中国で海外index連動型ETFが人気
本日のニュースで、「中国人投資家の海外株への投資意欲が極めて旺盛だ。」というニュースがあり、中国の投資家の心理や中国の金融システムについて興味深かったのでまとめていきます。
中国投資家の資産を海外株に移している背景
Bloombergによれば、中国のトレーダーは、外国株へのエクスポージャーを得るため、一部の上場投資信託(ETF)では原資産の価値よりも40%も高い金額を支払うことをいとわないでいて、多くのETFで取引停止や購入制限が行われているそう。
以下のチャートは、CSI 300 indexという、上海証券取引所と深圳証券取引所に上場している中国企業のA株の上位300銘柄のパフォーマンスを再現するように設計された、中証指数(中: 中证指数有限公司)が発表している時価総額加重型(浮動株基準)の株価指数の出来高と基準価格です。巨額の負債を抱えている中国の不動産大手、中国恒大集団(エバーグランデ)が29日、香港の裁判所から清算(清算は、企業の資産を差し押さえて売却する手続き。得られた金は未払い債務の返済に充てられる。)を命じられるなど、中国国内の経済が低迷していることを受けて、2022年4月からのモーメンタムを見ると明らかに下降している。
そこで、中国国内の投資家は、中国株に対して見限って、米国、日本等好調なアセットクラス(米S&P500種株価指数が史上最高値を更新し、日本の株価指数もバブル以降の最高値を更新した。)に資産を移動したいという思惑があります。ファンド・オブ・ファンズを運用する北京イクン・アセット・マネジメントののポートフォリオマネジャー、リ・ミンホン氏は、「資本は利益を追い求める。本土株がこれほど低迷している今」、投資家が他市場へのエクスポージャーを求めるのは「自然」だと指摘。「個人投資家ばかりではなく、機関投資家もこうしたETFに投資している」と述べた。「EファンドMSCI・USA50ETF・QDII」のプレミアムは先週、トレーダーが殺到し過去最大の40%超に急拡大。日経平均に連動する類似商品のプレミアムは20%を突破したという。
ここで正直に思った感想としては、海外indexに連動するETFが実際のindexよりも高く評価されてしまう可能性があるということ。そこで、いかにChatGPTに聞いてみた。
index連動を目指すETFが必ずしも連動しているとは限らない
簡潔にいうと、
ETFへの需要が高くなって供給が追いつかないと、ファンドの基準価格がターゲットとするindexの基準値を超えてしまうことがあるということ。
マーケットメーカー(流動性を提供し金融市場がスムーズに機能することを目的に、特定の資産を大量に売買する市場参加者のこと。個人のデイトレーダーやHigh Frequency Tradingの他に、証券会社のマーケッツ部やCitadel Securityのようなマーケットメーカーを生業としているような金融業社がそれらにあたる。)の不在によって、買い手の希望する価格に見合う売り手がいない。
ことがあるようです。
中国金融の外資規制
金融業界やメディア業界などで外資規制が設けられていることは、中国に限らず世界的に珍しいことではないです。日本でもフジテレビが外資規制の20%を違反していることが話題になりました。
中国の金融当局によって、国内と国外の機関投資家には以下のような認証が存在します。
QFII Custodian Banksは以下のようなリストになっているらしいですね。親会社が中国資本ではないところは、HSBC Bank、Citibank、Standard Chartered Bank、Deutsche Bank、DBS Bank、Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJがあるそう。
Custodian Bank以外でQFIIを国別で見ると以下のようになるようです。これで見ると、Hong Kongが一位なのは納得感が高いですが、やはり経済大国のアメリカからも多くの金融機関が登録されていることが分かりそうです。地理的な近さと経済規模からすると、日本の20は若干少ないような。
国内商業銀行による海外資産運用は、銀行業監督管理委員会から「適格国内機関投資家」(通称 QDII:Qualified Domestic Institutional Investors)に認定された国内金融機関に対して、国外への投資が許可される仕組みがあり、金融庁のHPで分かりやすい図を見つけました。
まとめ
中国国外に経済的な旨みを求める個人投資家が多いという背景から、一方で資本規制のため、本土の個人投資家が海外株式を購入しようとしても手段が少なく、適格国内機関投資家(QDII)プログラムのETFと関連投資信託は、個人トレーダーにとって最も人気のある投資経路の一つとなっているようです。
資産は、リスクが少なくて期待リターンの高いアセットクラスに割り当てられるから、資本は自由を求める傾向にあるということ。政府のシステムや制度が価格の非効率性を産んでしまう可能性があるから、自分の資本が想定の基準価格で買われているのか、それともマーケットメイカーの不在等の理由で、高値掴みしている可能性はないのか、というのはちゃんと仕組みを調べた上で資本がどう動いているのか見る必要があるのではと思った。Ken Griffin(Citadelのfounder兼CEO)も人材を探すときに、物事の細部に対して注意を向けられるのかという点を挙げていたことに納得感があります。それと、金銭的なリターンを得るのに政府がどれだけの銀行や機関投資家に対して認証を与えるかについても、いかに外交が重要かという点を思い知らされました。中国と良好な関係性を持っている金融機関はそれだけ中国国内で利益を得られるでしょうが、関係性が難しくなればそれも長くは続かないという感じですね。
参考文献
Bloomberg 2024/01/30 外国株に熱狂-本土株回避の中国人投資家、ETF取引ゆがめる
金融庁 中国・銀行業監督管理委員会とのQDII(適格国内機関投資家)制度に係る監督協力の枠組みの構築について
BBC 2024/1/29中国不動産大手の恒大に清算命令 香港の裁判所
など
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