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脇本平也『宗教学入門』を読む 第21回

第六章「宗教的実在観」

2「人格的『神』の観念」
神を信仰する宗教が大多数

岸本英夫による「神概念の特色」
①神とは超自然的な、一個独立の、個体的な存在である
②それは、一般的な人間とははっきり異なるが、人間の心を理解する能力をもっており、人間との間にさまざまな形での交わりをもつという意味で、人格的である
③この人格的な存在が、おおむね人間以上の強力な力と自由な意思とを所有しており、そのはたらきによって人間の吉凶禍福に大きな影響を及ぼす


これらの特色を共有する「精霊」例えば、アニミズムの「霊」なども含めて「神霊」と呼ぶ。

【神の特性】
自然神:自然的な存在や力とつながる(太陽、月、山、動物、植物など)
人間神:人間的な存在や力とつながる(氏神、祖先神、英雄神、守護神など)

両者を兼ね備えた神:天にまします父なる神、地母神、生命の源としての大地の神など

【有相の神・無相の神】神の形態、人々が思い描く神の表象形態という意味
有相の神:植物や動物の姿をした神、擬人的に人間の相をそなえた神、半人半獣、などなど
無相の神:色なく形なく、人間の想像を超えた存在。感覚的、物質的な要素を含まない相なき神。抽象的な存在。さらに抽象化が進めば、人間の理解を超えた神、純粋無としての神、、、だんだん非人格的な存在になっていく

これらの有相・無相の違いは、3つの場面において対照的である
①多神教or一神教
②神の力の相対性or絶対性
③人間との関係の親近性と理論的な超越性


多神教:いろんな神々がいて、いろんなことを司っている。したがって、神々の力は相対的(強い、弱いがある)。人間には近い。(安産の守りの水天宮、入学試験のお守りは天神。など)豊かな有相の神々。人間の吉凶禍福への影響、分業的なイメージ。人間の生活に親近性があるが、理論的には徹底されていないので、妥協的。寛容的。

一神教:唯一絶対。偶像崇拝は排撃。全知全能、最終的な審判者。自然を超える超越性、理論的に最も完全な形。したがって、どんな形にも限定されないので、無相の神。超越性・絶対性を強調。抽象度が高い。人間の実際生活からは遠い。他宗教に対してはどちらかといえば、否定的にならざるを得ない(唯一絶対なので)

もちろんこのような分類はあくまで理論的な話で、実際にはグレーゾーンもあったり、行ったり来たり流動的な場合がある。(例、キリスト教の母胎になったのはオリエントの多神教で、三位一体の教義になったかと思えば、マリア崇拝・聖者崇拝などが付け加わる場合などがある)

【日本のカミ】
ヒトがカミになる(豊臣秀吉が祀られていたり、菅原道真が祀られていたりする)
ヒトがカミになるのが考えられないというのは、キリスト教の前提

日本語のカミの語源は諸説あり、はっきりしない

基本的な性格は、本居宣長『古事記伝』による
(要約)尋常普通ではない非凡な力を有して善悪の両方面に作用すること、そして人間のうちに畏れつつしむ畏怖・畏敬の情緒や態度を生じさせること。

マナ的な力(非人格的)と合致するところが多い。(次回に続く)

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