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【私の好きな曲#7】Captain Beefheart & The Magic Band / Tropical Hot Dog Night

ひとことまとめ

とにもかくにも、まずは上記のYouTubeをクリックして、この間の抜けたリゾート感のある演奏と、それに不釣り合いなインパクトありすぎるダミ声ヴォーカルを聴いていただきたい。

なんというか、おぞましい。(けど、楽しい)
なんでこうなった。

しかし、この不気味なインパクトこそがこの曲の最大の持ち味であり、何回も聴けば聴くほどにまた繰り返し聴きたくなる、中毒性の高い曲だ。

解説

キャプテン・ビーフハート(1941~2010)は、アメリカのブルース・ミュージシャン。高校時代にフランク・ザッパと出会い、レコードを聴きあったり、映画製作をするなど親交を深めた。

1967年にCaptain Beefheart & The Magic Bandを結成し、「Safe As Milk」でデビュー。1968年に2ndアルバムを発表するが、当時のプロデュースに失望したことをきっかけに、フランク・ザッパが設立したストレイト・レコードに移籍した。ザッパは彼に「完全なる芸術的自由の中で」制作を行うことを提案した。

次に生まれたのがビーフハートの代表作となる3rdアルバム「Trout Mask Replica」であり、この制作エピソードがかなりぶっ飛んでいるので、ご紹介したい。

彼はロサンゼルス郊外の小さな一軒家を借り、バンドメンバーを8ヶ月監禁し、共同生活をしながらアルバム作成に取り組んだ。彼は全く弾いたことのないピアノに座り、無秩序に鍵盤を叩きまくり、メロディーを発見するまでそれを続けた。バンドメンバーのジョン・フレンチはそれをすべて楽譜に書き込み、その演奏をビーフハートに聴かせ、インスピレーションが降りてくるまでそれをひたすら繰り返した。

こうした作業が一日12時間、8ヶ月に渡って行われた。また、途中で金銭や食料の危機が訪れ、フレンチによるとカップいっぱいの大豆だけでひと月を過ごしたこともあったという。更に、あまりの貧困に耐えられず、メンバーが食品を万引きして逮捕され、ザッパが保釈保証人となったこともあったという。

クリエイティブとは何なのかを問わずにはいられない、ほとんど拷問のような状況である。

とにもかくにも、そのようにして完成したのが「Trout Mask Replica」であるが、はっきり言ってふつうの人には理解不能な音楽となっている。自分も何回か聴いたが、未だに理解の範疇を超えている。いつか理解できる時が来るのだろうか?

前置きが長くなってしまった。そのように常軌を逸したところがあるビーフハートだが、その中でもダンサブルで比較的聞きやすいのがこの曲Tropical Hot Dog(1978年発表のアルバム「Shiny Beast」に収録)である。

陽気なトロンボーンに弾むドラム、そして南国を思わせる軽やかなマリンバのリズム。そこに加わる奇天烈なビーフハートのダミ声ヴォーカル。全く相容れないようでいて、聴いているうちに次第に「お?こういうのもありかも」と思えてくる不思議な曲。

Tropical Hot Dog Night
Like two flamingos in a fruit fight
Every colour of day whirlin’ around at night
I’m playin’ this music
So the young girls will come out
To meet the monster tonight

トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト
フルーツを争う二羽のフラミンゴのように
一日のすべての色彩が夜に渦巻いている
俺はこの音楽を演奏している
だから若い娘もやってくるんだ
今夜モンスターに会いに来るんだ

Tropical Hot Dog Night

彼の歌を聞いていると、若い娘もモンスターも一緒にダンス・パーティーで踊っているような楽しげな光景が目に浮かぶようだ。

しかし、自分だったら、そんなパーティーには怖くて参加できないだろうな。

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