人材派遣業界がわかるノート

こんにちは。

今回は、人材業界に就職しようと考えている方、もしくは就職したばかりで業界のことがいまいち分かっていない・・・そんな方におすすめの業界入門ノートを作成しました。
人材業界にはどんな役割があってどんなサービスがあるのか、また歴史はどうなっているのか?今話題のHRテクノロジーとは?

そんな業界の全体像を携帯・PCからスキマ時間に読むことができます。
こっそり勉強して、仕事に役立ててみてはいかがでしょうか?

■内容
・人材派遣業6社の決算から見る、業界の動向
・派遣企業別、掲載媒体から見える求人戦略は?

■対象読者
・人材派遣業界で働いており、競合の動向を知りたい方。
また、グラフィックは保存して、研修資料等にもご利用いただけます。




■人材派遣業6社の決算から見る、業界の動向

まずは、人材派遣を営んでいる企業を個社ごとに決算分析を行っていき、その動向を探っていきたいと思います。今回は下記で説明しますが、メジャー系と特化系に分けて分析していきます。

■メジャー系と特化系で分析の着眼点は変わる

大ざっぱな分け方ではありますが、人材派遣業は、比較的簡単な事務作業をはじめ、いろいろな企業側のニーズをとらえて幅広く人材を紹介する「メジャー系」の派遣業と、ある程度分野やスキルを絞り込んで、特定の業種・職種に関する人材派遣のみを扱う「特化系」の派遣業とに分けることができます。

メジャー系の人材派遣業は規模が大きいため、彼らの業績が市場規模に影響を与えます。なおかつ、メジャー系各社はそれぞれが競合関係にあります。そのため、メジャー系各社を分析することによって、人材派遣業全体の市場規模の推移や、メジャー系各社の力関係の変化が見て取れます。

いっぽう、特化系の人材派遣業は規模が大きくないため、1社の業績が市場全体に与える影響はそれほど大きくありません。しかも、それぞれが異なるフィールドに特化しているため、競合関係にないという特徴があります。特化系の決算を分析することによって見えてくるのは、むしろ人材の派遣先である事業会社の動向ではないかと思います。

■メジャー系は各社ともに増収。キーワードは「海外」。

以前何度か用いた「バブルチャート」の分析手法を用いて、メジャー3社(リクルート・パソナ・テンプ)の直近の通期決算を比較してみます。

「バブルチャート」では、1つのグラフ平面に3つの要素を並べています。

縦軸…各事業の営業利益率=どれくらい効率よく儲けたか
横軸…各事業の成長率=どれくらい売上を伸ばしたか
円の大きさ…売上高=どれくらい売り上げたか
3社を比較すると、このようになります(なお、比較を対等にするため、各社ともに人材派遣関係のセグメントだけを切り出して分析しています)。

どの会社も10%以上の成長率を示しており、売り上げが順調に増加していることが分かります。リクルート、テンプの成長率が際立って高いのは、いずれも海外への進出の成果です。海外の人材派遣会社を買収するなどして、メジャー各社はその勢力をどんどん広げようとしています。

一方で、利益率が少し薄いのが気になります。特にパソナは1%弱の利益率となっていて、人材派遣業そのものが薄利の競争環境に置かれていることがよくわかります。

日本国内における人材派遣業は、社会的に「同一労働・同一賃金」などの考え方から少しずつ正社員化へのバイアスがかかってきている中で、少しでもリスクを和らげるために海外に販路を求めている・・・という動きも見て取れます。

海外への広がり以外にも、他のサービス(メディアや福利厚生など)を積極的に展開するということも、メジャー系各社が取り組んでいるもう一つの施策です。

■特化系は利益率が高いのが特徴

次に、特化系の各社も分析してみましょう。メジャー系と同様、人材派遣に関連するセグメントを分析の対象としています。

※1 ファクトリー・テクノ・R&D・セールス&マーケティングの4セグメントを合計。 ※2 建築技術者派遣・エンジニア派遣の2セグメントを合計。

特化系の各社はそれぞれ異なるフィールドで人材派遣を行っています。

メイテック…主に技術者を派遣
ワールドホールディングス…主に製造スタッフを派遣
夢真ホールディングス…主に建設業界に人材を派遣

3社いずれもしっかりプラス成長を遂げており、しかも、利益率がメジャー系よりも高いことが分かります。これは、冒頭にて説明したとおり、分野やスキルを絞り込んで、特定の業種・職種に適した人材を紹介できるという点で、メジャー系よりも付加価値性が高いためです。

技術系や製造・研究開発といった分野は、日本の大手製造業がリストラなどを繰り返した結果、優秀な方々がたくさん働く機会を待っています。人材を紹介してもらう企業側も、経験値の高い人に来てもらえれば、単に手伝ってもらうというだけでなく、会社全体の生産性の向上などにも寄与することがあります。

また、夢真ホールディングスが特化している建築業界は、いま、五輪に向けたインフラ整備などが急ピッチで進んでいるため、ちょっとしたバブル状態にあります。少なくとも五輪の直前までは、人材ニーズが非常に高まった時期が続くことが予想されるため、夢真の事業はしばらくは安泰といえます・・・が、そういった業界には大手などがすぐに参入してくる可能性があるため、いかに先行者として強みを維持していくか?という点が重要になってくるでしょう。

もう一つ観点を上げるとしたら「M&A」です。特化系の人材派遣業には大手にはない強みを持っているわけですが、大手から見れば、そのような会社を買収してグループに入れることで、(もちろんお金はかかりますが)容易くその強みを自社グループに引き込むことができます。

そしてそれは、特化系の企業にとっても経営基盤を安定させるというメリットがあります。2015年には、営業系人材に特化したP&Pホールディングスが、パソナグループに買収されました。

今後もメジャー系と特化系、それぞれの動きをこれからも丁寧に追いかけてみたいと思います。

■派遣企業別、掲載媒体から見える求人戦略は?

さて、次に主な派遣企業の自社サイトに掲載のある求人件数と、一般求人媒体への求人出稿件数との比較を派遣企業別にまとめてみました。

各社ごとの求人戦略の傾向が見える部分もあり、なかな興味深いデータとなりました。

■各社の最新求人掲載件数

■各社の出稿媒体の内訳

自社サイト、一般求人媒体ともに、件数トップはスタッフサービスとなりました。

スタッフサービスの自社サイトでは、「オー人事net」や「働くナビ」など、企業グループ内の求人案件を統合的に検索できる仕組みが用意されており、派遣の求人数では日本最大級の掲載件数となっています。

一方で一般媒体への出稿件数も多く、自社サイト、一般求人媒体ともに、Webでの求人に非常に力を入れていることがよくわかります。

一般媒体よりも自社サイトの求人件数が上回った企業としては、フルキャスト、セントメディア、テンプスタッフ、リクルートスタッフィング、フルキャスト、パソナとなりました。

逆に、自社サイトより求人サイトに積極的に出稿している企業としては、綜合キャリアオプション、日研トータルソーシング、ランスタッド、日総工産、アウトソーシングとなりました。

日研トータルソーシングは自社サイト、一般求人媒体の両面に力を入れている印象です。

こうして自社サイトと一般媒体の件数を比較してみると各社ごとの傾向がはっきりと分かれており、Webでの求人戦略の方向性が見えてきます。

今後も派遣企業の動向を、様々な角度から調査、分析していきたいと思います。

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