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KIRINJI 25th ANNIVERSARY LIVE 前編

2024年5月25日、LINE CUBE SHIBUYAで行われました、"KIRINJI 25th ANNIVERSARY LIVE" に行ってきました!

かねてより大好きなKIRINJIが、デビューの1998年から25年が経ったということで。様々編成を変えながら歩んできた25年。私がファンとして見てきたものもそうでないものも、たくさんのものを感じることができた、素敵な一夜になりました。ぜひ文章に残しておきたく、例によって前編後編でお送りいたします。笑
正直、私ファン歴自体は25年はおろか、5年そこそこくらいしかございません。それでもその5年ほどの間私が見てきた様々な景色が満遍なく思い出されるほどに、印象的な場面がいくつもありました。そんな私の思い出も末筆ながらではありますが添えさせていただきつつ、この夜の感想を記していきたいと思います。(途中、敬称略で記載されている部分があります。ご容赦ください。)

KIRINJI(キリンジ)とは


堀込高樹・堀込泰行の兄弟グループ「キリンジ」は1998年、シングル『双子座グラフィティ』でメジャーデビュー。代表作『3』を含む10枚のフルアルバムをリリース。2013年に弟の堀込泰行が脱退し、以降は兄堀込高樹が『KIRINJI』とグループ表記を変え再スタート。それはサポートとして参加していた千ヶ崎学、楠均、田村玄一に加え、弓木英梨乃、コトリンゴという新たな顔ぶれを加えるという、バンドとしての再出発をすることになった。私はこの時期にKIRINJIに出会う。
途中メンバーの脱退もありながら、バンド活動は2020年12月に終了。以降堀込高樹のソロプロジェクトとなり、現在に至る。ソロプロジェクトとなりおよそ3年半が経つが、その間2枚のフルアルバムと絵本(※後述)をリリースするなど、現在も精力的に活動中。私の5年余りの思い出は、バンド期とソロプロジェクト期に詰まっています。

前編 〜弾き語り、4人編成〜

17時30分。およそ定刻通りにスタート。
舞台に、黒一色の衣装に身をつつんだ堀込高樹が登場。ギターを片手に演奏を始めるのは『ムラサキ⭐︎サンセット』。やはり、弾き語りで始まるならこの曲だなと思っていた。
KIRINJIは2022年から弾き語りツアーを行なっている。きっかけはコロナ禍のとある配信でふと弾き語りを行ったところこれが好評で、ということであったが確かに、かつてキリンジのリードギターであった高樹さんが弾き語り、というのは昔からのファンの方からすると想像もしていなかった嬉しい転換なのだと思う。
本人すら予想していなかった、50代からの初の挑戦。私も昨年、福島まで足を伸ばして弾き語り公演を観に行った。その時の1曲目も『ムラサキ⭐︎サンセット』。福島公演の会場であった旧広瀬座の、空気の冷たさを思い出す。

10月であったがとても寒かった。。。
各公演いわゆる文化財で行われることが多く、
非常に趣深かった。

弾き語りで『ネンネコ』『虹を創ろう』『一度きりの上映』『愛のCoda』と演奏。いずれも弾き語り公演ではよく演奏された楽曲たち。『一度きりの上映』はKIRINJIではなく堀込高樹名義で2005年にリリースされたアルバム『Home ground』の中の一曲。キリンジがKIRINJIとなった以降、堀込高樹名義の曲たちもライブで合流する機会がたくさんあったように思う。コロナ禍を経たライブでの『クレゾールの魔法』はあまりの時代回収の世界観に驚いたこともあった。

続いて『まぶしがりや』の演奏が始まると、ステージ上に1人の姿が。真っ直ぐと進みコントラバスベースを手に取る。千ヶ崎学だ。先述の『Home ground』のライブの際も、そしてキリンジ時代から長らく高樹さんを支えてきた千ヶ崎さんが、そっと後ろからベースを手に取り高樹さんの演奏に加わっていく。
弾き語りと少人数編成がある、という予告はあったがこのような演出は予想していなかった。そしてそのまま2人で演奏される『まぶしがりや』は、私自身もコロナ禍である2020年に開催されたフェス「slow live」で初めてこの曲の生演奏を聴き圧倒された、その時の記憶を鮮明に思い出させた。ファン歴が比較的浅い私の、浅いながら深く刻まれた記憶に寄り添ってくれるようなお二人の演奏には、感謝してもしきれない、そんな気持ちであった。

続いての演奏『薄明』では、予告通りの4人編成演奏がスタート。この4人編成というのは、先の堀込高樹名義で、2020年にリリースされた『あの人が歌うのをきいたことがない』(以下"絵本")で初めて組まれた、通常のバンド編成のKIRINJIよりもやや音数の少ない、アコースティック寄りな編成である。
ところでなぜ絵本と呼ばせて頂いているかというと、このリリースが絵本をもとになっているという点にある。絵を福田利之さん、そして文を高樹さんという作品で、はじめは絵本の文を書く、というところから始まり、楽曲へと発展していった、そんな作品である。
その4人編成のメンバーは堀込高樹、千ヶ崎学に加え、元KIRINJIメンバーの楠均、そしてピアノには林正樹という面々。この編成でのライブは2022年3月に東阪ブルーノート・ビルボードツアーにてライブ初披露され、私が観たのは2023年のslow live。聴き慣れた曲たちが一風変わったアレンジで披露されるこの編成は個人的にもとてもお気に入り。

