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脇本平也『宗教学入門』を読む 第6回

第三章「科学・呪術・宗教」

呪術
超自然的な存在に訴えることによって、病気治療、降雨、豊作、豊漁などの望ましいことの実現を目ざした行為。(日本大百科全書)

1「フレイザーの呪術論」
【呪術の原理と類型】
呪術の2原理
①類似の原理(似たものは似たものを生む)
類感・模倣呪術(干ばつの時などに、水を口に含んで霧のように吹くとか木を水に浸して、水を振りまくとか、似たような現象を再現することで、雨ごいをする)
②接触の原理(接触していたものは離れた後も影響を及ぼしあう)
感染・伝染呪術(狩猟のときに、獣の足跡を探し、足跡に槍を突き刺す。そうすることで、獣本体の足にも影響を及ぼすと考える。藁人形とかも?)

呪術の2類型
積極的なもの(ある事象が起こってほしい)→まじない
消極的なもの(ある事象が起こらないようにしたい)→タブー(してはいけないこと)

感染・伝染呪術は類感・模倣呪術を前提とすることが多い。(複合形態をとることが多い)

呪術の根底には、「ある事象」を共感的にその結果として呼び起こす、という信念がある。

【呪術と科学】
類似と接触は人間の知識の根本原理(観念連合の法則:観念を関連づけたりしていくこと、すなわち、知覚されたものが思考にどう結び付けられたり、また思考が近くにどう影響を及ぼすのかということ)
正しく使えば、科学、誤って使えば、呪術を生む。科学は上記の「観念連合(知覚と思考の結びつき)」が実験的、客観的に確かめられている。呪術は主観的(例えば、希望的観測などのバイアス)にゆがめられていて、事実と合致しない
呪術は疑似科学。呪術も自然に因果関係を認めるという世界観を共有している。客観的に因果関係を明らかにするのが科学で、主観的な判断に基づくのが呪術。

【呪術と宗教】
フレイザーによる「宗教」の定義
宗教とは、自然および人間生活のコースを左右し支配すると信じられている人間以上の力に対する宥和(大目にみる)・慰撫である

人間以上の力に対して頭を垂れる=宗教。これと呪術を対比。

宗教は、目の前の現象が「人間以上の力」によって引き起こされているという世界観に立ち、それを祈りや儀式などで変更させることができると考える点において、自然の法則=必然、ではなく、ある程度変更が可能(伸縮性・可変性がある)だと認識。一方呪術は、必然性を前提とする。

この違いについて2つの側面から整理する。

①人間がかかわる対象
宗教は、人格的・意識的な対象にお願い(お祈り)して、頼みをきいてもらう(自然の流れを恣意的に変える)
呪術は、非人格的・非意識的。(必然的な)自然の流れを利用する
②対象に対する人間の態度
宗教は、対象に対して人間以上の力を認め、随順する態度をとる。
呪術は、対象を思うままにコントロールしようとする。時には脅迫さえも。

呪術儀礼→無効性・不毛性に気付く→人間以上の力に随順するようになる。
という歴史観をフレイザーは考えている

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