駄目なオモパができるまで(仮題)

 パズル通信ニコリの「オモロパズルができるまで」は新しいペンシルパズル、通称オモパを開発しようというコーナーで、最近もストストーン(156)やペンシルズ(158)といった秀逸なパズルが生まれている。私もペンネーム:帆立として度々投稿しているが、残念ながら近頃はよいオモパが生み出せず新作が載らない日々(季刊だから季々?)を過ごしている。この記事はペンシルパズルアドベント2018の12日目であるが、読者に有益かどうかなど捨て置いて思い出話と駄作オモパ練成過程を書き記すこととする。

 ペンシルパズルおよびニコリと出会ったのは京都大学パズル同好会に入ったのがきっかけである。パズルビラをもらい、四角に切れ(27)やスリザーリンク(26)などの解き方・作り方を教えてもらい、ニコリ103号と104号を買って、最初にニコリに投稿したのは新作オモパ「平均大賞ブロック(105)」であった。ブロッカル(79)の存在は知らなかった。ニコリに平均大賞というコーナーがあり、その名前から考えたパズルである。
 以降のニコリに掲載された自作は、シャリンク(107)、アイスバーン(108)、ホットライン(112)、ネットワーズ(121)、アクセスポイント(121)、跳ばナイト(125)、笑福(131)、交差は直角に限る(133)、打ち上げ花火(142)、コーヒー牛乳(156)、二色花火(161)である。「まったく新しいパターンの、オモロイパズルなんてのはなかなか作れるものではない(オモロパズル大全集27p)」とはまったくその通りで、既存の改作ばかりで新しいと言えるのは笑福と交差は直角に限るくらいである。
 シャリンクは、ごきげんななめ(104)の輪を作ってはいけないルールから、斜線で輪を作ったらどうかと思って作ったパズルだ。アイスバーンはオモロパズル大全集でヤジウェー(97)やその改作を知ってから作ったパズルだ。交差ありの線引きパズルは何故か惹かれるものがあり、カウントアイスバーンだの廊下計画だのトビウェーだのを作っては没になっている。余計な矢印を消して残った矢印をたどると交差ありループになるイッツウ(97)も好きなパズルで、矢印を白と黒に塗り分けてみたり数字付き矢印にしてみたりしたがうまくいかなかった。斜線も交差もある複雑なルールのメトロ(164)を見て、斜線も交差も矢印の向きもあるもっと複雑なパズルを投稿したが当然没であった。花火(141)も好きなパズルで、今でもどうにかして改作を生み出せないかと思っている。
 ネットワーズは、ボサノワーズ(120)の見た目を変えただけといって良いパズルだが、初めて絵を描いて投稿したパズルという点で貴重?であった。ルールは分かりやすいが、何の言葉か判った絵が1つだけあっても、絵ヒントクロスワードと異なり何も文字を書き込めないのはつらいと思う。言葉や漢字を使うパズルは重要な分野であるが、自己没を含めてもほとんど作品を生み出していないので精進したい。
 
 オモパコーナーは、そのままでは普及しなさそうなパズルでも着想が良ければ載る可能性があり、既存の改作でも面白くなっていれば載る可能性がある。そのため、自分でも何か生み出せるのではと思ってしまう。ルールを改変してどうにか面白くならないかと思案して、どうにか1問作って自己没にする、というのを繰り返していると数時間なんてあっという間に過ぎ去ってしまう。
 宝かこみ(162)は、オモパ30周年記念号に登場した珍ぬ氏原作のパズルだ。例題と解答は図の通り。三角方眼の盤面を、各領域に四角記号が1つずつ入るようにブロックに分割するパズルだが、ブロックにならないマスもあり、それらは(ルールには直接は書かれていないが)盤面の外につながるのが特徴だ。以下では、1回で消えてしまったこのパズルの改作を試みる。

 フォーセルズ(132)がファイブセルズ(133)になるのも改作の範疇、というわけでまずはわずかな変更を加えてみる。

ルール①:点線上に線を引き、盤面をいくつかのブロック(国)に分けましょう。どのブロックにも入らない三角マスが出ることもあります。
②:1つのブロックには城(四角記号)が1つだけ入ります。
③:城があるマスを囲む3辺では、1辺だけに線を引きます。
④:△のある点からは、点線のある最大6方向のうち3方向に線を引きます。何もないすべての格子点からは、2方向に線を引きます。
⑤:×の記号のマスはブロックに入りません。ブロックに入らないマス(海)は盤面の外まで繋がります。

