見出し画像

「わたし」の迷惑は、だれ? おれだ! 俺だ! いやオレだ!


この朝はいろんな【わたし】について考えた。もちろん布団の温もりに包まれながらだ。起床してしまえば寒いという五感にさらされるしおまけに今朝は大雪だった。きっと起きたくなかったのだ単純に。ま、それはともあれそのときは午前6時35分で、ココから約五分間の旅が始まったのだった。だからこれはこの小さな5分というひとときを頭のなかでせわしく駆け巡った複数のわたしの、冒険記、ということになるが。

始めよう……。おれ。羽鳥ホトトギス。毎朝決まって6時半ごろ起きる、どんなに遅く寝た日でも起きてしまう男。睡眠導入剤を飲んでまだ眠気が残っていて不思議ではないというのにまったく眠気なしでもある人。だというのに、眠れないぞ、眠れないぞ、とイソップの狼少年のように口走り結局いつの間にか寝ている、嘘つき。

俺。羽鳥豊。放課後クラブではたらく学童保育指導員。クソ爺。ハゲ。五厘刈のヘアスタイルからそう悪態をつかれる。それを許しつつ子供たちの言動がエスカレートする時には本気で雷を落とす、57歳のおっちゃん。この頃はいわゆるパワハラをしてくる古参の女性指導員とバトルを繰り広げる。

オレ。菅井豊。五十五年のあいだこの名前だった男。結婚を期に改名。どうしようもない男と認定されている。アル中。躁鬱病。公職選挙法違反者(懲役一年但し執行猶予三年)。そのような肩書きに色取られたまままるで啞のようにじっとうずくまっている。但しいつ騒ぎだすか見当つかない。

そして、あたし(あたくし)。主にFacebook上での呼ばれ名。おれでも俺でもオレでもない、わたし。ちなみにこの人物には私の中の子供というくらいの存在がくっついている。名前がないし普段は表に決して出てこない。ためにやたらと寂しがりでもありここがさまざまなおれ(俺・オレ)とは違う。

こんなわたしが、いくつも、いつも、居る。珍しいことではないと思う。でも……今のうちに言って置くが、いつか大往生をしようとするときは。

往生ぎわが悪いザマをたっぷり、晒してやろうと思う。もっともっと、いやもっとだ! と。今日の放課後クラブで会うだろうあの悪童たちに負けないくらい。


素っ裸になってやるつもりで居る。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?