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特攻回天「遺書」の謎を追う 大森貴弘2021年8月展転社


ネットで出回る「十八歳の回天特攻隊の遺書」

お母さん、私は後3時間で祖国のために散っていきます。
胸は日本晴れ。
本当ですよお母さん。少しも怖くない。
しかしね、時間があったので考えてみましたら、
少し寂しくなってきました。
それは、今日私が戦死した通知が届く。
お父さんは男だからわかっていただけると思います。
が、お母さん。お母さんは女だから、優しいから、
涙が出るのでありませんか。
弟や妹たちも兄ちゃんが死んだといって寂しく思うでしょうね。
お母さん。
こんなことを考えてみましたら、私も人の子。やはり寂しい。
しかしお母さん。
考えて見てください。今日私が特攻隊で行かなければ
どうなると思いますか。
戦争はこの日本本土まで迫って、この世の中で
一番好きだった母さんが死なれるから私が行くのですよ。
母さん。
今日私が特攻隊で行かなければ、年をとられたお父さんまで、
銃をとるようになりますよ。
だからね。お母さん。
今日私が戦死したからといってどうか涙だけは耐えてくださいね。
でもやっぱりだめだろうな。お母さんは優しい人だったから。
お母さん、私はどんな敵だって怖くはありません。
私が一番怖いのは、母さんの涙です。


これが偽造された遺書だった。誰が?何のために?
調べるとこれを書いたと言われる今西太一さんは実在する。だが、調べていくと当時、彼の母親は既に亡くなっていたとわかる。この遺書と大きく矛盾する。調べる程に偽造が明らかになり、では何故なのか?偽造した人がもうお亡くなりになられているので真意はわかりかねるが、お金や名誉の為ではないということは推測できる。
この遺書は感動するとネットでも拡散され、周南観光コンベンション協会ではお土産に印刷されて販売されていた。

■受け手側が試されている
情報が溢れている現代。読み手の気持ちが良くなったり、求めに合致したら、真実を検証することなく、あっという間に広まる。今回の件の課題として、近代史でも資料の鑑定が必要な時代。正確な出所や真贋の証明が必要となります。好き嫌いでなく、歴史の事実の前に謙虚であること。そして利用もされない。この意識が創作遺書のような過ちを繰り返さないことにつながる。

※回天:海軍の特攻隊。9か月間で148名出撃。106名死亡。回天作戦全体の戦死者は1299名

【感想・行動】
この遺書見たことがあります。以前、知覧特攻平和会館でたくさんの遺書に滂沱の涙を流したので、そっか回天でもたくさんの遺書が残されてるよねと疑問にも思わず。情報過多の時代。誰もが発信者。そうなると本当に重要なことは検証が必要ですね。

#大森貴弘 #回天#特攻隊#大東亜戦争#太平洋戦争#第二次世界大戦#戦争#遺書#偽造#ファクトチェック#産経新聞#読書記録


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