泡銭
就活を終えました。報告です。
二束三文にしかならない凡庸な才能をそれでも愛するという曲。僕からしたらどうしようもない天才が遺す言葉。才能に恵まれて、どれだけ美しい、凄まじい物を生み出す人でも、愛される才能、或いは、評価される才能が足りなければきっと埋もれて掠れてしまう。僕はゴッホじゃやなんだ!と叫んだ孤高の天才も、言うまでもなくゴッホ自身も、愛され方を知らずに、それでも愛して生きた。「君は誰かに下で使われるタイプじゃないよ。上に立つべき。起業でもしたらいい、きっと成功する」。僕の能力への最大の賛辞であり、僕の才能への最大の警告。僕もそう思います。良い方向にも悪い方向にも。
ささやかな夢がある。自分の家を持ちたい。城を築く、なんて言い方をすることもあるけど、僕が作りたいのはきっと城ではない。広いクローゼットと大きな本棚、柔らかいベッドを用意して、それ以外は古道具屋で買えるような古くて安い家具を並べる。彼らを修理しながら壊れるまで使ったら、また同じような境遇の同居人を探しに街に出る。建物はもう使われていないアトリエのようなところがいい。凡そ人が住むために作られていないそこに生活の根を張りたい。アスファルトの割れ目から芽を出す雑草のような生き方。愛すべき服を着て、気に入った絵画や好きな音楽にお金をかけて、慎ましやかな、でもちゃんと美味しい料理を振る舞いながら、踊るように生きて死ぬ。何者にも傷つけられない世界が欲しい。そしてその屋根を僕の墓標にしたい。
1つ前の記事がやたらといいねを貰うのはなにゆえでしょう。あまり読まれると困ってしまう。僕のことなんてついさっき知ったばかりのような人に、貴方はこういう人なのね、なんて思われるのがどうしても嫌で、つい裏切りたくなってしまう。どうにも居心地が悪くなってきた。
次の出勤で、2年超に渡って続けたアルバイト先を退職する。直近のシフトで最後の顔合わせだったパートさんの何人かはとても残念がってくれて、惜しまれる程度の仕事は出来ていたのだなと少し安心した。即金ウン万で受け取る泡銭のような賞賛はいつもどこか耳障りで、日勤5時間の端金を積み重ねた預金残高の先の慰労は、妙なくすぐったさを憶えるような耳触りだった。
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