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プリズム

長尾早苗
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少年は虹を見たことがなかった。彼の村では、少年が前世で罪を犯したからだという。彼の村ではみな虹を見たことがあるのに、少年だけ虹を見られなかった。そんなある日、雨が降り続けたある日、少年は踊り始めた。泣きながら踊った。舞うということ、それ自体が少年にとって必要なものだった。そう気づいたのだ。かくして、少年は雨を上がらせ、みなの崇める対象となった。ひとびとは少年を神と呼んだ。神殿に昇ったとき、少年にはようやく虹が見えた。少年は気付いた。「神さま、ぼくは罪を犯しました」

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