江戸の糞尿学　永井義男2016年作品社№398

■平安京は糞尿まみれだった。
それ以前も糞尿は川へ垂れ流しだが、人口密度が増えたのが平安京。もちろん糞尿の量も比例して増える。身分の高い人は室内で箱に用を足し、召使が側溝へ捨てる。庶民は側溝に直接する他にも道端で排便することも多かった。

■鎌倉・戦国時代～江戸時代初期
以前より糞尿の肥料効果を知っていた農民が、都市の膨大な糞尿に目をつけ、金銭を払って買い取る仕組みが出来てきた。糞尿がやっかいな廃棄物から価値のある商品になった。垂れ流しをやめ、便壺を設置するようになる。

■頻発していた便所や肥運びでの事故
肥桶を天秤棒で担いだり、馬に積んだりして運んでいたので、事故で中身をぶちまけることも少なからず。江戸は道が狭いうえに、場所によっては人でごった返していました。また肥溜めに落ちることも。男女の逢瀬の場として、便所が使われることも。

■女性の立小便
京都では便所のそばに女用の小便桶がある。立ったまま股を開き、上体を前傾させ、尻を突き出した姿勢で放尿する。（本書で図3－16参照してね）
紙でふき取る習慣は遊女しかなく、一般的には自然乾燥。当時の下着は湯文字（腰巻）。肌に密着しないので合理的だった。

■下肥利用の弊害
下肥が寄生虫、特に回虫を蔓延させた原因になっていた。それにより腹痛、下痢、貧血、腸閉塞など引き起こす。一方、近年は花粉症や各種アレルギーが急増している。寄生虫を体内に宿さなくなり、抗体が減ったからだという説がある。

■東京湾に投機されていた糞尿
昭和初期から、都民の糞尿を海洋投棄するようになった。下肥利用が減ったために。1997年3月に正式に終了。東京湾の魚は都民の糞便によって育てられていた。
※下水処理事業の知人に聞いたら、糞便の海洋投棄がなくなって海の栄養が減り、魚が捕れなくなってきたそうです。他にも河川がコンクリート養生になることで山のミネラルが川へ流れない等の要因もあり。

【感想・行動】
知らないことだらけの興味深い本でした。表紙が衝撃的なのですが、いったい何してるとこなの？と思った方は本書をお読みください(^▽^)/
動物として切っても切れない糞尿。現代の人は汚いものとして、観察する間もなく、さっと流れていってしまう糞尿。個人情報がたっぷり詰まっているものなのにね。
西洋の糞尿事情も載っていました。人口密度が上がるとどこの国も糞尿問題が起きてくるんだよね。
本書にたくさん掲載されていた春画が衝撃的でした！こんな露骨な絵がたくさんあったのね。

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江戸の糞尿学

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