この日の4人編成は、堀込高樹千ヶ崎学に加え、ドラムはソロプロジェクト以降のKIRINJIにおいて欠かせない伊吹文裕、ピアノは同じくソロプロジェクト期から参加の小田朋美という顔ぶれ。いずれも今の音楽シーンではひっぱりだこ中のひっぱりだこである。
しかしそうか、ピアノは小田朋美という線があったか!とこの時感じた。ソロプロジェクト以降のKIRINJIバンド編成ではキーボードを2人携えており、1人はこちらも各所でひっぱりだこの宮川純、そして小田朋美というのが最近の鉄板。主にピアノ・オルガン系を宮川さんが務め、シンセ・コーラスを小田さんというイメージがあったため、ピアノ要素の強い今回の4人編成も宮川さんが出られるものと思っていたところ、そうだ小田さんも筋金入りのピアニストであったことをすっかり忘れていた。
自分の見ていた位置とは反対側で、グランドピアノに隠れその指の動きなどは見えなかったが、しゃんとした姿勢にやわらかな表情で奏でる小田さんのピアノは、これまでKIRINJIで見てきた小田さんとはまた違う表情を見ているようで少しドキっとした。コーラスも美しい。

ステージ上に4人となってから、『薄明』『きもだめし』『fugitive』と繰り広げられていく。いずれも少し妖しげな雰囲気をまとう曲たちで、随所にアレンジも加えながら遊び心も満載。まさに4人編成の醍醐味。
そんなところで高樹さんが口を開く。「今日という日に新曲を持ってきたかったけれど、残念ながら」というMCの後に披露されたのは、TOKYO FMでその日限りでオンエアされた即興曲「猫の声」であった。そういえばそんなのもあったな!と、聴衆を楽しませることを忘れない高樹さんのささやかな優しさを感じた。

次の曲のイントロが始まると、どうやらあまりピンと来ないメロディー。
あ、これは新曲無いといいつつ、実はあったオチか?高樹さん、そりゃズルいぜ〜と思っていたところに歌い出し

「交わしたはずのな〜い〜」




Drifterだ。




2013年4月、兄弟時代に終止符を打ったNHKホールでのライブ以降一度も演奏されていなかった珠玉の名曲が、ついに、この25周年という日についに!!!
イントロからではなく、歌い出しで気づいた方も多かったようで、歌い始めるやいなやあちこちからワッと歓声が湧き起こる。私もこの日初めて聴くこととなった。しかも、高樹さんの歌で。

書き遅れたが、兄弟時代以降のKIRINJIではキリンジ時代の曲は高樹さんの作った楽曲しか演奏されない。たとえば『エイリアンズ』は泰行さん作のためKIRINJIでの演奏は無い。
そんな中、高樹さん作のバラード名曲といえばこの『Drifter』が真っ先に浮かぶのだがなかなかライブでは披露されず。一方でとあるインタビューでは「もうバラードはやらないかもしれない」という本人の言葉があったり、KIRINJIのインスタライブでDrifterをリクエストされた際高樹さんは「やらないよ」と言い最初の一節を少し弾いて終わり、という一幕もあり、ご自身のラジオの中でも「やりたい気持ちはあるが、少し恥ずかしい」といったような言葉もあったり、ともしかしたら本当に演奏されることはないんじゃないか、私も少しそう思っていた。

正直何がなんだか分からないまま、Drifterは終わってしまった。ただ節々で「高樹さんが歌っている。とてもとても力強く歌い上げている...」と、その立ち姿にうっとりしてしまうとともに、KIRINJIをここまで引っ張ってきたことの事の壮大さをひしひしと感じていた。あらためて今日はとんでもない日だ、と思ってやまなかった。

4人編成ラストは、先の絵本『あの人が歌うのをきいたことがない』全曲を演奏。実はこの絵本曲を聴いたのは今回が初めてではない。初めて聴いたのは2022年、石川・金沢で開催されたslow liveだった。

対バンがこれまた大好きな安藤裕子さんだったという

この時はピアノの林さんとの2人編成というこれまた珍しい編成で、終始林さんの表情豊かなピアノにひたすらに感動したのだが、そのステージのアンコールで披露され虜になった。余談だが、この金沢の時のMCで高樹さんが「物販の絵本に私と林さんとでサインをしました。あと楠さんと千ヶ崎さんを見つけてコンプリートしてはどうでしょうか」といったようなことを言っており、終演後絵本が飛ぶように売れた(因果関係は不明だが笑)という一幕があった。私も購入列に並んだが無念、、、と思っていたところ今回の物販に絵本が!先行販売から並び買うことができた。この日の嬉しかった事のうちの一つである。


CD付きを購入!

とて4人編成の絵本曲は今日が初。ドラムの伊吹さんはこの曲たちにふさわしい、軽くてカラッとしたサウンドを素敵に奏でていた。ブラシの音がとても良い。上下ビシッとスーツを整えていたのも素敵だった。こういった出立ちの工夫も今のKIRINJIの好きなところのひとつである。

絵本曲の演奏途中、客席から子供の声が聞こえてきた。泣きじゃくる声というよりは、私には絵本を読んでもらって喜ぶような、楽しげな声に聞こえた。それが聞こえたか、少し微笑みながらピアノを演奏する小田さん。思わぬゲストの活躍もあり、今日の絵本曲たちは今日しかない特別な表情をみせていた。

かくして弾き語り、4人編成の幕は終了。高樹さんの「休憩です!」の声とともに、美しい曲たちを浴びてうっとりとした表情のお客さんたちが四方八方へと散っていくのであった。


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