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冥途の土産に 「 I Dear... 」さん

今日の#ホニャララLIVE 192 にご出演の I Dear... さん。
突然書きたい欲が湧いてきて、慌ててポチポチしている次第。


MOTOKOさんの講座のナカーマから、幾度となく、青山の美容室の話は聞いていた。その時は『アオヤマ』なんて単語だけで、もう私には関係ないって全然聞いちゃいなかったけど。

でも。
そこで髪を染めたという彼女は、とても素敵だった。
田舎では見たこともないようなカラー。すごく似合ってる。
ま、私がアオヤマの美容室に行くなんて、一生無いわ。  
と確信していたのに、たった半年後。
一生縁が無いはずの、かの美容室「I Dear…」さんに、私はいた。

節操がないと笑わば笑え。
でもね、私もいろいろあって。 変わろうと思ってたし。
でね、いっそ外見から強制的にって思い至った。
アオヤマだって広いんだし、一人くらい田舎のオバサンが混じってたって、駆逐されたりはしないはず。 そう自分に言い聞かせての清水ダイブ。


「今日はどのように?」の問いに「何とかしてください」なんて、もうどうしようもない返答。その上「くせっ毛と、後頭部で髪がぱっくり割れるのも何とかなったりします?」という追加発注。
身の程知らずでスイマセン。オバサンなんで許してくだされ。と、どこまでもヒクツでメンドクサイすねちゃまが大発動。

さて。
私は自分がカットされているところを見るのが好きだ。丸太から削り出される彫刻を見ているみたいで楽しい。
いつも行っていた地元のお店より、オガクズ切り落とされた髪がやけに細かいような気がして、思わず「凄く細かく切るんですね」と言ってしまった。
「すべての髪にハサミが当たるようにってしてます。」と担当してくださった森田佳宏さんは仰った。

この言葉にじんわりとたしなめられる。
仕事とはいえ、全くのお他人様がこんなにも真摯に私の髪と向き合ってくださっているのに、私は自分の髪に、自分自身に、こんなに丁寧に向き合ったことがあるだろうか。自己卑下が当たり前で、いつもいつも自分で自分を罵っている。
もはや木彫りの熊の気持ちになってる場合ではない。
だらしないところを見咎められたみたいに、私は鏡の前でいたたまれなくなっていた。


カットして、シャンプーして、ドライヤー。
変な話だが、自分で乾かす時には何とも思わないのに、誰かに髪を乾かしてもらう時はいつも、何故か大型犬になった気がする。 
自分で出来ることなのに誰かの手を煩わす、面倒を見てもらう、っていうのが、犬みたいって思ってるのかなあ、、?
ところが今回!
私は一度も犬にならなかった。
もちろん森田さんはプロだから、相手が犬でも (いやもう違う仕事)誰でも変わらずに、丁寧に心を込めてドライヤーをかけてくださるだろう。
もちろん、そんなのはこちら側の在り方次第だとわかっている。
でも、嬉しかった。
青山ここに来てもいいんだよ、と言われたような気にすらなった。


「せっかくきれいにブローしていただいたのに、もう前髪、こんなにくせがでちゃって~(泣)」
私の前髪はものすごく主張が強い。ストパーをかけてもアイコンのイラストのようにきゅっと立ち上がるくらいだ。
「それがいいんですよ」
ほかのお客様を担当されていた川田愛恵さんが、さらっと仰った。
突如、あれだけ嫌だった前髪が大好きになった。 くせっ毛サイコー。
川田さん、惚れてまうやろ。

©逸美さん


次はカラーもお願いします、とお伝えして店を出る。

オートロックって帰りも開けてもらうんだねー。 知らなかったー。
慣れないもんだから、私、ドアが開けられませんでしたのよ、ヲホホ。 
ま、この程度のやらかしじゃあ、もう大したダメージも喰らわなくなりましたけどね。

帰り道、私は背筋を伸ばして表参道を歩いた。


帰宅後、家族全員から大絶賛を受ける。 照れる。
そして、ちょっと前の自分が言っていたのと同じ「まさか東京の繁華街で頭切ってくるなんてねー!」という母の言葉に、虚を突かれた。

そもそも何故『アオヤマの美容室に行くなんて、一生無いわ』とか
『身の程知らずでスイマセン。オバサンなんで許してくだされ』とか
『犬みたい』とか『青山ここに来てもいい』なんて『ヒクツでメンドクサイ』ことを思うようになったんだろう。
『自分で出来ることなのに誰かの手を煩わす、面倒を見てもらう、っていうのが、犬みたいって思って』たってのも上っ面の理由でしかない。

そうだ。
私は、そんな濃やかな愛情やさり気ない敬意、手厚いサービスなどを受けるに値するような立派な人間ではない。
青山での素敵なカットの価値をきちんと理解できるような、感性やセンスを持つ人間でもない。


何の疑念もなく、そう確信していた。
そしてそれは誰が言ってんの?


私だ。


サロンで感じた『いたたまれなさ』を払拭するために、私は母に言った。
「冥途の土産に青山の床屋へ行こう!」
「え?! は⁈ いい、いい、なーに言ってんの」
「行ったことないじゃん、行こうよ」
「行かないよー、こんなお婆さんが行ったら笑われるよ」
「婆さんが行くからかっこいいんじゃーん」
「頭切るだけに? 特急乗って? 一日かけて? お江戸まで?」
「そう」
「え⤴? 交通費だけでいつも行ってるとこへ4回も行けるわ」
「いつものとこへはいつでも行けるじゃ。冒険しようよ」
「、、え⤴、、」
「美味しいもん食べてこようよ」
「、、う~ん、、変じゃない、、?」
「変じゃない! いつどうなるかわかんないんだから、行っとこう!」
「、、う~~ん、、、行っちゃうかー‼」


そんなわけで、4月下旬の予約をお願いした。
母、87歳。太陽水瓶 月牡羊 
『冥途の土産』を免罪符に、まだまだ新しいことを楽しめるはず。

I Dear… さん
私と母のきっかけになってくださってありがとうございます。
4月にお会いできることを楽しみにしております。




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