【RCT】造影CT前に禁食は不要?

造影CT前にルーティンで禁食を必須としている病院がほとんどではないのでしょうか。禁食が本当に必要なのかを検証したRCTがあったので紹介します。
文献:PMID: 32901302

<ポイント>
・緊急でない造影CTに対して禁食を行わなくても誤嚥性肺炎は増加せず、消化器症状(悪心、嘔吐)もほとんど増加しない

P:緊急でない造影CTを受ける18歳以上の患者 2190人
I:少なくとも4時間の絶飲食 1095人
C:撮影時まで液体・固形物の制限ない摂取 1095人
O:Primary 96時間以内の誤嚥性肺炎の発生率
  Secondary 30分以内に発生した消化器症状(悪心・嘔吐)
T:RCT

Introduction
・造影CT前の禁食は数十年前から一般的に行われてきた
・禁食にする理由は①造影剤の催吐作用による胃内容物の誤嚥を防ぐため、②経口造影剤の通過を妨げるため、③食物が消化管病変と混同されるのを防ぐため
・現在使用されている造影剤は催吐作用が少ないことが示されている

除外基準
・CT中に鎮静を必要とする場合
・腸管造影などのために禁食を指示された場合
・基礎疾患が消化器症状により影響を受ける場合

Result
・2757人が適格と判断され、567人が除外された
・年齢は平均55歳
・経口造影剤使用が半分以上(63.9% vs 55.9%)
・腹部骨盤の撮影が多い(70.2% vs 62.4%)
・誤嚥性肺炎のリスクとなる神経疾患(脳卒中、Parkinson病など)、食道疾患はほとんどいない
・絶食群の平均絶食時間は8.4±1.6時間

スクリーンショット_-_1月16日_午後2_26

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Primary outcome
・誤嚥性肺炎の発生はいずれの群も0
Secondary outcome
・消化器症状は悪心がやや多いのみ
(悪心:6.6% vs 7.6% p=0.37 嘔吐:2.6% vs 3.0% p=0.58)

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・経口造影剤を使用したサブグループでもほぼ同様の結果

スクリーンショット_-_1月16日_午後2_27

・禁食をしなかった群で検査1時間以内に飲み食いした群、1-4時間以内に飲み食いした群で、さらに液体のみ、液体と固形物を摂取した群のサブグループで比較

・特に大きな違いはなし

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<解釈、批判的吟味>
・primary outcomeが発生していないのでリスクは比較できない(そもそも現在使用されている造影剤では誤嚥性肺炎を危惧する必要もないのかもしれない)
・誤嚥を起こしそうにない比較的元気な人が対象なので、高齢の嚥下機能が低下している患者にも安全とは言えない
・通常ほとんど使用しない経口造影剤を併用している患者が半数以上いる

<コメント>
・本文にもあったが、入院中の予定造影CTでは必要以上に禁食の時間が長くなることが多いため、低血糖や患者の不満につながることもあり、それらを無くせるのは大きい
・禁食のオーダー忘れのせいで検査が飛んでしまうこともあるので、医療者側の手間が省ける
・一方で病院のルールで禁食が決まっていることが多いので、主治医の裁量で実施しにくい


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