②「ほっちのロッヂ」軽井沢町で試みるケアの文化拠点プロジェクト #ケア文0202
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①第一回ケアの文化・芸術展の概要、感想・つぶやきのアーカイブ
▶︎②「ほっちのロッヂ」、 軽井沢町で試みるケアの文化拠点プロジェクト
③福祉と教育、どう応答していくのだろう?
④福祉とアート/サイエンスへの好奇心の接続 トーク&セッション
⑤【老いと演劇】ワークショップ「いつか老いる自分にかける言葉、仕草、眼差しを問う」
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この記録は、2019年2月2日(土)「第一回ケアの文化・芸術展」のプログラム、「ほっちのロッヂ」、 軽井沢町で試みるケアの文化拠点プロジェクト にて、語られたものを編集したものです。
当日の様子を体験していただくため、出来るだけ口語表現にしています。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
語り手:
「ほっちのロッヂ」設計者・建築家 安宅 研太郎氏
「ほっちのロッヂ」設計者・建築家 池田 聖太氏
「ほっちのロッヂ」共同代表・医師 紅谷浩之
「ほっちのロッヂ」共同代表・福祉環境設計士 藤岡聡子━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━では、ほっちのロッヂが始まるきっかけから、お話をお願いします。
紅谷:みなさん、こんにちは。紅谷と言います。
いわゆる”制度にのっとった事業”としてお話しをすると、一つは診療所です。内科・小児科・在宅医療、緩和ケア、そしてオンライン診療も視野に入れています。他には、病児保育室、デイサービス、訪問看護ステーション、です。
今日4人でお話していくと、”制度にのっとった事業”と、”目指していく事業の中身”の隙間が埋められていくと思います。
元々僕は福井県で在宅医療の「オレンジホームケアクリニック」を運営する中で、単に医療だけ提供していても、地域に住まう人たちがハッピーになっていかないなぁと思ったので、まちづくりをしていこうということをコンセプトにしてやっています。
地域に必要とされればどこへでも出向いていく、というやり方をしていると、だんだんと子どもたちに出会うようになります。
在宅医療というと、高齢者のイメージがあるかもしれないですけれども、医療が必要なお子さんたちに、僕たちが主治医として関わることが増えてきました。
実はこの子達って病院と家の行き来達だけで、なかなか生活という場所が持ちづらかった。子ども達がハッピーになるにはどうしたらいいのかな?家でも病院でもない居場所、繋がりができないのかな?と思い立ち上げたのが、「オレンジキッズケアラボ」でした。学校が終わった後であっても18歳で学校を卒業してからも通える場所です。
その活動の中で子どもたちが生活の中で成長していくわけです。今まで病院の中にいると、この子は成長しないんじゃないかと思われていた子ども達が、遊びやお友達をきっかけに、どんどん成長していくんですね。
人工呼吸器をつけたまま海だったり雨だったりに行く。そのうち海や山へ行くことが普通になってきた。じゃあ、次はどこへ行こう?と候補になったのが、3時間半ぐらいで行ける軽井沢でした。
それまで福井の人たちが行く場所ではなかったのですが、(軽井沢のイメージはスネ夫君が別荘を持っているイメージ)北陸新幹線のおかげでそれまで遠かった軽井沢が近いところになった。よし、軽井沢に行こう!ということになったんです。
ただ1泊ではもったいないので、1か月間滞在しようと立ち上げたのが2015年に立ち上げた「軽井沢キッズケアラボ」です。福井の子だけじゃなくて東京やいろんなところから子ども達が集まってきますし、ボランティアさんも全国から来てくれます。
軽井沢町の方と、軽井沢キッズケアラボの子どもたちとの交流をみていて確信をしたのは、子ども達を中心としてまちづくりをしようということです。高齢者、認知症にやさしいまちづくりとしようとした途端、みんながどうしよう?何をしよう?という顔になるんです。でも、子どもたちがニコニコハッピーに過ごせるまちをつくるんだ、とすると、他の大人も高齢者も元気になっていくんだと思うんです。