 ブロックに入らないマスを示す×を追加し、すべての格子点に入っていた○記号を省略して見た目を少しすっきりさせた。1の左上は、格子点ではかならず2本の線を引くルールと×記号から決まる。ブロックに入らないマスが盤面の外への出口を求めて伸びていくのは面白いところだと思う。ブロックに入らないマスは海、線で囲まれたブロックは国で各国は1つずつ城(四角記号)を持つと考えると理解しやすい。四角に国の大きさ(マス数)を表す数字を加えたり、戦いマークを辺の上に追加してその辺を挟む2国はマス数か何かが同じなので争っている、などと考えるのも楽しい。海のマスでも交易をしている2国を線で結ぶなどしたくなる。しかしながら、格子点に関するルール(元の宝かこみの○と△のルール)はどうにも解いていて面倒だし、四角マスの1辺にだけ線を引くという人工的なルールも好きになれないし、何よりマスの中にも格子点にも記号があるのが(個人的に)良くない。

 四角記号を隣接して配置すると間に線が引けて、線を引いていない2方の三角とは繋がった状態になる。宝かこみにおける主要な入り口手筋である。ここから、三角マス3つが繋がった台形を1単位とし、それが複数繋がったブロックに分割することを考えた。ブロックにならないマスのことは忘れて盤面すべてを単位台形に分割し、それぞれのブロックはその組み合わせでできる形とする。ヒントの記号は単位台形の中央に入ることにする。単位台形が繋がった形を作るパズルは(複雑なので)ニコリオモパにはまだ無いし、台形分割ができない形は作れないといった制約があるのも面白そうである。さて、問題はヒントの与え方である。格子点には何も置きたくない。数字が面積(そのブロックに入る単位台形の数)を表すのはありがちなので避けたい。辺で隣接する同じ形の単位台形を数えてみたが、2つまでしか同じ形を隣接させられない。そこで、単位台形は三角方眼上で6通りの向きに置けることに着目し、ヒントが示す向きの単位台形が同じブロックのどこかに入る、というルールを考えた。ルールと例題、問題を以下に示す。

ルール①:水平、60度、120度の方向に、格子点どうしを結ぶ線を引き、盤面をいくつかのブロックに分割します。
②:台形記号を囲む三角形の3辺のうち必ず1つの辺だけに線を引きます。
③:それぞれのブロックには台形記号が1つずつ入ります。
④:三角形3つが繋がってできる台形を、単位台形と呼びます。それぞれのブロックは単位台形を重ねずに辺で繋げてできる形になります。台形記号は、そのブロックを単位台形に分解したときに、その記号がある単位台形とは別のどこかに、同じブロック内でその向きの単位台形が1つ以上含まれることを表します。

 面白いパズルができたらニコリに送るので、ここに掲載したということは面白さが足りないということである。解くとわかるが、このブロックはここまでとざっくり切れる場面がほとんど無い。ブロック内のどこかにある、というルールでは隣の単位台形が望む形かどうかすぐには決められないのである。いっそのこと面積を表出させた方がよいかもしれない。普段ならここからどうにかして面白くならないかとルールの改変を繰り返し、ニコリに載らない複雑なパズルになって自己没となるところである。あと、ペントミノパズルとかに慣れ親しんでいないと単位台形の概念すら理解できないかもしれない。単位台形の考え方は好きなのでこれを読んだ誰かがうまい改作を作ってくれないかなぁ。

 メトロの改作で路線ごとの紋章があって交差点では紋章を重ねた形がヒントになるとか、ペンシルズに赤青色鉛筆を導入してみたいとか、ストストーンにならって余計な文字を落下させると残った文字が文章になるとか、ヤジウェーの改作にナナメを加えるときっと面白いとか、ミッドウォール(仮題)とか、次の新作オモパは絶対載るはずだ(毎度送るときは自信満々)とか、書きたい事はまだあるけれどここで筆を置くことにする。オモパのネタを夢想するのは楽しい。ネタをパズルに仕上げるのは難しいが新しいルールから未知の展開が生じた時の楽しさといったらない。これを読んだあなたも是非1度はオモパの改作・新作作りに挑戦してみてほしい。

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