年頭所感と、日本発のディズニーへ

アンパンマンで知られるやなせたかし先生について聞いたのは、3年前に高知県のイベントに参加した時だった。

高知県は当時の知事がかなりマンガ推しだったこともあり、「まんが王国・土佐」と標榜して色んな催しを行っていた。

当時から自分は、マンガやアニメが果たすべき未来について考えることが多かったが、ここで「あしたのジョー」のちばてつや先生と話した際に、自分たちのミッションについて決意を深めることになったのだ。

その日は市が主催する、著名な漫画家が多く参加する交流会があり、自分はたまたまちば先生の隣に座り、いくつか言葉を交わさせていただいた。

自分:日本のマンガやアニメって、凄くキャラクター同士の相互理解とか、協力や融和するような姿勢があって、とても良い文化ですよね。僕らはそれを広めていきたいんです

ちば先生:それは凄く良いと思う。ここ高知市出身の、やなせたかし先生が同じようなことを言っていた。日本のアニメが広がった国には、戦争が無くなるんだと。だから、日本のアニメを広げるべきなんだと。

時間にして僅か5分に満たないような機会だったとは思うが、「ドラゴンボールでも、絶対的な悪役のピッコロ・ベジータといったキャラを殺さずに生かしてしまうんです!ついには理解し合って仲間になってしまうんです!最近ではフリーザでさえ、続編でそんな雰囲気なんですよ〜」などと、熱をぶつけた際に返ってきた反応が上記である。

自分からするとちば先生も、既にお亡くなりになったやなせ先生も、まさにレジェンドのような存在であり、このような言葉を交わさせていただくだけでも気分が高揚したものだ。
レジェンドからレジェンドの話を聞き、我々が目指す方向性について賛同いただいたことで、これをライフワークの一つにしようと、決意を固められた瞬間であった。

さて、そんなことから、日本のアニメ・マンガを通して優しい世界を作る、というのが我々のミッションになったわけだが、まずは影響力を持たないことには始まらない。
だからこそ、規模は拡大する必要があるし、現代で最も世界にたくさんの物語を届けている、ウォルト・ディズニー・カンパニーをベンチマークしようと考えたわけだ。

ウォルト・ディズニー・カンパニーについて。
一般的にはどうしてもミッキーマウスなどのイメージが強く、アニメやテーマパークの会社と見られているが、実態は全く違う。
一昨年時点で、年商6.5兆円・営業利益1.6兆円という規模を誇っており、実はファイナンスとM&Aを組み合わせた高度なビジネスプロデュースカンパニーである。

近年でいうと、2009年にマーベルコミックスをおよそ3700億円で買収し、2012年に「アベンジャーズ」の初作を公開。
そこから僅か10年足らずで、同シリーズは世界的に発展し、昨年公開の「アベンジャーズ/エンドゲーム」に至っては、歴代史上一位の興行収入、約3000億円を叩き出したことは記憶に新しいだろう。

このように、コンテンツのビジネスプロデュースが世界で一番巧みなのがウォルト・ディズニーカンパニーであり、我々ダブルエルは少しでも、その背中に近づくべく努力している。

ダブルエルの連結年商は約30億円ほどであり、ディズニーに比べると「2000分の1」にも満たないのが現状だ。
しかし様々な工夫をして、創業の2014年から「5年で300倍」の規模になったのも実績としてあり(当初の分母が小さかったというからくりではあるが)、これからも日々レバレッジを効かせて、同社の規模に少しでも差し迫っていければと思う。

さて、そんな我々が位置する日本のコンテンツ業界ではあるが、ハッキリ言って危機的であるといえよう。

「日本アニメの海外展開の市場規模が、2018年に初めて1兆円を突破した」「合計の市場規模では2兆1814億円となり、前年比で190億円のプラスとなった」
詳しい方であれば、昨年末にこのようなニュースが流れたことはご存知と思う。概ねポジティブに捉えられていたが、ハッキリ言って逆だ。

「これだけ主力になり得る日本の産業が、なぜこの規模までしか成長していないのか」「前年比で僅か+1%しか伸びていないのはどういう事情か」「世界で80兆円市場に迫るコンテンツ産業で、どうしてこれだけのシェアしか取れていないのか」
本来であれば、そういったことに目を向けて、対策を考えていくべきだ。
なぜなら、マンガであれば韓国のウェブチューンや、CGアニメであれば中国発のブロックバスター的な作品がどんどん力を付けてきており、彼らの影響力の拡大スピードは日本の比にはならないからだ。
そして、日本のお家芸と思われていたアニメーション文化も、昨年にハリウッドで「スパイダーバース」が公開されたことで、全く専売特許ではないことが分かってしまった。