そんな時、2017年の夏、軽井沢で活動している近くで学校ができるという噂を聞きました。「軽井沢風越学園」の学校のコンセプトを聴いて鳥肌が立ったんです。学校ってルールがたくさんあるイメージだったんですが、(ちがいを大切にして、)分けるんじゃなく混ぜるんだというコンセプトを聞いて、僕らのように福祉の状況にいて、いろんな人を混ぜていきたいと思っていたところに、学校、教育側もそう思ってくれる場所があるんだということが嬉しくて。なんとかツテを辿って代表の方にお会いすることができたんですね。
初めは自分を売り込んで学校の保健室の先生にしてもらおうと思っていたんですが(笑)、代表の方の話を聞いていたら、そこで地域をどう作っていくかという話になったんです。もちろん、学校ができて、子どもたちが成長できるってのがそうなんだけれども、お店があって医療があって福祉があって、過ごしていくのがいいんだよねとなった。医療!医療なら僕ができます、絶対ご一緒にしたいですと。
そういえば医療と福祉って話をしたけど一か月前に同じようにこうして興奮して帰っていった人がいたと聞きました。それが藤岡でした。(一同笑)
そうして藤岡と初めて会った時から、初めて会ったとは思えないような出会い方をして・・・そこから一年半ですかね。
藤岡:私は、2010年に大阪で50人規模の住宅型の有料老人ホームを友人と立ち上げまして、その時から”老人ホームをつくる”のではなくて、”地域に開いた場所をつくろう”って話をしていたんです。
月に1回訪問者が来て、形式的に歌われる歌を聞くのではなく、私ならば、夕方に子どもたちが、ただいま!おかえり!その掛け合いが毎日続くような日常で、毎日何かしらの関わりしろがあるそんな環境をつくりたいなと思っていたんです。
でも、現場の介護士にしたらこの人何をしたいんだろう?大丈夫かなこの人?という印象があったんでしょうね。実はその時うまくいかなかったんです。そして、出産を挟んで、ようやくまたつくってみたいな、という気持ちが湧いてきて。
軽井沢風越学園ができる、と聞いてすごく興奮気味に(元々知り合いだったということもあって)代表の方にお会いしに行って、3枚ぐらい、子ども達とお年寄りが自然に混ざれば、生活文化を継承する相手として関わりあえるんじゃないかという企画書をお見せして。代表の方も驚きながらそれを見てくれた。そこからです。
それまで要介護状態の人達って、○○してあげなきゃいけないという対象だったのが、そこに子どもたちが入っていって、文化的な、芸術的な何かが媒介にあれば、その人が先生になる役割があって、それを最後まで全うできる環境ができるのかなと思ったんですね。
なのですごく大それた事を言っているのではなくて、子ども達の育ちの場所を近くにして、私たちの福祉の現場がお互いに領域を横断することができればなと思っています。私たち以外の現場、デイサービスや在宅医療の場所、有料老人ホームや特別養護老人ホームであったりが、”あそこだからできるよね”、”○○だからできるよね”っていうことではなくて、「これだったらできるかもしれない」というエッセンスが生まれるような実験の場をつくりたいと思っているんですね。
そういう風な暮らしの文化が、どんどん繋がっていくような場所になればいいなと思っています。
この場所をつくるには、いわゆるデイサービスってなると、すごく大きい机があって皆さんが入ってきて、車椅子がちゃっちゃっと乗り付けられて、ちゃっちゃっと折り紙が出てきて折る。とにかくみんな集められる。まあそれが好きな方はいいんですけれども・・、今そこに選択肢がないと思うんですよ。
集められるというのは、もちろん介護現場の効率もあるし、そこを責めるということではなくて、でもそこに選択肢がないなっていうのがもったいないなと思うんです。
私たちの未来を考えた時に、本当に車椅子がちゃっちゃっと乗り付けられて、折り紙をやっているんだろうか?ということを考えた時に、ひょっとしたら違うかもしれない。そしてそれはすごく大事な感覚だと思うんですね。
その建物って昔コンビニだったんじゃないの?で、ちょっと内装変えたくらいなんじゃないの?って。日常的に通う場がコンビニエンスストアのような場所だったら・・?
そういうところから問い直していきたいなと思ったんです。
これはイメージ図です。2018年1月ごろ、建築家のお二人に会う前に、知り合いに描いてもらった絵です。
小高い丘があって、そこにはちょっと食べられる果樹があって、そこに食べに行くために普段杖をついてるお父さんお母さんが、杖じゃなくてかごに持ち直して歩いて行くみたいな。じゃあその受け皿となる建物ってどんなものだろうか?
