図解で人材業界がよく分かるノート

こんにちは。

今回は、人材業界に就職しようと考えている方、もしくは就職したばかりで業界のことがいまいち分かっていない・・・そんな方におすすめの業界入門ノートを作成しました。

人材業界にはどんな役割があってどんなサービスがあるのか、また歴史はどうなっているのか?今話題のHRテクノロジーとは?

そんな業界の全体像を携帯・PCからスキマ時間に読むことができます。
こっそり勉強して、仕事に役立ててみてはいかがでしょうか?

■内容

・そもそも人材ビジネスとは?
ビジネスの全体像と、各分野における主なサービス提供会社の紹介

・人材業界地図
主要企業のサービス
主要企業の売上高

・人材業界の100年史
元リクナビ編集長・黒田氏によるコラム

・サービスから見る、HRテクノロジー領域における日本と海外の違い
HRテクノロジーの歴史をサービス軸に俯瞰

■対象読者

・人材業界への就職や転職を希望している方

・人材業界へ就職したばかりの方

・人材業界をわかりやすく説明したい方

ワンコインで買える業界俯瞰図(コラム付き)と考えていただければと思います。文章量としては6,000字ほどのボリュームになります。
また、グラフィックは保存して、研修資料等にもご利用いただけます。


■そもそも人材ビジネスとは?

人材ビジネスはざっくり大別すると、人材採用・人材活用・再就職支援となります。
みなさんも聞いたことが多い「求人広告」や「人材紹介」、「人材派遣」は上記の「人材採用」の部分を担っており、企業に必要な人材を確保するための支援を行っております。この部分がおおまかに「人材業界」と呼べる部分でもあります。

さて、人が採用できた企業は次に、企業内でその人材を育成・活用していかなくてはなりません。そんな時に必要になるのが、適正な給与を計算したり勤怠を管理する「人材活用」領域のサービスです。
この「人材活用」の部分は近年、ITベンチャーの参入が増えており、テクノロジー化が進んでいます。「HRテクノロジー」としてトレンド化しているため、最も盛り上がっている部分とも言えます。

その後、企業内での活躍を果たした人材が何らかの状況で退職することになった場合、「再就職支援」といってその名の通り人材の再就職を支援するサービスがあります。ここではメンタルケアからキャリア構築のための実践的なノウハウを提供します。

上記のように人材ビジネスは役割の領域が異なりますが、これらを複合的に行っている企業が存在したり、あるいはそれぞれの企業が提携し協力関係にあることも多くあります。

つまり、多岐にわたる人材ビジネスですが、その実態は全て繋がっているということです。さて、そんな流れを図でまとめましたので、ご覧ください。

■人材業界地図(サービス別)

採用領域は上記の図にもあるとおり、大別すると「人材紹介」「人材派遣」「求人メディア」に分けられます。もちろん、ひとつの企業が複数の役割を果たしている場合もあります。
では、そんな各領域の企業と運営サービスを見ていきましょう。

■人材業界地図(売上高別)

次に企業ごとの売上高と利益を見ていきましょう。

いかがでしょうか。
サービスや売上高がまとまった資料が欲しい、という時にもお役立ていただければ幸いです。

次は元リクナビ編集長の黒田氏に中途採用市場の歴史について語っていただきました。

■人材業界ざっくり100年史【中途採用市場編】

========================

下記は、ルーセントドアーズ株式会社代表取締役の黒田真行氏により寄稿いただきました。

黒田氏は1988年リクルート入社以降、約30年、転職支援サービスに関わっています。 リクナビNEXT編集長、リクルートエージェント企画責任者、リクルートドクターズキャリア取締役を歴任した後、 2014年9月ルーセントドアーズ株式会社を設立。

2014年12月、35歳以上向けの転職支援サービス「CareerRelease40」をスタートし、人工知能を活用してミドルの転職可能性の最大化に取り組んでいます。

========================

Indeed、LinkedIn、Wantedlyなどの新興勢力群、リクナビNEXTやen、マイナビなどの既存転職サイト群、リクルートエージェントやインテリジェンスをはじめとした人材紹介群、さらに激しく市場参入を狙うHRテクノロジーや転職系クチコミサービスなど、メディアとプラットフォームの分散化の止まらない人材業界は、今後どこへ向かうのか?

