月、全国の自衛隊施設において、過去にPFOSを含有する泡消火薬剤を使用していた又は使用していた可能性がある施設の泡消火設備専用の水槽の水の分析結果を公表した。この調査により、PFOSなどが検出された水槽の水については、引き続き適切に管理するとともに、2022年度から、順次、処分を進めている。

2 在日米軍施設・区域に関する取組

在日米軍は、環境補足協定や在日米軍が策定した日本環境管理基準(JEGS:Japan Environmental Governing Standards)に基づき、周辺の環境保護と米軍関係者や周辺住民の安全確保のため、適切な環境管理に努めている。

 1 光熱水料節約の取組

在日米軍施設・区域においては、エネルギー効率の良い暖房・換気・空調設備への交換、不在時に消灯する人感センサーの設置、太陽光発電パネルの設置、冷暖房の運用期間の短縮・設定温度の見直し、照明の制御及び夜間照明の消灯などの光熱水料節約の取組を行っている。

 2 PFOSを巡る問題への対応

在日米軍においても、本州に所在する全ての陸軍の施設、わが国における全ての海軍の施設及び全ての海兵隊の施設において泡消火薬剤の交換作業が完了した旨の説明を受けており、在日米軍全体として保有する泡消火薬剤の交換を順次進めている。
また、政府として、2022年5月の横須賀海軍施設におけるPFOSなどを含む排水の漏出事案や、同年9月の厚木海軍飛行場における泡消火薬剤が混入した水の漏出事案の際には、環境補足協定に基づき、関係自治体とともに施設の立入りを実施した。防衛省としては、引き続き、関係省庁、関係自治体及び米側と緊密に連携し、必要な対応を行っていくこととしている。

第3節 情報発信や公文書管理・情報公開など

1 様々な広報活動

防衛省・自衛隊の活動は、国民一人一人の理解と支持があって初めて成り立つものであり、分かりやすい広報活動を積極的に行い、国民の信頼と協力を得ていくことが重要である。
このため、防衛省・自衛隊の活動について、国民にとって分かりやすい広報活動を様々な方法で、より積極的に行っていくこととしている。
また、自衛隊が任務を安定的に遂行するためには、諸外国の理解と支持も不可欠であることから、自衛隊の海外における活動を含む防衛省・自衛隊の取組について、国際社会に向けた情報発信を強化することも重要である。

 1 国内外に対する情報発信など

防衛省・自衛隊は、公式ホームページ、SNS(Social Networking Service)、動画配信など、インターネットを活用した積極的な情報発信に取り組んでいる。
また、パンフレットや広報動画の作成、広報誌『MAMOR(マモル)』への編集協力、報道機関への取材協力、講義や講演への講師派遣など、正確な情報を、幅広く、適時に提供するよう努めている。
さらに、防衛省・自衛隊の活動が世界中に広がる中、国際社会に対して、その活動を正確に広報し、諸外国の理解と信頼を得ることが大変重要である。そのための取組として、英語による情報発信を行っており、特に、英語版防衛省ホームページの一層の充実とSNSを活用した迅速かつ分かりやすい情報発信を英語で積極的に行っているほか、海外メディアへの取材機会の提供、英語版の防衛白書の作成、英文広報パンフレット「Japan Defense Focus(JDF)」の発行など様々な方法により国際社会に向けた情報発信を行っている。

 2 イベント・広報施設など

防衛省・自衛隊では、自衛隊の現状を広く国民に紹介する活動を行っている。この活動には、陸自の富士総合火力演習や海自の体験航海、空自によるブルーインパルスの展示飛行などがある。また、全国に所在する駐屯地や基地などでは、部隊の創立記念日などに、装備品の展示や部隊見学などを行うとともに、地元の協力を得て、市中でのパレードを行っている例もある。さらに、自衛隊記念日記念行事の一環として、自衛隊音楽まつりを毎年開催している。

沖縄の離島(宮古島)で初の展示飛行を行うブルーインパルス

また、陸・海・空自がそれぞれ主担当となって観閲式、観艦式、航空観閲式を行っている。海自創設70周年の節目となる2022年は、相模湾において、海自のほか、陸空自、海上保安庁、外国海軍などの参加を得て、前年の観閲式と同様、無観客の形態で観艦式(国際観艦式)を実施した。
広報施設の公開にも積極的に取り組んでおり、市ヶ谷地区内の施設見学(市ヶ谷台ツアー)では、大本営地下壕跡も公開されており、2023年3月末現在までに約47万8,100人の見学者が訪れている。そのほか、各自衛隊において、広報館や史料館などを公開している。

 3 隊内生活体験

防衛省・自衛隊は、大学生・大学院生又は女性を対象とした自衛隊生活体験ツアーや、団体・企業などを対象とした隊内生活体験を行っている。これらは、自衛隊の生活や訓練を体験するとともに、隊員とじかに接することにより、自衛隊に対する理解を促進するものである。

2 公文書管理・情報公開に関する取組

 1 公文書の適切な管理及び情報公開制度の適切な運用の必要性

わが国において最も重要な制度である民主主義の根幹は、国民が正確な情報に接し、それに基づき国民が適切な判断を行って主権を行使することにあり、国民が正確な情報に接するうえで、政府が保有する行政文書は、最も重要な資料である。このため、行政文書を適切に管理し、情報公開請求に適切に対応することは、防衛省・自衛隊を含む政府の重要な責務である。

 2 公文書の適切な管理及び情報公開制度の適切な運用の推進

防衛省・自衛隊は、南スーダン日報問題及びイラク日報問題により、防衛省・自衛隊に対する国民の不信を招いたことを重く受け止めている。
防衛省・自衛隊は、政府全体として公文書管理の適正化に向けて必要となる施策を取りまとめた「公文書管理の適正の確保のための取組について」(平成30年7月20日行政文書の在り方等に関する閣僚会議決定)も踏まえた再発防止策に全力で取り組み、職員の意識や組織の文化を改革し、チェック態勢を充実させるなど、行政文書の管理や情報公開請求への対応の適正化に取り組んでいる。

3 政策評価などに関する取組

 1 政策評価への取組

防衛省は、政策評価制度に基づき各種施策について評価を行っており、2022年度には、防衛大綱及び中期防の主要な政策のほか、研究開発や租税特別措置に関する事業の政策評価を行った。

 2 証拠に基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)の推進

防衛省は、EBPMの取組を担当する政策立案総括審議官のもと、政策評価などと連携し、EBPMの取組を推進している。

 3 個人情報保護に関する取組

「個人情報の保護に関する法律」に基づき、個人の権利利益を保護するため、保有する個人情報の安全管理などの措置を講ずるとともに、保有個人情報の開示請求などに適切に対応している。

 4 公益通報者保護制度の適切な運用

防衛省では、内部の職員などからの公益通報に対応する制度と外部の労働者などからの公益通報に対応する制度を整備し、それぞれの窓口を設置して公益通報への対応、公益通報者の保護などを行っている。

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