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中学受験も有名大学も知らずに育った

だから何?的なハナシではある。

僕は人口がそれほど多くない地方都市の、中産階級で育った。

父親は8人兄弟のド貧困育ちで、中学を卒業してから某大手電気メーカーの工場で働きながら工業高校へ夜間に通い、エアコン開発などのエンジニアになった。僕が幼少期を暮らした町は、その電気メーカーと製紙業が産業の中心だった。
母親のほうも貧しく、山奥の集落みたいなところの育ちで、母もその父 (僕の祖父) も同じ電気メーカーで働いていた。祖父は復員後、40年ライン工を勤めあげた。

生まれてから数年は、ボロボロの木造の、いわゆる「長屋」的な平屋に住んでいた。汲み取り式便所で、"半分外" みたいな風呂場にはコオロギがたくさんいた。そういう家屋に住んでいる友達はたくさんいた。3歳下の妹もこの家で生まれた。この頃はまだ生活が貧しかったような気がする。

僕が幼稚園の年長くらい、つまり1980年ごろ、当時30代前半だった父親 (大手から独立して機械工場を起業していた) は、その平屋から近い場所に、4DKくらいの新築マンションを購入した。当時 「いっせんまん」 と聞いた記憶がある。このころは、似たようなマンションがドンドン建っていた。しかし先ほどのような長屋もまだまだ多かったし、団地も多かった。

工業によって栄えた町。
マンションの治安は決して良いとは言えるものではなかったし、学校には頭にシラミのいる子、体操服を買い換えてもらえない子、あるいは低学年なのにグレて煙草を吸っている子などもいた。第二次ベビーブームで、僕の世代はヒト学年に40人強、7~8クラスあった。
お金持ちの子は綺麗で大きな戸建てに住んでいた。そういうところの子はファミコンソフトなどをたくさん買ってもらっていたから、皆で綺麗なおうちに集まったりした。おいしい紅茶やケーキなどの洋菓子を初めて知った。しかし "僕のまわりには" そういう子は少なかった印象だ。それ以外の世界があったとしても、知らなかった。

外食は月に一度あるかないかくらいの頻度で「すかいらーく」で、「小僧寿し」の出前が贅沢だった。旅行は近場の安い温泉旅館が多かった。父は遅くまで働いていたが、それでも野球中継がまだ放映している時間には家にいて、母は同じマンションにオフィスのあるナニかの会社の事務のパート働きをしていた。

父親が40歳のとき (僕が小6のとき) すぐ隣の市に引っ越した。父は自分の職場に近いところに、新築の建売住宅を買った。50坪以上はあったと思う。1985年。父の商売は物凄く順調で、収入は右肩上がりだったと思う。父が発明した精密機械が国の特許を取り、父は理系の大学で講演などもしていた。生活は、目に見えて羽振りが良くなりはじめた。車が会社のライトバンからセダンの高級車になり、父はクラブで飲むようになった。この時点で、ある意味 「真の」 中産階級、あるいはちょっとイイトコの家のようになった感じがした。

しかし当たり前のように僕は家から近い公立中学に入った。中学受験なんていうものの存在は、少なくとも僕はこれっぽっちも知らなかった。
もちろん僕の知らないところで私立中学に行った人もいるかもしれないが、友人とも、そして両親とも、そんな話をしたこともなかった。
上にも書いたけれど、父も母も、その兄弟たちなどの親類も本当に貧しい育ち、つまり「低学歴」「低階層」だったし、居住エリア/集合住宅などは近い層であるていどは固まる傾向はあるだろうから、そんなもんだと思う。

公立中学は高校受験に向けて個人差が出てくる。そして大学へ繋がっていく。高校受験あたりから将来がおぼろげに姿をあらわすのである。
中学に入っても、僕は大学などほとんど知らなかった。「六大学野球」からの知識での東大、早稲田、慶應、明治などは知っていたが、その他は地元の県立大とか日大〇〇とかくらい。
母親たちの会話などでは、「どこどこの誰さんとこの息子さんが静(岡)大に入ったらしい」 とかいう話が称賛されていた。早稲田なんていったら天才しか行けないくらいのレベルで話されていた。中3くらいになってきてやっと大学と偏差値のおおまかな知識くらいは持つようになった。
(ちなみに8人兄弟の父親の兄・弟の子供たち、つまり僕のたくさんのイトコたちは、ほぼ全員高学歴だ)

これは僕のコンプレックスの話ではない。ビンボー自慢でもまったくない。
昭和の、地方の工業の町で育ち、親が貧困層で育ってきたので、そういう風景しか見えなかったという話だ。
なので中受とか、ネットの高学歴のお歴々の話を見たときは心底驚いた。

もちろんド貧困から時代の景気と "努力" で「成りあがった」 父と、彼を支えた母のおかげで今の自分がある。
父親は家を建ててから7年後に会社が潰れてその家をうしない、そこから僕も貧乏を経験したが、それはまた別の話。

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