その未来を予測するための材料として、今回は市場のメインストリームの変遷を軸に、人材業界の100年史を整理しておきたいと思います。

※ここでは「中途採用の正社員採用市場」に限定し、新卒や派遣領域やアルバイト・パート領域、組織人事コンサルティングや採用業務代行業界などはスコープ外としています。また、時流の読み方には、かなり個人的見解や経験バイアスが混入しております。あしからずご了承ください。

【ペーパーメディアが君臨した100年】

1880年代に新聞広告の一分野として生まれた求人広告は、ほんの15年前まで100年以上にわたって、ペーパーメディア主体で成長を続けてきました。

新聞広告の多くは「営業社員募集、委細面談」という感じの3行広告で、途中、1950年代にテレビ・ラジオの登場はあったものの、自動車や住宅、食品などの商品販促広告との広告費用格差が大きかったため、電波メディアの影響は受けず、むしろ1970年代に登場した就職専門情報誌(「就職情報」発行:リクルート)の登場で、新聞広告から徐々に求人専門情報誌に市場が移行する歴史をたどってきました。

求人情報誌は有料の市販誌形態をとっていたため、募集要項の詳細など、比較検討できる情報の充実化が一気に進み、一方で広告件数の増加に伴いコピーライターやデザインの斬新さで広告反響数を競う表現技術も進化します。

求人広告クリエイターが東京コピーライターズクラブの受賞の常連だった時代もあったくらいです。

1980年以降、バブル景気の影響もあり、情報誌はアルバイト専門や女性専門、技術者専門、技能・サービス職専門などに細分化し、さらに日本各地の地域限定の情報誌、折り込みチラシも次々に登場し、1990年代後半にペーパーメディア全盛期を迎えていきます。

求職者への情報流通が、書店や駅売店、コンビニエンスストアに限定されていて、求職者が数百円で情報誌を買うという時代はもはや歴史の風景ですね。

ただ、各メディアが利用者獲得を競い合って、電車の中吊り広告や新聞広告、予算がある時期にはテレビCMを打って激しく販促を行う状況は、今も引き継がれています。最近、転職サイト各社のテレビCMが激増しているのはご存じの通りです。

その流れを一気に変える地殻変動は、2000年前後に集中して起こりました。

【地殻変動その①】インターネットメディアの勃興

それまで、ニューメディア、マルチメディアと呼ばれていたITを活用した次世代社会が、1995年に一気にインターネットという言葉に席巻されました。

まだ、ヤフー(創業1996年)、グーグル(創業1998年)も生まれていません。

日本の中途採用市場では、リクルートが当時の情報誌「B-ing」のインターネット版としてスタートした「Digital B-ing」(現・リクナビNEXT)が生まれたのが1998年。

2003年ごろには情報誌の反響数をインターネットが追い抜くスピード感でした。ちなみに、この2000年初頭の一大変化として、求職者の登録情報のデータベースが構築され始め、ペーパーメディアでは見えなかった求職者情報の可視化による機能の変化も登場します。

リクナビCareer(現リクナビNEXT)では企業の人事担当者が、自社の求める求職者のレジュメに直接スカウトを送信できる機能利用が一気に加速しました。企業の代行で媒体側が1to1で口説くサービスと両立していましたが、企業がダイレクトにスカウトを送信する機能は情報精度が粗い(おとり的情報で応募を集める、など)ものも多く、求職者利益の保護のためにいったん2004年に停止し、リクルートではその後スカウト代行サービスが主流となりました。

業界内では、2010年ごろから企業が直接スカウト送信できるサービスが再び増え始め、現時点では第2の過渡期に入りつつあります。ただ、過去10年の人事機能の変化やアウトソーシングの隆盛、SNSの台頭なども相まって、求職者データベースを活用したダイレクトメール型のスカウトサービスは、2000年ごろとはまったく異なる様相を呈し始めています。

