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【私の好きな曲#10】Yo La Tengo / Today is the Day

ひとことまとめ

アメリカのインディーロック・バンド、Yo La Tengoが2003年4月8日に発表したアルバム「Summer Sun」に収録。

このアルバムは全体的に晩夏の夕暮れどきを思わせるようなメロウな雰囲気に包まれた曲が並んでおり、今回紹介する曲Today is the Dayもイントロのギターのトーンが、まるで海辺に落ちていく夕日のようだ。

女性ドラマーのジョージアのヴォーカルも朴訥としていて、夏の終りのセンチメンタルな情緒を呼び起こしてくれる。

解説

Yo La Tengoは1984年にニュージャージー州ホーボーケンで結成された。アイラ(Gt./Vo.)、ジョージア(Dr./Vo.)、ジェームズ(Ba./Vo.)の3人組で、ジェームズはあとから加入したが、バンドのキャリアとしてはそろそろ40年となり、インディーロック・バンドとしてはとても息の長いバンドだ。

Yo La Tengoという不思議なバンド名の起源は、1962年ニューヨーク・メッツの中堅手リッチー・アシュバーンとレフトのフランク・トーマスが外野で衝突した次のエピソードからきている。

アシュバーンは、スペイン語しか話せなかったベネズエラ人の遊撃手チャコンとの意思疎通をとるため、"I got it!"(俺が取る!)というのを、"Yo la tengo!"(俺が取る!)と声がけすることをチームミーティングで話していた。

ところが、トーマスはミーティングに参加していなかったため、トーマスがフライを取るときにアシュバーンが叫んだ"Yo La Tengo!"(俺が取る!)という掛け声を理解できないまま、彼と衝突してしまった。

トーマスは起きあがると"What the hell is a Yellow Tango ? "(黄色いタンゴってなんなんだよ!)と怒鳴ったという。

大の野球好きのアイラはこのエピソードがお気に入りで、Yo La Tengoと名付けたと言われている。

さて、バンドの歴史はとても長いので全てを紹介することは出来ないが、彼らの黄金期と言えるのはやはりマタドール・レコード時代だと思う。

Painfull(1993)、Electr-O-Pula(1995)、I Can Hear the Heart Beating as One(1997)、And Then Nothing Turned Itself Inside-Out (2000)と、静と動が混在した独特の音楽スタイルが確立されたのがこのあたりの作品群である。

そしてSummer Sun(2003)が発表されるわけだが、このアルバムはこれまでの作品に比べると比較的インストゥルメンタルが多く、ゆったりした静かな曲がほとんどで、激しいギターソロの曲がまったく入っていない。

このあとに発表される I Am Not Afraid of You and I Will Beat Your Ass (2006)では激しい曲も数曲クレジットされているので、そういう意味ではSummer Sunは例外的に静かなアルバムと言える。

そして今回紹介する曲Today is the Dayも静かな曲調で、これがインディーロック・バンドの曲とはわからないほどである。

I was going to spend the night, could have been okay
We were going to talk all night till I went away

Remember how you used to say, can't stay up late
A minute later and we're older now, I can't stay awake
I'm driving by your parent's farm, in the Chevrolet
I remember that rusty car, like it was yesterday

私は一晩過ごすつもりだった
帰るまで一晩中話すつもりだった

夜更かしはダメって言ってたよね
毎分、私達は歳を取っていく、目を覚ますことなんて出来ない
シボレーであなたの両親の農場を通り過ぎた
あの錆びた車を昨日のことのように思い出す

Today is the Day

なんといってもアイラの奏でるギターの音色が水面に反射する夕日のように透明でキラキラしている。そしてリズムを支えるジェームズのベースとアイラのドラム。3ピースバンドとしてのバランスの良さを最大限味わうことができる曲だ。

おまけで別ヴァージョンもご紹介しておこう。
こちらは2004年のTV Show出演時のもの(元がVHSの映像というところも味わい深い)。激烈ギターが炸裂するヴァージョンになっていて、アイラがギターをかき鳴らしながらのたうち回るのを横目に、ジョージアがドラム叩きながらマイペースに歌ってて微笑ましい。


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