KORG minilogue


あまり状態は良くないということでした


届いて2週間くらいでの雑感です

今さらminilogueを購入

一カ月くらい前(2022年11月)に楽器店の通販サイトに「訳アリ」中古のKORG minilogue(2016年1月発売)が掲載されて、相場よりだいぶ安いしすぐ売れてしまうかな、と思ってしばらく様子を見ていたのですがなかなか売れる様子がなかったので購入してみることにしました。
ここ5年くらいは減算式シンセというとバーチャルアナログのmicroKORGが気に入っていた(今もお気に入り)のですが、そろそろ買ってみようかな、くらいには思ってはいたので、少し早くなりましたがタイミングだったのかもしれません。
Prophet-6やminilogueが登場した2015~6年頃はまだアナログシンセも流れ的に復刻途上という感じだったのですが、この5年間くらいで選択肢もかなり増えてきました。減算式という意味ではデジタル(バーチャルアナログシンセやソフトシンセ)もアナログも扱い方は同じなのですが、アナログの「不測」の部分の魅力が2020年に復刻されたProphet-5 rev4によって明確に出てきた感じもします。その部分はデジタルでも再現可能で、ローランドなどはそのあたりを追求してデジタルにこだわっているようですし、あるいはU-heのreproなどその再現性で評判のよいソフトシンセも出ています。ただアナログがそのまま身近にあるのであれば素直にその良さを享受しても良いのではないかとも思っています。

届いたminilogueの状態

minilogueは中古でもあまり価格が落ちないのですが、今回は安く(3万円程度)手に入ったのでラッキーでした。スイッチまわりの不調やツマミのべたつきが「訳アリ」ということで記載されていたのですが、実際届いたものはそこまでの問題はありませんでした。ツマミは市販品と交換すればよいですし、スイッチは分解してクリーニングすれば大丈夫かなと思っていたのですが、その必要は今のところ無さそうです。(ちなみにminilogueのツマミは加水分解でべたつきが出ることはよく話題になっています。)

届いたところでツマミをいちどはずして清掃

ただ、それとは別にしばらく使用してると突然電源が落ちる、という現象が発生しました。これはちょっと厄介な気がしたのですが、挙動を観察すると物理的に動かしたときに発生していて、ACアダプタの接続端子の接触不良が原因のようでした。たまたま同型のアダプタが手元にあったので交換したところ問題なく動くようになりました。
シリアルナンバーは2000番台。現在までのminilogueの出荷数は分かりませんが、かなり初期のものかと思われます。ファームウェアのバージョンも1.21。最新バージョンは2.01なので、KORGのサイトからアップデータを入手して更新しました。これでマイクロチューニングが使えるようになります。


ファームウェアをver1.21から2.01に更新


minilogueの良いところ

●価格
やはり新品で5万円のアナログポリフォニックという価格設定が衝撃でした。ただアナログであるだけでなく、基本性能を押さえた実用的なシンセサイザーであるところが大事な点です。実際よく売れてるのではないでしょうか。
●2VCOであること
昔の低価格帯のポリシンセはJUNO-6やPOLY-6など1オシレータにサブオシレターが付くイメージがありましたが、minilogueは1ボイスに独立した2つのオシレータが搭載されています。これによりデチューンしたり後述のモジュレーションと組みあわせた多様な音作りにも対応します。
●VCOであることの魅力
minilogueはアナログ回路の音源になっているようで、それによってデジタルのmicroKORGなどと違い、とくに和音を弾いたときに自然な滲みがでます。また高音域の頭打ち感が無いため、音がすっと抜けてくる「近さ」のようなものが感じられます。チューニングしても安定しないピッチなどデジタルに慣れているとちょっと面喰うところもあります。
●すぐ使える構成
パネル構成に変わったところはなく、見たまま、シンセサイザーを使ったことがある人なら少し弄ればフルスロットルで使いこなせると思います。一方で、聞いたことも無いような新しい音との出会いにはあまり期待できないかもしれません。表現の幅が狭いわけではないのですが。
●ポリフォニック
4音と必要最小限ではありますが、ポリフォニックであることはやはり鍵盤楽器としてはありがたいと思います。
●軽さ(2.8Kg)
デジタルのmicroKORGに迫る軽さを実現しています。重いイメージのあるアナログシンセですが、この概念が覆されています。持ち運びたくもなります。
●クロスモジュレーション、シンク、リングモジュレーション
FM変調等金属的な音や歪を得られるので、いわゆる「アナログシンセ」的なイメージを超えた音を得ることができます。昔の低価格帯のシンセはこのあたりの機能が削られていたのでとても魅力的です。
●2POLE/4POLE切り替えができるフィルター
後発のminilogueXDも評判が良いのですが、フィルターに関しては初代minilogueに軍配が上がります。4POLEフィルターはより深く効くフィルターになっています。
●フィルターの発振
フィルター発振を言葉で説明するのは難しいのですが、これによって曖昧な倍音を含んだ音作りが可能になります。フィルター発振する、しないでシンセ音作りの幅が規定されるところもありましたが、minilogueはその点優秀です。更にサイン波のオシレータとしてベース音源に用いたりすることも可能です。
●スムーズなツマミ
今のシンセサイザーはアナログであっても制御自体はデジタルですが、minilogueはツマミがかなり細かくスキャンされて、よりきめの細かい設定ができるようになっています。実際触ってみるとなるほどモダンな感触を味わえます。
●モーション・シーケンス
ツマミの動きを記憶してくれる16ステップ4トラックのモーションシーケンスを備えているのでこれを活用すれば音により幅広い動きを与えることができます。音色の一部として保存されるのも助かります。
●16ステップポリフォニックシーケンサー
欲をいえばもう少しステップ数があると良いのですが、さっと使えて便利です。ポリフォニックであることも嬉しいですし、これも音色の一部として保存されます。

