見出し画像

境界標を復旧しました

杭を残して悔いを残さず

 上の言葉は、土地家屋調査士なら誰もが知っている、境界標の大切さを教えてくれるものです。日本土地家屋調査士連合会の標語で、お隣との土地の境目を明らかにする境界標の設置を推奨しています。境界標を設置してお隣との境界をはっきりさせておくことは、将来、土地の売買や相続などの手続きをする際に起こりうる、境界トラブルを未然に防ぐ役目を担っています。

 今回はそんな境界標の復旧作業の一場面を、現場での作業風景とともにご紹介します。境界標の復旧は、新築建物の竣工間際の時期に、しばしば依頼が来ます。長期にわたる工事において、重機による境界標への接触や、ブロック塀やフェンスの新規設置、前面道路のL形側溝張り替えにおいて、境界標の位置にずれが生じてしまう場合があります。

 作業の流れは、境界標はお隣との共有のものですので、復旧にあたっては、まず、隣地の方に了承を得るため、境界標の復旧のご挨拶と詳細な説明、希望される方には、復旧する日に立会いを行い、了承を得てから設置いたします。

 

新設されたL形側溝に、境界標を入れるためドリルで穴を空けます。

 了承が得られたら、実際に境界標を設置します。境界標埋設にあたっての最も重要なことは、将来境界標にずれが生じないよう、可能な限り強固に設置することです。
 境界標は形状にいくつか種類があり、コンクリート杭や石杭などの大きく堅牢なものは、地中深く土を掘って設置します。重量もありしっかり安定させる必要がありますので、杭がずれないよう、土の根固めから注意して埋設します。まず杭の長さ分(50cm前後)をダブルスコップでやや広く掘り、杭のてっぺんと地面の高さを合わせたら、根元まわりにモルタルを流して基礎を作ります。さらに小石をまばらに詰めて、土をかぶせてしっかり固めて完了です。
 本日は、設置場所の関係上、金属プレートにて埋設いたしました。こちらも容易にはがれないよう、周囲をモルタルで固め、プレート裏側には強力ボンドをまんべんなく塗布し、しっかり固定します。プレートは金属やステンレスでできており、簡単に劣化しないため耐久力も高いです。

測量機械で境界点をしっかり確認し、ペンキで目印を落とします。


モルタルで土台を作り、強力なボンドで貼り付けます。


貼付け後に再び測量機械で座標、境界線をチェックし、ずれがないか確かめます。

 皆さんが今お住まいの家の周りにも、境界標があるかと思いますので、いざという時のためにも、写真に収めて確認しておくのをおすすめします。もし境界標がない場合は、お隣との協議や、正確な位置を確認するための測量も必要となります。境界標は、座標値をもとに設置しているためです。
 注意していただきたいのは、境界標には設置義務がありません。民法上では「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる」となっており、「設けなければならない」までの言及はありません。不動産登記規則においても、「境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいう。以下同じ。)が「あるとき」は、当該境界標の表示」の記載となっております。義務ではないものの、将来土地を売買するときや、建替え、相続の際の手続きもスムーズになりますので、設置を忘れずご検討ください。
 その場合は、測量業者や土地家屋調査士のサポートが必要となってきますので、ぜひご依頼ください。