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3000円で上履きを売った危ない話

自分が子供を育てるようになって、
子供の性犯罪のニュースにとても敏感になった。
自分の子供が万が一性犯罪に遭って心に傷でも負ったらと考えると底なしに暗い気持ちになる。

私は自他ともに認めるブスなんだけど、ブスのタイプで言うとちびまる子ちゃんの野口さん系ブス。
見た感じ地味でおとなしい感じのブス。
こういうブスは痴漢や不審者に遭いやすい。
というわけで、ブスなのに変な奴に遭遇しやすいというまじで悪いとこ取りな人生を歩んできた。
例えばどんなやばいやつに遭ったっけ……とふと思い返していたら出てきた変な話があったので書いておく。

そいつは中一の夏、帰り道の通学路にひょっこり現れた。
20代くらいの若めの男で背が高くすらっとしていて、スカジャンをきれいに着こなし、髪の毛はきっちりとかしてポマードで固められててかてかしている。手にはルイヴィトンのクラッチバッグを持っていた。
一見すると普通の人で、駅を抜けてすぐの道で私に声をかけてきた。
「帰り道?上履きが仕事で必要で、譲ってもらえないかな?お金も払います。」

「えっ上履きは今持ってないです。」

「アドレス交換して今度都合が合うときにもらってもいいですか?1足3000円です。」

「私の上履き汚いんで。」

「汚ければ汚い方がいいんですよ。ちょっと企業秘密で詳しくは話せないんですけど、仕事で必要なだけなので。」

「本当に汚いんですけど……学期終わりで良ければ捨てる予定なのでいいですよ。」

「ありがとう。企業秘密なので周りの人にも話さないでね。」

という訳でメールアドレスを交換して(当時はLINEとかなかった。)男と別れた。
その後、メールで学期終わりの日を伝え、学期終わりの帰り道で渡す約束をした。

中1で純粋に世間知らずだったので、
120%捨てるしか選択肢のないきったない上履きが誰かの仕事の役に立つなんてよかったぁ。それにしても上履きを使った仕事かぁ、面白い仕事があるなぁ、ぐらいに考えていた。

で、受渡日当日、
男に指定されて、駅の近くの人気のない駐車場で受け渡しをした。
その時、男はヤクでも売買するかのようにさっと現れて、さっと上履きの入ったビニール袋を受け取り、中身も見ず、私の手にさっと何か紙のようなものを握らせてそのまま手を閉じるように促した。そして「ありがとう。また連絡するね。企業秘密なのでくれぐれも周りの人には秘密でね。」と言ってさっと消えた。

男が消えた後手を開くと、小さくたたまれた3000円が入っていた。
「え、まじで3000円くれた……。」と驚き、次の瞬間とても嬉しかった。
中1にとって3000円は大金だ。
当時1か月のお小遣いが500円だったので、6か月分に相当する。
きったない上履きが3000円になるなんて、まさに夢のような話だ。

その後、家に帰ると「仕事で助かる。また上履きを譲れる機会があれば譲ってほしい」というメールが来ていた。
それに「次の学期末ならまたあげても大丈夫だと思います。頂いたお金で新しい上履きを買いました。ありがとうございました。」と返した。

それに対して男からは「友達のでも不要なものがあったら買い取るので教えてね」という返事が来た。
やけに上履きが必要なんだな、とだけ思った。

その後、次の学期末が近くなってきた頃、男から「譲っていただけますか?」とメールが来て、また上履きを譲ることにした。
同じところで同じように上履きを渡す。
でも2回目はヤクの売買のようにさっと別れるのではなく、渡した後、男が「次は仕事のために撮影もお願いしてもいいかな?」と少し砕けた感じで話をしてきた。
「この上履きね、フルーツクラッシュって言って、こういう汚い上履きで果物を潰してジュースにするというのをやってて、ちょうどよくおいしい果物(なんか企業っぽく「かじつ」って言ってた。なんだろう。)のジュースになるんだけど、今度そのイメージ画像を撮りたくてね、それをお願いしてもいいかな?上履きで果物を潰している写真で、1時間くらいだと思うんだけども。」と丁寧にお願いされた。
「ああ、いいですよ。」と答え、男と別れた。

この時も「フルーツクラッシュかぁ、そんなジュースの作り方があるんだなぁ、へぇー」というくらいで、特に何も思っていなかった。
が、その後、男から上履きの催促のメールが増え、
「いやーそんなに上履き上履き言われても、そんなにすぐ汚くならないし、友達がどのタイミングで上履き要らないかなんて分からんし……」と思い、
メールを返すのも面倒に感じて
「○○○○の親です。○○○○は死にました。今まで仲良くしてくださり、ありがとうございました。」と送って死んだことにした。笑
中学生なのでまじでこれで自分が死んだことになったと思い、関係が切れたことを喜んだ。

その後、男から特に連絡がなかったので長らく忘れていたけれども、
高校に上がってふと思い出して
「いやぁ、あのヤクみたいな受け渡し方変だったなぁ。実はなんか気まずいことだったのかな」と思うようになり、
大学生になってふと思い出し「フルーツクラッシュってなんやねん。笑 絶対怪しいやつ……ロリコン変態性癖だなぁ」と一人で笑い、
子供を持って「あれ一歩間違えたら危なかったな。撮影とか行かなくてよかった」と危機感を持って思い出すようになった。
子供だったので変とも思わず、企業秘密だよなんて大人のワードも素直に受け取って親に話さなかったことを思うと、
自分の子もそういう、その時は気づかないし誰かに話もしないけど後から意味が分かるようになってめちゃめちゃ後味悪くなる経験をする日が来るのではないかと思ってひやひやする。
友達と話していると、他の友達にも大体そういう、当時はわからなかったけど今となって「やばい」と認識して心に引っかかり続けている性被害の経験が1つはある。
こういうの、自分の子供にはどうやって防ぐか、どう気づける体制を作るか、万が一起きてしまった場合、どう対応してどうケアするか、考えていかないといけないとまじで思う。

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