余白

わぁ、なんてビビットなことばなんだろう。

テンポが軽快で、お話が主人公の心の声でポンポン進んでいく。ページがどんどん進む短編集だなぁ、読みやすいわぁといってるうちに、ちょっと待った。ストレートで奔放なようで、細やかなひとの姿がすぐそこに浮き立ってくるではありませんか。もっと知りたい、読みたいとページをめくっていました。

会話がどれも秀逸で、話者の様子や表情まで見えるよう。主人公たちはいつも人々をよく見ていて、いい聞き手でもあるんです。

中でも、ユリさんとの会話、好きなんですよね。というか、エピソードに登場する人物三人、全員が愛おしくなりました。

なんか元気になるんですよね、どの章を読んでも。


小説を読む時、無意識に特定の登場人物に移入して読んでしまう傾向があるのですが、残りのページが少なくなるにつれ、寂しく感じることがあります。離れ難くなると言いますか。次の未知なる展開を期待して、声を探してしまう。『全部を賭けない恋がはじまれば』もそんな一冊でした。

このお話の中に出てくるような、内なる声を自ら照らし出し、あゆみを進めていこうとする人々の声が、沢山たくさん聞けますように。



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