【臨床疑問】心筋梗塞後の発熱

COVID-19罹患後に発熱、胸痛、ECGでST上昇を認め、高熱が持続するためMIS-Aかもしれないと一瞬よぎったのですが結果的にSTEMI後の発熱だったと考えられた一例でした。

<ポイント>
・心筋梗塞の虚血範囲が大きいほど発熱しやすく、逆に発熱している場合は虚血の進行やPCIでの心筋救済が少ない可能性がある
・COVID-19発症前後では心筋梗塞、脳梗塞を発症しやすい

○STEMI後の発熱について
参考文献:JAHA2017(PMID:28438740)

Introduction
・発熱はAMI患者でよく見られる
・発症後早ければ4~8時間で見られ、1℃以上上昇することがよくある
・通常は4-5日程度で解熱する

STEMIで入院した276人に対してprimary PCI施行後の中央値3.4日後に心臓MRI(CMR)で評価を行った。

発熱は45例で認めた。(pPCI後4日以内の≧37.7℃の発熱で定義)
非発熱は231例

Characteristics
・発熱群は38℃(37.8-38.5℃)、非発熱群は37.0℃(36.8-37.3℃)
・onset to balloon どちらも160分くらい
・door to balloon どちらも66分くらい
・Killip≧3 発熱 28.9% vs 非発熱 4.3%  p<0.01
・LVEF 発熱47.2% vs 非発熱 55.0%  p<0.01
・WBC 発熱 13400 vs 非発熱 11500  p<0.01
・CRP 発熱 9.5 vs 非発熱 0.8  p<0.01
・Peak CK-MB 発熱 285.3 vs 非発熱 172.0  p=0.01

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Outcome
心筋梗塞のサイズ 発熱 25.6% vs 非発熱 17.2%  p<0.01
リスク領域のサイズ 発熱 43.7% vd 非発熱 35.3%  p<0.01
微小血管閉塞のサイズ 発熱 4.4% vs 非発熱 1.2%  p=0.02

心筋救済指数(MIS:myocardial salvage index)発熱 37.7 vs 47.0  p=0.13

多変量解析では、STEMI後発熱はより大きな梗塞(OR 3.48)と低い心筋救済指数(MSI)(OR 2.1)に関連していた。

Conclusion
・primary PCIを受けたSTEMI患者の1/6に梗塞後発熱を認めた。
・CMRでの評価では、発熱は心筋浮腫の程度が強く、心筋の救済が少なく、心筋梗塞の範囲が大きいことと関連していた。

<おまけ①:COVID-19後の心筋梗塞について>
参考文献:Lancet 2021(PMID: 34332652)、Card Electrophysiol Clin(PMID: 35221083)

・大規模コホート研究でCOVID-19の発症前後で心筋梗塞、脳梗塞のリスクが上昇することが示唆されている(2-3倍以上)
・機序としては、COVID-19のspike proteinが細胞のACE2 receptorに結合することでRAA系が亢進して様々な悪影響を与えるということが考えられている
・他にも呼吸不全によるType Ⅱ心筋梗塞の機序も考えられている

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<おまけ②:MIS-Aについて>
参考文献:Vaccine 2021(PMID: 34066007)

・MIS-Aは、COVID-19罹患後の全身性炎症反応により、心臓などの重要臓器の障害を伴う症候群として最近報告されている
・以下はMIS-Aをどの程度疑うかというガイドラインの一部
・症状の特徴としては、皮膚粘膜症状(結膜炎含む)、消化器症状、ショック/低血圧、神経症状(脳症など)
・検査所見としては心臓負荷所見(BNP、TnTの上昇)、炎症反応上昇、血小板減少、リンパ球減少などあまり特異的なものはない

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<コメント>
・MI後の発熱でよいかどうかというのは経過次第になるので慎重なフォローアップが必要になります
・COVID-19罹患後の発熱は一つのテーマですね

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