H26年度 都立小石川 適性Ⅲ 解答解説

【適性検査III】(45分)〈満点:100点〉

 1

なおきさんは,お母さんと勉強をしています。

お母さん:ここの計算が間違っているわよ。
 なおきさん:もう一度計算してみよう。本当だ。消して書き直すよ。
お母さん:きちんと消さないと読みにくいわ。
 なおきさん:鉛筆で書いたものは消しゴムで消せるから便利だね。 お母さん:赤鉛筆は消えにくいわよ。やってみて。
 なおきさん:本当だ。なかなか消えないね。鉛筆と赤鉛筆の違いは何だろう。鉛筆と赤鉛筆をくらべると,鉛筆のほうがさらさらと書くことができる感じがするけれど。
お母さん:紙に鉛筆で書いたものと,赤鉛筆で書いたものを拡大した写真がどこかにないかしら。後でさがしてみましょう。

なおきさんとお母さんは,次ページの図1〜図3の写真を見つけました。図1〜図3は,け んび鏡を用いてそれぞれ同じ倍率で見たときの写真です。図1は何も書かれていない紙を見た とき,図2は図1の紙に鉛筆で書いた部分を見たとき,図3は図1の紙に赤鉛筆で書いた部分 を見たときの写真です。 

 
【問題1 】
紙に鉛筆で書いたものはきれいに消すことができますが,赤鉛筆で書いたものはなかなか消えません。この違いは何が理由だと考えますか。鉛筆で書いたものがきれいに消える理由と,赤鉛筆で書いたものがなかなか消えない理由を考え,説明しなさい。

〈解説〉
「紙の上の文字を消すことをテーマにした問題。
 問題1 図1を見ると,紙には細かいおうとつがあることがわかる。
鉛筆の場合,図2を見ると 鉛筆の色がおもに紙のおうとつの“山”の部分についていて,“谷”の部分(くぼみ)はあまり色が ついていないことがわかる。一方,赤鉛筆の場合,図3を見ると赤鉛筆の色が紙の“谷”の部分 にも入りこんでいるようすがわかる。
よって,赤鉛筆の場合は消しゴムで消そうとしても,色が 紙の“谷”の部分に残ってしまうのでなかなか消えないと考えられる。
なお,鉛筆と赤鉛筆でしんの材質が違うこと(鉛筆のしんは粉状のものの集まりでかためであるが,赤鉛筆のしんはねば りけがあってやわらかいなど)にもふれるとよい。

〈解答例〉
鉛筆のしんは,粉のようなものでできていて,これは紙の表面にしかつか ないので,きれいに消すことができる。赤鉛筆のしんは,鉛筆のしんよりねばりけがあり,や わらかい。そのため紙の中にまで入りこんでしまうので,完全には消えない。

 勉強を終えたなおきさんは,窓ぎわの机の上に買い物をしたときのレシートがあることに気がつきました。

なおきさん:ここに置いてあるレシートは、お店でもらったときよりも印刷された字がうすくなっているよ。
お母さん:本当ね。そんなに長い間,置いてあったのかしら。
 なおきさん:時間がたつとうすくなるのかな。鉛筆のときとは違って,消しゴムなどでこすってもうすくならないね。
お母さん:そうね,長い間太陽の光に当たっていたからうすくなってしまったのだと思うわ。
なおきさん:太陽の光に当たると,どうしてうすくなるの。

【問題2 】
太陽の光が原因で,何かが変化する身近な例をほかに1つあげなさい。また,その変化は太陽の光が原因で起こるものだと考える理由も答えなさい。

〈解説〉
ものを太陽の光が当たるところ(日なた)に長時間置いておくと,色があせてしまうこと があり(これをよく“日に焼ける”と言い表す), その身近な例をあげるとよい。解答例にあるた たみのほかに,太陽の光が当たる本だなにしまった本(背表紙は色があせてしまうが,日に当たっていない表紙などは色がきれいなまま残っている),色のついた洋服(何度も着たり洗たくして 干したりしているうちに,太陽の光に当たる表側のほうが,裏側よりも色があせていく)などが 考えられる。

〈解答例〉
  たたみの色は,はじめは緑色だが,長い間日に当たっていると茶色くなる。家具がたた みの上にあり日に当たっていなかったところは,緑のままだから。

なおきさん:レシートの字がうすくなってしまったのは,太陽の光も原因かもしれないけれど,それだけが原因なのかな。
お母さん:そうね。ほかにも原因があるかもしれないわね。
 なおきさん:うん,そう思うよ。
 お母さん:例えばほかにどんな原因が考えられるかしら。


【問題3 】
(1) レシートに印刷された字がうすくなってしまう原因として,太陽の光のほかに何が考えられますか。具体的に説明しなさい。
 (2) 原因が(1)で考えたものであることを確かめる実験を考えなさい。答えは次の①②の順に書きなさい。
 ① 確かめる実験の具体的な方法を,ほかの人が同じ実験をすることができるように説明しなさい。言葉だけで説明しにくい場合は,図をかいて説明してもかまいません。
②予想される結果を書きなさい。

