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東京という都市の『多様性』(アニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』)

世界最大の都市の一つ、東京。
『東京』という都市について皆さんはどのように感じているでしょうか。
私は沢山の高層ビルが立ち並んでいる街並みを頭に思い浮かべます。

 今回はアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』という作品から
東京という都市の姿を辿っていきたいと思います。

1.アニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』とは

アニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』は『エスタブライフ』という企画の一角をなす作品です。(今後は映画・スマホゲームにも展開予定。)

2022年4~6月にフジテレビ『+Ultra』という配信サービスで放映されました。

いわゆるアニメでよくある手書きで書かれた作品ではなく、3DCGを使用して作られた作品であること、テレビで放映されなかったことから
あまり知名度は上がりませんでしたが、個人的には密かに評価されてほしい作品の一つです。

★あらすじ

「生きるのがツライ? なら逃げちゃえばいいんですよ」
ずっと先の未来。人間はそれまでの姿形だけでなく、獣人・サイボーグ・魔族など多様な姿を持つようになった。東京の街は、AIが管理する高い壁に囲まれた数多の地域「クラスタ」となり、自由な行き来をやめ、それぞれが独自の文化・常識を育んだ。人々は、自らが生まれたクラスタの常識を基準に幸せな人生を送る。
 
しかし、なかには自らのクラスタに適応できない者も現れる──。
そうした人々を、別のクラスタへと「逃がす」ことを生業にする者たちがいる。
「逃げたい人」たちから依頼を受け、あらゆる方法を駆使してAIの裏をかき、本来は不可能であるクラスタ間の移動を成し遂げる者たち──「逃がし屋」。
 
逃げて、逃げて、逃げまくる!!
逃げたい人をお手伝いする、5人の逃がし屋たちの物語──!

★『エスタブライフ グレイトエスケープ』より
https://establife.tokyo/

2.東京を魔改造する。

アニメ『エスタブライフ』の魅力は何といっても『東京が複数の地域に分裂してしまった』世界観でしょう。

東京を描いた作品は数多くありますが、ここまで東京を魔改造した作品は初めて見ました。

面白いことに各地域で偏見に満ち溢れた設定になっています。

例えば、第3話で登場する池袋では南北に縦断する鉄道によって東西に分断されています。(ベル○ンの壁のようなイメージ)

そして東側にはペンギンのバレエ団がいるという設定になっています。

おそらく東池袋にある『サンシャインシティ水族館』と20世紀後半ずっと続いていた『冷戦』をかけ合わせたものでしょう。ペンギンショーを旧ソ連で有名なバレエに重ね合わせたのは中々秀逸な設定です。

水族館が置かれているサンシャイン60は1978年に建てられた比較的古い高層ビルであることも、『冷戦』のイメージを引きたてているのかもしれません。

冷戦時代のアメリカか旧ソ連にありそう。

 ちなみに池袋の設定については次のように言及されています…

“池袋のクラスタを作った時、話しましたよね。「とあるビルの屋上にペンギンがいるけど、60階という高層にいるペンギンなんて他にいるのかな」とか「そもそも何であんな上に水族館を作ってしまったんだろう?」とか。リアル自体がおかしいところもあるし、そこを広げていったらおもしろいかもって。”

★animete Times 「橋本監督へのオファーは「女好き」だから? 
ダメ人間のダメな悩みを、みんなで考えてみようを描いた
春アニメ『エスタブライフ』原案・クリエイティブ統括・谷口悟朗さん、
監督・橋本裕之さん、シリーズ構成・脚本の賀東招二さん座談会をお届け!」より
https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1650334614&p=2

3.東京という都市の多様性。

東京という都市が多くの地域に分断されている世界。

ぶっ飛んだ世界観に思えてきますが、現実の「東京」でも似たようなことを感じることがあるのではないかというのが個人的な所見です。

例えば、東京を地下鉄で移動するとき。

『エスタブライフ』では各地域間を移動する方法として
関所を無理矢理突破する方法の他、
地下を走る鉄道『都営大江戸線』を利用することもあります。

現実でも東京の地下鉄に乗って移動したあと、地上で全く違う街並みが見えたときには確かに違う街へワープしたように感じてしまいます。つまり…

地下鉄に乗って東京を巡ると、東京が複数の街に分かれているのではないかと感じる。

アニメスタッフさんの方々はそんなことを思いながら『都営大江戸線』をアニメの設定に取り込んだかもしれません。

また、周辺地域とは異なる建物群・景観が現れたとき。

新宿・秋葉原・渋谷・下北沢・お台場・浅草など個性的な景観がある街に行く度に新たな発見があるように感じます。

改めて東京には『多くの地域に分断されている』のではないかと思わせるほど多様な側面を持っているのではないかと気付かされました。

ちなみに設定については以下のような言及がありました。

“そもそもゲームとして作られた企画だったんです。いろいろなクラスタ(街)が出てくるゲームを考えていて、クラスタを分けるには、理由がないといけない。種が分かれ、倫理観が違うから一緒にいられないという理由があれば、分けることができる。人間も国、民族、歴史、文化が違うものですし、それをそのまま当てはめようとしました。架空の世界、都市ではなく、東京をベースにすれば、とっかかりとして入りやすい。海外の作品で、意図的に勘違いした日本が出てくるのが好きで、日本をカリカチュアしようとしました。真っ先に笑いものにするなら東京だろうと”

★MANTAN WEB「エスタブライフ:谷口悟朗の話題のアニメ 実験の裏側 
「人は分かり合えない」から生まれるドラマ」より
https://mantan-web.jp/article/20220417dog00m200007000c.html

“アニメは東京を中心にとらえたものとなっていますが、設定上は全世界が同じようにクラスタに分かれていて、アメリカだとか中国だとかヨーロッパにもクラスタが存在しています。こうした設定を世界中の皆さんにも共有してもらって、自分たちが暮らしている場所や出身地などを、良い意味で記号化させて楽しんでほしいなと思っています。”

★IGN JAPAN 「メディアの垣根、手描きとCGの垣根を越えて目指した地平とは――
TVアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』谷口悟朗監督&橋本裕之監督インタビュー」より
https://jp.ign.com/establife-tvanime/58980/interview/cgtv

4.シンプルなストーリー・魅力的なキャラクター

内容としましては基本的には1話完結でお話が進んでいくことに加え、解釈が難しいと感じる部分が少ないためシンプルで見やすい展開になっています。また、シリアスな部分、笑いある部分のバランスもちょうど良い塩梅で楽しく視聴できました。

キャラクターも世界観に負けないほど魅力的です。メインヒロイン3人の掛け合いも中々面白くまとまっていました。出来れば男性キャラクターの深掘りもしてほしかったですけどね…

5.まとめ

今日はアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』についてご紹介しました。

ストーリー展開がシンプルなこと、映像描写が細かすぎないことから
普段アニメを見ない方こそ楽しめる作品だと思います。

アニメスタッフの方々が思い描く「偏見たっぷりな東京」とはどんな街なのか、ぜひ本編を見て確かめてみてください。

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