このままでは、負けてしまう。

実際に2兆円という規模は、学習塾・予備校といった周辺産業の市場から見ても僅か2倍程度しかなく、
日本の市場規模ランキングで見ると50位にも遥か及ばない。(例えばアパレル市場は5兆円を超える)
上述した中国やアジアの牽引もあり、世界のコンテンツ市場規模は約80兆円に迫って毎年4%ずつも伸び続けている。それにも関わらず、あまりにも寂しい結果ではなかろうか。

しかし現在ではまだまだ、日本のコンテンツは世界で大人気だ。
特に自分は家族の移住の関係から、マレーシアを中心とした東南アジアに行くことが多いが、
フィリピンでもベトナムでも、数多のアニメ・マンガ作品が見られ、グッズが売られている。
若者と話した際に、いわゆるオタク属性のローカルの人たちは非常に多いし、こうした傾向は中国やヨーロッパでも同様である。

ただし、正規品は少ない。近年にようやく、中国の権利意識の高まりから、海賊版の締め出しや、正規の配信サイトの導入が進んでいるが、
ローカルのショッピングモールを歩いてみても、若者と話してみても、非正規品の購入・閲覧ばかりで占められている状況である。
それも含めて、「世界中どこを見渡してもここまで人気なのに、どうしてこれだけ日本のコンテンツはお金になっていないのか」について、改めて熟慮する必要があるだろう。

さて、我々はこうした傾向について、「日本の産業はビジネスが下手」である一つ表れであると考えている。
職人の技術で物凄く高度なもの、高機能なものは生み出すが、海外企業がファブレス形式で枯れた技術を水平展開し、あっという間にiPhoneなどに市場を席巻されるといった例は枚挙に暇がない。
つまりは、いかにビジネスプロデュースをするか。更に言い換えると、「いかにお金に代えるか」だ。
この視点が、日本の様々な産業界で疎かにされてこなかっただろうか。

素晴らしい製品や作品を作れる職人、スタジオは素晴らしい。ここにビジネスの観点を持てと言っても酷だろう。むしろいちファンである我々すらも、素晴らしい物づくりに集中いただきたいと思っている。
であれば、我々が泥水をすすろう。泥臭く、お金に代える部分を請け負っていこうではないか。
我々の存在意義はここにある。

かくして数年をかけて、我々にしかない様々なマネタイズ手段を構築し、色々な権利ホルダーのビジネス化を支援できるようになったのが現在だ。
アートにしてお金に代える、全国のお土産屋でお金に代える、といった既存事業の方策の他、
今後も「ジャパンコンテンツのマネタイズプラットフォーム」としての機能を、加速していければと思っている。

この方向においては、独自のマネタイズ手段をどれだけ持てるかが鍵になる。これをとことん追求すれば、今はウォルト・ディズニーに遥かに及ばなくても、遠からず、「作品作りからお金に代えるところまで一気通貫できる随一の組織」に我々はなるだろう。

そのためにはビジネスプロデュースができる秀逸なビジネスマン達が必要だが、幾ばくかそのような体制も揃ってきた。
こうして、15年以内に日本初のディズニー、「和製ディズニー」を目指すのが我々のビジョンだ。

ディズニーと違うのは、我々は自前のコンテンツにこだわっておらず、コンテンツをマネタイズする・ビジネスプロデュースするという機能に強みがあるため、「日本のコンテンツを全部使える」ということが特徴だ。
会社の垣根を超えて、世界中に日本の人気キャラクターを取り揃え、飛び出していける世界観を作っていこう。
このようにして、我々は21世期にディズニーをアップデートする。

昨年も色々なことがあり、全く生半可ではない道のりではあるが、
和製ディズニーを目指すのは「海賊王に俺はなる!」的なノリである。
リヴァースマウンテンを超えてグランドラインを進み、いつかたどり着く先にオールブルーがあるだろう。

個々の夢はたくさんあるが、我々が幼少期から慣れ親しんだ、様々な日本のキャラクターやヒーローたちが、一同に介するテーマパークを作るのもその一つである。

そのような夢をたくさん抱えて、今年も長い航海に乗り出して行こうと思う。

2020年1月5日
株式会社ダブルエル代表取締役 保手濱彰人

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