〈解説〉
たとえば,空気中の酸素が原因だと考えた場合、ビニールぶくろの中にレシートを入れ、酸素だけをつめて口を閉じ,光が当たらないところに長時間置いておき、レシートに印刷された 字がうすくなっているかを確かめればよい。
この結果、印刷された字がうすくなれば、酸素が原 因だと考えることができる。
なお、ビニールぶくろの中にレシートを入れ,空気をしっかりぬいて口を閉じ,光が当たらないところに長時間置いたものと結果を比べると原因であるかどうかがよりはっきりとわかる。

〈解答例〉
(1) 空気中の酸素
(2)
 ① レシートを酸素だけをつめたビニールぶくろに入れて,光が当たらな いところに保管する。1か月後,レシートに印刷された字がうすくなっているかを確かめる。
 ② レシートに印刷された字がうすくなる。

 
なおきさんとお母さんは、光の種類について考え始めました。

なおきさん:最近,信号機や家の照明に発光ダイオード(LED)が使われているけれど,発光ダイオードの光でもレシートの字はうすくなるのかな。
お母さん:ためしてみましょう。

なおきさんとお母さんが、レシートに発光ダイオードの光を一日じゅう当ててみましたが,レシートの字は,見たところうすくなりませんでした。

なおきさん:発光ダイオードは人工の光だからだめなのかな。
お母さん:でも,発光ダイオードの光でも植物は光合成するのよ。
なおきさん:人工の光と太陽の光では何が違うのだろう。それともやり方がいけなかったのかな。

 
【問題4】
発光ダイオードを用いて,レシートの字をうすくすることができると考えますか。できると考える場合はどのようにすればできるか,できないと考える場合はその理由を答えなさい。

〈解説〉
発光ダイオードの光がレシートの字をうすくすることができると考えた場合,なおきさ んとお母さんが行った実験では何が足りなかったのかを考えるとよい。その理由が光の強さが弱 かったからだということであれば,発光ダイオードをたくさん用意して光の強さを強くすればよ い。また,発光ダイオードの光がレシートの字をうすくすることができないと考えた場合,太陽 の光にはふくまれていて,発光ダイオードの光にはふくまれていない何かが,レシートの字を消 すはたらきをしていると考えることができる。

〈解答例〉
できると考える。光を強くす るために発光ダイオードを100個用意して実験をする。

なおきさん:レシートのように印刷したものを消すことができたら,紙を再利用できていいね。
お母さん:でも,それだと困ることもないかしら。例えばレシートは、消えてしまって困ることもあるから、最近ではうすくならないように工夫されているのよ。
なおきさん:たしかに,レシートの字が消えてしまうのは困るね。


【問題5 】
(1) あなたの身の回りにあるもので,書いた字などを消すことができる例,または,書いた字などを消すことができない例のどちらか1つを考え,次の①②に答えなさい。
① .どのようなものか説明しなさい。
② .①であげたものは,どのような仕組みだと考えますか。あなたの考えを説明しなさい。
(2) (1)であげたものを工夫してより便利にするためには,どのようにしたらよいと考えますか。くわしく説明しなさい。 

〈解説〉
  (1) 多くのボールペンは書いた字を消すことができない。これは,油性インクや水性イ ンクが紙のせんいの奥までしみこむためである。一方,書いた字を消すことができるボールペン もある。このボールペンはペンについているゴムのような部分で字をこすると,そのときに生じ る熱によりインクの色がとう明になり,消えるしくみになっている。
ほかにも,書いた字を消せ ないものとしてプリンターで印刷した字やぼく汁をつけて筆で書いた字など,書いた字を消すこ とができるものとしてチョークで黒板に書いた字や,専用のペンでホワイトボードに書いた字などがある。

 (2) 書いた字を消すことができないボールペンは、字を間違えたときに不便なの で,インクの色をとう明にすることができる特別な液体を使った,消すため専用のペンをつくる とよい。
反対に,消すことができるボールペンは、書いた字が消えるので便利だが,証明書や手 紙などのあて名書きには使いにくいので,一度書いた字を消す必要がないとき,あるいは消えてしまっては困るときなどのために,スプレーのようなものを吹きかけると,インクが消えなくな るようなものがあれば便利になる。

〈解答例〉
 (1)
 ① 油性ペン で紙に書いた字は消えない。
 ②インクが紙のせんいの中までしみこんでしまうために字 は消えない。
 (2) 油性のインクを変化させてとう明にするような特別な液体を使った,字 などを消すための専用のペンをつくる。



ようこさんは,A,B,C,D,E,Fの6個のおはじきで遊んでいます。
  
お父さん:おはじきを紙の上に置いてごらん。
 ようこさん:何をするの。
お父さん:これから示すルールで,おはじきを線で結んでみよう。

(お父さんが示したルール)
・線は必ずおはじきとほかのおはじきを結ぶ。
 ・線と線は交差してもよい。
・どのおはじきからも必ず1本以上の線が出ている。
 ・どの2個のおはじきを選んでも,直接結ぶ線は1本だけしか引けない。