いまいちなところ

●LFOの接続先が1つに限られる
LFOの送り先にピッチ、フィルター、波形と3つの選択肢が与えられていますが、どれか1つに限られています。必要に応じて先のモーションシーケンスなどを併用するなど工夫すれば補えるところではあるのですが。
●4音ポリフォニック37鍵
もちろん4音でもポリフォニックは嬉しいのですが、弾いてみるとやはりこれで5音、6音あれば…という思いが出てきます。また、3オクターブ37鍵は今の小型シンセでは定番になっていますが、やはり「弾く」となるとちょっと足りない。せめて4オクターブ欲しくなってしまいます。贅沢なものです。
●エンベロープのリトリガーの挙動
4ポリは和音を弾くとぎりぎりなのでフワーっとした音で和音で弾いてるときに次の音に行くところで途切れてしまうのが若干気になります。シンセによって挙動に違いがあってあまり気にならないものもあるのですが、現状minilogueでは弾き方で工夫するしかなさそうです。
●ダイヤル式のプログラムチェンジ
家で使うには問題ありませんが、もしライブで使うのであればダイヤル式はちょっと不便です。準備の段階で音色の配列などを気に掛けるのがよさそうです。
●ピッチの安定性
電源投入時にはまずチューニングモードに入り、正しいピッチで弾けますが、その後しばらくすると音程がかなり怪しくなります。その後もう一度チューニングすれば安定しますが、チューニングの操作(SHIFT+REC)は覚えておく必要があります。個体差や製造時期による違いもあるかもしれませんが、ライブで使う場合は要注意です。

他のシンセと比べて

●microKORGとminilogue
発売20年を迎えいまだ現行のバーチャルアナログシンセのmicroKORG。同じ2オシレータの減算式シンセですが、機能面ではminilogueより複雑なパッチを組むことができます。ただ、音を聞くとminilogueのアナログの鳴りも魅力的です。一方でデジタルで安定しているmicroKORGははとくに持ち運ぶには圧倒的な安心・安定感がありますし、microKORG1台あれば何とかなる場面もまだまだ多そうです。
●minilogue bassのリリース
昨年末に発売されたばかりのブラックバージョン「minilogue bass」は、初代のカラバリ機ですが、プリセットが刷新されたので気に入った音が入っていたら選択肢としてどちらもありでしょう。一方で自分で作った音で使う人にとっては同じように使えるはずです。
●minilogue XDと比べて
minilogueの後、コルグはフルサイズのprologue(8音と16音ポリフォニックの2機種)をリリース。プログラミング技術があれば自ら音源を開発できるデジタル音源も搭載していて、これまでのアナログシンセとはまた違う切り口の楽器に仕上がっていました。それをふたたびminilogueサイズに還元したのがminilogue XD。形は似ていますが、違いもかなりあります。どちらにもいいところがあるのですが、初代minilogueはスタンダードなシンセとして、またフィルターやエンベロープなど仕様的にも優位です。一方でXDはデジタルオシレータの発展性に魅力があります。コルグはほかにもopsix / wavestate / modwaveといった魅力的なデジタルシンセも作っているため「シンセを一台選ぶなら」という問いに対しては嬉しくも悩ましい状況ではあります。
●そのほかのシンセ
デジタル、アナログの枠にこだわらなければMicroFreak、RefaceCS、HydraSynth Explorer、Cobalt5S、Deepmind6、JX-08…等いろいろな選択肢がありますが、minilogueは純アナログシンセとしてのアイデンティティをしっかり持っているように思えます。
●Prophet-5とくらべて
2オシレータの減算式シンセとしてはminilogueもProphet-5の影響を多少なりとも受けている部分があるでしょう。「違う」とは言い切れない部分が多々あります。基本的にはどちらも同じ考え方で扱うことが出来るシンセであり、minilogueが大きく劣っているということも無さそうです。10倍ほどの価格の差も使う人次第で埋まったり埋まらなかったりということではないでしょうか。
●Behringer Pro-800
1983年に発売されたSequential Circuit Prophet-600を参考に作られたbehringer Pro-800が間もなく発売されるようです。minilogueの倍の同時発音数音を持つ2オシレータのアナログシンセで、紹介動画の中で「同価格帯のシンセは半分の発音数しか得られない」と言っているところを見てもminilogueを意識しているのは間違いないでしょう。ただ、minilogueの「新しいヴィンテージ」を目指すものとは違い「復刻」のイメージ(新しい要素も入ってはいるのですが)が強い製品なので、どのように受け入れられていくのか興味深いところです。

現時点で

と、色々書きましたが、届いたばかりなので今後どんな風に使っていくかまだ分かりません。中心に置いて使うかもしれませんし、あるいは思い出した時に引っ張り出してくる感じかもしれません。ともあれアナログポリシンセに求めるものが一通り詰まった価値ある一台であることは間違いないようです。今さらですが。

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