言葉と行動こそが困難を生き抜く組織を作る

■著書
WHO YOU ARE
著者:ベン・ホロウィッツ

■企業文化とは

会社の文化は、リーダーはもちろんそこに所属する人たちの「何もなのか」「どんな人になりたいのか」に沿わなければ、文化は出来上がりません。

文化への認識が、”誰も見ていないところでリーダーの思うように動く”ような環境を作るといったものでは、機能しなくなりますし、文化とは言えません。

まずは、社員のありのままを直視し、「何者なのか」「どんな人になりたいのか」を会社とマッチさせなければ、会社の望むような文化は出来上がりません。

リーダーの行動によって、つまりリーダーが手本になることで文化は作られます。理想の文化を作る第一歩は、トップが何を欲しいのかを知ることです。なので、自分らしくなければ、自分でさえその文化についていくことができません。

また、リーダーの大原則としてみんなに好かれないことを著者は挙げていました。それは、人は皆違うため全ての人を受け入れようとせず、自分の望む文化に沿った人を採用することが大事であるという意味かと思います。

最近では、社員がなぜ毎日仕事に来るのか考える企業が少ないです。なぜ毎日仕事に来るのか、その理由を会社の求めるものと一致させることで、今後やってくる”Hard Things”のような戦時に必要な資質である、忠誠心とコミットメントを社員が持つ文化を築くことになります。

■「なぜ?」と思うことに対して、どう答えるかで文化が決まる

広告やストーリーでもそうですが、意外なものや不思議に思えるものは印象に残ります。だからこそ、企業文化も一見して普通ではないものこそ記憶に残ります。

本書では例として、奴隷出身で独立を指揮したルベンチュールが「既婚の兵士に妾を持つことを禁じた」というエピソードが出てきます。当時は強姦や略奪が当然視されていた時代なので、このルールは意外なものという扱いになります。

その理由は「妻との約束を守れないなら、軍隊の中での約束も守れないから」というものでした。妾を禁じることで約束を守る文化を鮮明に記憶させることができます。

新人が新しく組織に入ったときに文化を学ぶのは、「どうしてだ?」と思った瞬間だそうです。今あるルールを説明する際なども含め、「なぜ?」と思ったときに、背景から説明することで文化を受け入れてもらうように心がけていきたいと思いました。

■企業文化は固定的はでない

フェイスブックの初期のルールは「素早く動き、破壊せよ」というものでした。プロダクトを高速で成長させたいフェーズではこのような文化がフィットしていたのでしょう。

しかしフェイスブックが様々な外部システムと連携を始めると、フェイスブックはインフラとなります。「破壊」しては困るプロダクトとなってしまいました。そこで2014年にザッカーバーグは「インフラを安定させたまま、素早く動け」という新しいモットーを作成したそうです。

フェイスブックのような壮大なスケールの会社ではなくても、日々のビジネスでもフェーズによって優先順位が変わることはあると思います。新規のプロダクトやプロジェクトが始まる際は、PDCAを早く回すためにとにかく手を動かすことを優先します。

そして、ある程度落ち着いてきたら、リソースの効率を改善するなど別の優先項目が出てきます。一度作ったルールを守ることを目的化せず、目的のためにルールがあり、目的を変えればルールも変えていくということを意識していくことが大切です。

■侍にとって文化はどんな意味を持っていたか

武士道は一見、一連の哲学のように見えますが、むしろ実践の積み重ねです。侍にとって、文化は行動規範でした。つまり、価値観ではなく徳(善い行い)の体系が文化だったのです。価値観は単なる信条ですが、徳とは人間が努力し体現する行動です。いわゆる「企業理念」に意味がないのは、それが行動ではなく信条しか表していないからだそうです。文化を築くにあたって、自分が何を信じるかはどうでもいい。自分が何をするかに意味があります。

武士の知恵をまとめた最も有名な武士道の著である『葉隠』では、こう書かれています。「一日の初めに死について考える。これは具体的な行動です。死を意識することにも明確な目的があります。

明日死ぬかもしれないという気持ちを持つことで、親に対しての孝行や、限りある時間を美しく生きるという気持ちになる。人生がなんとなく続くものと思っていると気持ちも緩みます。しかし、常に死を意識することで高みを目指して行動できるということです。

同様に、ホロウィッツは、「会社が破産する姿を思い浮かべれば、目指すべき文化を構築しやすくなる」と言います。社員や取引先にとって良い会社を作れたかを意識するようになるからだそうです。

■部下に「上が決めたから」と言ってはいけない

上司は部下に話すときに、「自分の気持ちとは違うが上には逆らえなかった」と説明してはいけません。仮に自分が反対していたアイデアだったとしても、組織として決めたからには、組織として何故そうすべきなのか自分の声として語らないといけないのです。

もし「自分はそう思わないが上が決めた」と言うと、部下は上司は無力と考える。そして無力な上司より下にいる自分たちは更に無力と感じてしまいます。

■組織に必要な文化規範

1.信頼

本当のことを言うのは、とても難しいです。人は本音を言いたがりません。相手の聞きたいことを言うほうが簡単なのです。そうすればみんな気分よく過ごせるからです。少なくとも一時的には、、、。本当のことを言うには勇気がいります。そして、勇気と同じくらい大切ですがあまり語られていないのは、判断力とスキルも必要だということです。

すべて正直にそのまま伝えるのではなく、よくないことが起こったとき、その現実に新しい意味を持たせる。そのためのカギは下記と書かれています。
1.事実をはっきりと述べる
2.自分の失敗がレイオフにつながる状況を招いてしまったら、それを認める。
3.今回の行動がより大きなミッションになぜ必要なのか、そのミッションがどれほど大切なのかを説明する。

2.忠誠

忠誠心はほとんどの企業文化に欠かせないものですが、定着させるのはとても難しいです。動きの激しい現代の事業環境で、一生の間に平均11回から12回は転職するなか、企業は社員にどれだけ忠実になれるのか?また社員はどれだけ企業に忠実になるべきなのか?お互いにどんな見返りがあるのか?

忠誠心は、相手が自分に忠誠心を持っている、つまり同僚や会社が自分の味方になってくれると思うからこそ生まれるものです。

文化は、自分が何に一番価値を見出すかを知ることから始まります。その価値観を反映する行動を組織の全員が実践できるように、リーダーは努力をし続けなければなりません。行動規範があやふやだったり、煩雑で邪魔にしかならないものなら、それを変えなければなりません。文化に重要な要素が欠けていれば、それを付け加えなければなりません。

そしてなにより社員の行動に細心の注意を払い、自分の行動には一層注意しなければなりません。自分の行動は企業文化にどう影響しているのか?自分は自分のなりたい人間になっているのか?
それを常に問い続けることが、素晴らし文化をつくるということであり、リーダーになるということでもあります。

■まとめ

面接で御社はどんな社風ですか?と聞かれることや、入社したあとに社風に合わないから退職したい。と言われることがあります。
リスプラの社風はいったんなんだろうと考えることがありましたが、これと言って明確に答えられるものがありませんでした。

しかし、本書を読みリーダーの行動によって、つまりリーダーが手本になることで文化は作られる。ということを知りました。

会社のトップは社長ですが、今後どんな組織をつくっていくのか、どんな社風にしていくのかは、自分たちがリーダーになりつくっていくことができるはずです。

どんな組織にしたいのか?を考え、そしてその行動をまず自分から率先して行うことで臨んでいる文化をつくっていくことができると思うので、今後は自分がしている行動や発言は、自分のつくりたい組織文化に適してものなのかを考え行動・発言をしていきます。