画像1

月に傷痕

長尾早苗
00:00 | 00:00
月に傷痕

この世界は、たまごのようだ。そう、きみは思ったことがあるか。弾けそうな青空という膜を、つまようじでつつけば、世界は壊れる。そんなことを、きみは思ったことはないだろうか。赤信号はすてきだ。青空を見上げることをゆるしてくれている。そんなとき、月と目が合った。真昼の月は、白く満ちていた。こっちを見ている。わたしはバッグの中から、先のとがったボールペンを取り出し、真昼の月を刺した。世界は壊れなかった。赤信号は青になる。わたしはボールペンをバッグにしまい、歩きはじめた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?