インターネットによる構造変化のさらなる詳細は、ここでは長くなりすぎるのでまた別の機会に。

ただ、こと日本国内のサービスに限定すると、2010年代初頭までのインターネット前期15年においては、「ペーパーメディアの置き換え」にとどまっていたと言ってもいいかもしれません。ビッグデータの活用やAIによって、インターネットの活用可能性が広がるのは、まさにこれからの10年だと考えています。

【地殻変動その②】有料職業紹介事業の規制緩和

もうひとつ、日本の中途採用市場において見逃せない21世紀以降の変化は、1999年の有料職業紹介事業の規制緩和です。

いわゆる人材紹介サービスは、源流をたぐると江戸時代から存在していたと言われますが、当時の対象業界や職種を見ると手工業の職工などが中心で、ホワイトカラーやエンジニアを中心とする現在の人材紹介の源流というよりは、現在の技術者派遣、業務請負業界に引き継がれている流れだと思われます。

現在の中途採用市場に人材紹介事業が大きくインパクトを与えるのは、1999年の職業安定法の改正に伴う、民間の有料職業紹介事業の原則自由化です。

人材紹介の取扱職種が、科学技術者と経営管理者に限定されていたものが、事実上解禁され、職業安定法の中で大きな役割を期待されることになったため、2000年以降現在まで(途中リーマンショックで一時的沈下はあるものの)、まさに階段を駆け上がる勢いで一大産業に成長していきました。

さらに高額の前受金で行っていた課金形態も、成功報酬型に変化したことも加速の一因でした。

その結果、人材紹介業界は、参入する事業者と従事するコンサルタント数も激増し、求人広告情報誌が席巻していた中途採用市場の中で、あっという間に逆転するくらいの「売上シェア」を占めるまでに育っていきました。

まさに「国策に負けなし」の15年間です。しかし現時点では、ここにもIoTの流れが加速度的にサービスを変容させ、また実際に入社決定に至る「人数」も激増していく見込みです。一方で人材紹介におけるプレイヤーの激増とIT活用は、「理論年収の●%」という従来維持してきた単価下落の引き金にもなろうとしています。

注目の今後の流れは?

今後についてはっきり言えることは、もう日本国内の職業安定政策だけでは、市場をコントロールすることが難しくなるということだと思います。法の変化より急速に、サービス自体がグローバル化し、国境を越えたプラットフォームがすでに市場を変容させつつあるということです。

ながらく採用側起点にやや偏って成長してきた業界ですが、求職者起点のサービスの進化と市場の合理化・適正化が進化していく流れは変わらないと考えています。

========================

さて最後に、最近話題になっている「HRテクノロジー」について
日本と海外についてお伝えしていきたいと思います。

========================


■サービスから見る、HRテクノロジー領域における日本と海外の違い

2015年の終わりごろから「HRテクノロジー」という言葉をしばしば聞くようになりましたがこの「HRテクノロジー」、日本のHR領域では新しい分野として注目されています。

その流れもあり昨年の「TechCrunch Tokyo 2015」のスタートアップバトルにおいて、クラウド労務管理サービス「SmartHR」で優勝したスタートアップ、KUFUをご存知の方も多いと思います。この報道はHR領域のみならず、Tech領域からも一目置かれるニュースとなりました。

しかし、日本のHRテクノロジー市場はまだ発展途上とも言えます。参入企業は増えてきたものの、従来のアナログ的な人材管理から抜け出せない人事担当は多く、新たにシステムを取り入れるという考えが起こりづらい環境であるためです。

対して、アメリカをはじめとした海外ではこのHRテクノロジーを活用し、データやテクノロジーでHR領域を分析する流れが急加速しています。

そこで今回は、そんなHRテクノロジーの状況を海外と日本に分けてお伝えしていきたいと思います。

HRテクノロジーが先行するアメリカ市場

アメリカをはじめとした海外では多くのスタートアップがこのHRテクノロジー市場に進出しており、投資額も増加し続けています。2015年の投資額においては24億ドル、379件の取引が行われました。2016年に入ってもその数は衰えていません。

