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【私の好きな曲#3】Big Thief / Little Things

ひとことまとめ

NYブルックリン出身のインディー・ロックバンド、Big Thiefが2021年にリリースしたシングル曲。翌年の2022年に5作目のアルバム「Dragon New Warm Mountain I Believe in You」にも収められた。

言葉で語ることがとても難しい曲だけど、第一印象として、情報量がとにかく多くて何がなんだかよくわからないけど、聴いているうちにだんだん心地よくなって、最後には一緒に踊りだしたくなるような曲(こう書くとなんだかバカみたい)。

祝祭的で刹那的な幾重にも重なったギターの音が右へ左へ入れ替わりながら、そしてときには一定のリズムから脱落しつつもまた復帰し、ハンドクラップやボイスのサンプリングが散乱し、「こっち側とあっち側」の世界を行き来しつつ、気づいたらすごい高みに昇っているような気分を味わせてくれる曲だ。

解説

Big Thiefは2015年に結成されたバンドで、メンバー4人は全員バークリー音楽大学に通っていたというから、なかなかのエリート集団である。

ボーカルのAdrianne Lenkerはボストンに住んでいるときにBuck Meek(ギター)と出会い、2枚のEPを発表。その後2015年にNYへ引越し、その当日に雑貨屋で偶然にも彼と再開。その日のうちにBig Thiefを結成した。

その後2人は結婚するが、2018年に離婚。それでも"deep friends"として共ににバンドに残った。

さて、この"Little Things"は、彼らがこれまで得意としていたフォーク・ミュージックの文体から考えると、それとはかなり逸脱した(というか全く別の方向を向いた)異様な曲調になっている。例えるなら、BeatlesがRevolverのラストで披露した"Tomorrow Never Knows"のように、一度聴いただけではよく理解できない、でもなぜかまた聴きたくなる、不思議な中毒性を持ったポップな曲としか言いようのない曲である。

One step behind you
Following you down
I was inside of you
Where are you now
Where are you?

あなたの一歩後ろ
あなたを追いかけて堕ちていく
私はあなたの中にいる
あなたはどこにいるの?
あなたはどこにいるの?

歌詞に呼応するように、四方八方から飛んでくる個々の音を追いかけているうちに大きな音像の波に飲み込まれ、リズムを見つけ、また見失い、ハンドクラップが現れたかと思えば、ボーカルの息遣いによってかき消され、あきらめて音のうねりに身を任せると、次第に恍惚といってもいい感情で満たされていく。

こういう音楽をなんと呼べばよいのだろう。何か、日常を離れ、この世のものではないものを相手にしているような感覚。ふだん出会わないものと出会うための音楽。

こういうのをお祭りと呼ぶのかも知れない。


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