そんなことをコンセプトにして今座っている安宅さん池田さんにお会いすることができて、今この私たちの構想を、本当に苦労されながら図面を書いてくださっているというところなんです。
安宅さん:2018年の4月ぐらいに、藤岡さんから熱烈なメールをいただいて。何をするための場所なのかよくわからないけれども、いろんな人が混ざり合っている場所をつくりたいというような連絡を頂いて。
とにかく会ってみないとわからない。そして会って話を聞いて事業内容としては先ほどもあった話なんですが、とにかく福祉の施設の場合、広いところでみんなで一緒にしようとやろうと言うのが多いので、空間が大きなところがあって、そこに小さなところがついていくというのが普通なんですが、そういうものは必要ないと。
まず内部については、四畳半から大きくても8畳ぐらいの部屋の集積で全体ができている。小さな場の連続で建物全体ができています。
全体で集まる場がないような場所にしているのでガタガタしていますが、居場所としてのコーナーはたくさん存在している、そんな作りをしています。
もう一つ、ここ「ほっちのロッヂ」は敷地全体が広い林になっています。先ほど「軽井沢風越学園」のお話がありましたが、学校の後にまずこの施設に子どもたちが遊びに来るというよりは、この雑木林に子どもたちが遊びに来るんではないかなとイメージしました。
わざわざ入っていいよっていう看板を掲げていないので、雑木林で遊んでいるうちになんか建物があって、その建物のあちこちでいろんなことをやっている人がいて・・・、そこに近づいていくと顔が見える状態でいろんな人がいろんなことをやってるから自分も何かやってみようかな、という関係が持てていく。
いつのまにかここの縁側から入っていく子もいるかもしれないし、料理をしてるところにいるかもしれないし、ミシンで何か作っている人の横にいるかもしれない。こういった関わりしろを増やした建物がふさわしいのではないかというふうに考えています。
模型がこれです。少しプランと違うところもあるかもしれませんが、このような形で一つの大きな屋根の下に居場所が集積しています。
でこぼこしたところのあちこちが外の居場所にもなっていてそこにそこが関わりしろにもなるし。製作場所だとか半屋外の演劇だったりとかそういったものに使える使い尽くせるような建物にして考えています。
ランドスケープは田瀬理夫さんという方が担当していただいています。田瀬さんと樹木調査をし、この林がきちんと人の手が入り続けていることによって良い里山の植生を残しているということがわかりました。
それをちゃんと検証して、自分達も出来る範囲で林の保存、保全管理にも関われるような状態をつくろうと思っているのがベースです。
建物や駐車場をつくることで伐採する樹木も、駐車場留めであったりとか家具であったりとかそういうものに使おうという話をしています。
池田さん:紅谷さんから話がありましたけれども、用途としては診療所だったり老人福祉施設なので、建築ももちろんそちらに乗っとってその用途で作らなければいけないんです。ただ、打ち合わせをして行くと、お二人からその用途の話は全く出てこずでして、大体施主さんから用途がこうだから、機能的にこういうことをして欲しいっていうのはあるんですけど、お二人は用途の話がないので、むしろこちらから心配して確認する、ということを今しています。今初めて事業の話をお聞きになった方は、まさにそういう印象を持たれたかもしれないですけれども・・。
藤岡:予定は・・・間に合いそうですか?今の所。
安宅さん・池田さん:はい、なんとか・・・!
藤岡:昨年12月、近隣向け説明会を開催したいときに、「通所介護だったりクリニックじゃなく、人の流れが生まれる場所にしたいんです」という話をしたら話を聞きに来て下されていた方々も、へえ〜?という表情をされていたわけなんですが・・、
何を大事にしたいか、というとケアの文化拠点というのをどうやったら作れるかっていうことをこの枠組みで表すと、3つかなと思っています。
1つは、「働き手がいかに幸せであるか(従業員幸福度)」。これまで、ずっと文化的だ、芸術的だって言ってきましたが、一番いいたいことはこれだったりします。
このあたりはこの後の 福祉とアート/サイエンスへの好奇心の接続 トーク&セッション に続けますが、ここが起点にあるということです。ここが土台にないと歪むと思ってるんですね。
やるよって上から言われるんじゃなくて、自分の幸せでありたい姿ってどういうことだろう?と考えた延長線に、この2つ目の「自立を促す個別化されたアプローチ」があり、関わりしろが欲しいね、それを表現しやすいようにしようとか、という考えが合って、この3つ目の「人の流れがある場所」が生まれる。
そういう光景をつくると、福祉っていうイメージが世間一般から変わってくるのかなって、思っています。
3つ目の「人の流れがある場所」というところで、「ほっちのロッヂャー」が大事な存在になって来ます。
軽井沢町にはいないかもしれないけれど、いろんなところで暮らしている人たちがほっちのロッヂと自分たちの関わりしろを保ってもらい、福祉のイメージを世間が考えているものから覆していきたい、そう思っているんです。
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▶︎②「ほっちのロッヂ」、 軽井沢町で試みるケアの文化拠点プロジェクト
③[coming soon]福祉と教育、どう応答していくのだろう?
④[coming soon]福祉とアート/サイエンスへの好奇心の接続 トーク&セッション
⑤【老いと演劇】ワークショップ「いつか老いる自分にかける言葉、仕草、眼差しを問う」
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