ようこさん:ルール通りに線で結んでみたよ。ほかにもいろいろな結び方がありそうね。
お父さん:お父さんにも見せて。



ようこさんがおはじきを線で結んだところ,図1のようになりました。
 図1で,○はおはじきを表します。

お父さん:図1で,2本の線が出ているおはじきはA,B,D,Eの4個だね。 ようこさん:3本の線が出ているおはじきはC,Fの2個ということね。


【問題1 】
(1) 6個すべてのおはじきからそれぞれ3本ずつ線が出ているように,解答用紙の図に線を引きなさい。

〈解説〉
  (1) 図1のような。 図1図2例が考えられる。

〈解答例〉
解説の図1を参照のこ と。 


お父さん:同じ本数の線が出ているおはじきを2個だけにできるかな。
ようこさん:2本の線が出ているおはじきが2個,3本の線が出ているおはじきが4個でもいいのかしら。 
 お父さん:それではいけないよ。同じ本数の線が出ているおはじきは2個だけではないからね。2本の線が出ているおはじきが2個,3本の線が出ているおはじきが2個,4本の線が出ているおはじきが2個,というのもだめだよ。
ようこさん:同じ本数の線が出ているおはじき2個以外は,すべて違う本数にならないといけないのね。

(2) お父さんが言うとおりに,同じ本数の線が出ているおはじきが2個だけになり,残りのおはじきはすべて違う本数の線が出ているように,解答用紙の図に線を引きなさい。

〈解説〉
 図2のような例が考えられる (EとFからは3本ずつ出ていて,Cからは1本,Bからは2 本,Aからは4本,Dからは5本出ている)。

〈解答例〉
解説の図2を参照のこと


お父さん:もっとおはじきの数を増やしてみよう。例えば,おはじきが100個あるとし このよう。このとき,すべてのおはじきから違う本数の線が出ているようには引けないのだよ。
 ようこさん:なぜそのように引けないのかしら。

【問題2 】
お父さんは、「例えば,おはじきが100個あるとしよう。このとき,すべてのおはじきから違う本数の線が出ているようには引けない」と言っています。その理由を考え,説明しなさい。

〈解説〉
 もし,すべてのおはじきから違う本数の線が出ているように引けるとすれば,最も少な いおはじきから出ている線の数は少なくとも1本,2番目に少ないおはじきから出ている線の数 は少なくとも2本,...となり,最も多いおはじきから出ている線の数は少なくとも100本になる。 しかし,線で結ぶ相手となるおはじきは99個しかないから,100本の線を引くことはできない。
 よって,すべてのおはじきから違う本数の線が出ているように引くことはできない。

〈解答例〉
もしすべてのおはじきから 違う本数の線が出ているように引けるとすれば,1個目のおはじきからは1本,2個目からは 2本,3個目からは3本の線が出ていることになり,100個目から 出ている線は100本となる。しかし,線で結ぶ相手となるおはじき は99個しかないので,100本の線を引くことはできない。また、101本以上を引くこともできない。


お父さん:図2をかいてみたよ。今度は,おはじきの色も考えよう。
ようこさん:図2の○に色をつけることを考えるのね。
お父さん:そうだよ。線で結ばれているおはじきどうしは同じ色にはできないことにしよう。図2では,最も少ない場合で,何色のおはじきが必要かな。



図2で,○はおはじきを表します。

 【問題3】
図2について,最も少ない場合で何種類の色のおはじきが必要ですか。また,どのようにおはじきを置いたのか,解答用紙の○の中に色の名前を書きなさい。ただし,おはじきの色は次に示す6色から選びなさい。
(赤,白,黄,茶,緑,黒)

〈解説〉
図3で,Aを赤にしたと すると,B,D,FはAと線で結ばれているので,赤とは違う色にする必要 がある。また,BとD,DとFもそれ ぞれ違う色にする必要があるが,最も 少ない場合を考えるから,BとFは同 じ色にする。さらに,CとEにはAと同じ色を置けばよいので,最も少なくて3種類の色が必要である(Cは白でもよい)。

 〈解答例〉
解説の図3を参照の こと。


お父さん:今度は,自分でおはじきを並べてみよう。
 ようこさん:おはじきは,どの色をいくつ使ってもよいのかしら。
お父さん:数はいくつでもよいけれど,次のルールを加えてやってみよう。

(つけ加えたルール)
 ・おはじきを表す○とおはじきを結ぶ線は,いくつかいてもよい。 ・3本の線が出ているおはじきは,4つだけとする。
 ・線で結ぶおはじきどうしは,同じ色にはできない。
 ・おはじきの色は、赤と白だけとする。

【問題4 】
お父さんが示したルールとつけ加えたルールとの両方に当てはまる図を,○と線を使ってかきなさい。また,○の中に「赤」または「白」を書きなさい。

〈解説〉
  解答の図のほかに,右上の図1のような例も考えられる。

〈解答例〉
  上の図


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