【私の好きな曲#4】Donny Hathaway / You've Got a Friend
ひとことまとめ
アメリカのシンガー・ソングライター、ダニー・ハサウェイが1972年に発表したライブアルバム「Live」に収録。You've Got a Friendはアルバム前半(LPではside1)の最後を飾る曲として収録されており、1971年8月トルバドール(ハリウッド)で収録されたものとなっている。
言わずと知れたキャロル・キングの名曲をカバーしたものであり、数あるポップ・ミュージックのカバーの中でもこれを超えるものはそうそうないのでは?と思えるほど完璧な歌唱と演奏。観客も一緒に歌うだけでなく、思わず感極まって絶叫しちゃってる人もいるほどで、当時の熱狂がそのまま録音されている。
何度聴いてもうっとりしてしまう曲だ。
解説
ダニー・ハサウェイは1945年生まれ。幼い頃から聖歌隊で歌い、大学ではクラシックを専攻。卒業後、カーティス・メイフィールドの下での下積み時代を経て、1969年にソロ・デビュー。黒人社会の闇をテーマとして曲に採り入れるなど、先進的なソウル・ミュージックを開拓し、マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドらとともに「ニュー・ソウル」と呼ばれた。
1972年に発表された本作含め、数々のヒット作を送り出すも、1973年に妄想型統合失調症を患い、音楽活動は停滞。
1977年にロバータ・フラックのアルバムにゲスト参加して表舞台に復帰し、その後もいくつかのレコーディングに参加するなど意欲的な活動が見られたが、1979年、突然ニューヨークのエセックス・ハウス・ホテルから転落し亡くなった(死因は明らかではないが、自殺と言われている)。
享年33歳で、あまりにも短すぎる音楽活動期間であり、人生だった。
曲の解説に戻り、サビの歌詞を見てみよう。
これはダニーというよりは原曲を作ったキャロル・キングの作詞能力のすごさだけど、歌詞を口ずさむだけで、そのまま音楽になってしまう。
"Winter, spring, summer or fall, All you have to do is call"というくだりがとくに心地よいリズムで、親しみやすさを感じさせる。歌詞を読んでいるだけで、やっぱり友達って大事だよね、という気になってくる。
やはりこの曲の一番の聞きどころは、ダニーとオーディエンスの掛け合いではないだろうか。まるで出汁の効いたあつあつのはんぺんで熱燗をいただいたときのように、体中がポカポカして、心も世界に向かって開放されるような気持ちになる。
この瞬間、たしかに彼は絶頂期だったのだろう。彼の生の歌声を聞くことはもう出来ないが、我々は録音を通していつでも当時のライブハウス、その瞬間に降り立つことが出来る。冬も春も夏も秋でも。
それはとても素晴らしいことだ。