出展:CB INSIGHTS

下図は、2016年に入ってからの投資案件を海外と日本を分けてまとめたものです。円の大きさは各投資額を表しています。

この図を見てもわかるように日本の投資案件の少なさが目立ちます。また日本ではビズリーチが3月に大型資金調達した以外には、海外とくらべて少額案件だったことも明らかです。

次に「HRテクノロジー」の検索数をGoogleキーワードプランナーで国別で調べてみました。アメリカの検索ボリュームを見るとHRテクノロジー先進国だと言えることがわかります。

HRサービスざっくり20年史

日本の人事は海外に比べ5年は遅れている、という声を聞いたりもしますが、この差はいつ頃から開いていったのでしょうか。

各サービスの誕生を海外と日本に分けてまとめてみました。(同様のサービスを同色で繋いであります。)

まずは求人サイトの動向から追っていきたいと思います。

インターネットが普及するまでは紙媒体が主要な求人媒体でしたが、インターネットが普及し始めた90年代半ば頃から求人サイトが誕生しました。そのうちのひとつ、世界最大級の求人サイト「Monster.com」の前身、「Monster Board」は1994年にオープンしました。

これは日本の「リクナビ」の前身である「Recruit Book on the net」がオープンするわずか2年前でした。

人事管理領域では、1996年にワークスアプリケーションズが設立し、人事管理システムの「COMPANY」がリリースされます。海外でメジャーな人事管理システムでいうと「Workday」があげられますが、こちらのサービスオープンは2005年と日本に後れをとっていたことが分かります。

このあたりまで日本は海外と比べてさほどHRテクノロジー後進国だという印象はありません。

しかし、その後海外ではクラウドソーシングサービスの「Elance」やソーシャルリクルーティングサービスの「Jobvite」、「LinkedIn」が誕生し、もともとは友人同士のコミュニケーションツールである「Facebook」が採用目的として活用されるなど、急速にインターネットを活用した採用時代が台頭します。

日本ではこれらの領域はランサーズやクラウドワークス、Wantedlyなどが2008~2011年頃から徐々にサービスインしました。

さらに複数の求人サイトからあらゆる情報を集約し、1つのWebページにまとめる「アグリゲーション型求人サイト」のIndeedは2005年にオープンしましたが、日本で同様のサービスと言うと2015年にオープンした「スタンバイ」があげられます。AIやデータ領域ではTalentBaseが、EnteloやMonsterに買収されたTalentBinに近いサービスとなっています。

これらのことから機能やコンセプトなどの前提条件は異なりますが、HRテクノロジー領域で日本は若干立ち遅れていることがわかります。

なぜ日本はHRテクノロジー後進国?

欧米はそもそもの国の成り立ちとして様々な国から移民が入ってきている中で、人の活用や組織運営に対して非常に研究する文化があります。対して日本は同一性が非常に強く、現在でも「終身雇用/年功序列」をベースとした人事の仕組みが多く見られます。

その結果、人事はオペレーション的な仕事とみなされることが多く、人事がITツールを使いこなして積極的にイノベーティブな施策を計画するということは期待されない文化や土壌がありました。 もちろん、データを用いて科学をするという考え方も無いため、ITツールを活用することに慣れておらず「HRテクノロジー」の概念が浸透しづらい傾向もありました。そのため、徐々に海外との差が開いていったことが考えられます。

■さいごに

最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、初級編として業界の構造を俯瞰してまとめてみました。

これからも確実に続いていく人材難を前に、企業が取り巻く採用・人材管理環境への課題は増えることでしょう。
そのなかで人材ビジネスが与える価値も変化し続けていくことが予想されます。

今回のノートが現状や課題、方向性を正しく理解し、業界の今後に役立てるヒントになれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?