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カタシロRebuild視聴感想

会話する舞台、主演のマコト役の人は、記憶喪失であることと、「唯一覚えていること」以外、何も知らない。
舞台の上で繰りひろげられる、リアルな医者とマコトの会話は紛れもなく今、"ここ"で交わされているものだという事実にとてもワクワクしながら見させていただきました。

すべての配信を見たわけではないけれどどの話もマコトさんごとの違う物語になっていて、その違いがまさしくこの物語の核心を表していると思いました。

それはこの舞台の歌からも感じられました。毎講演の終わりに流れるed曲がとてもとてもいい歌なのですが、その歌詞がまたとても強いメッセージになっていて、改めて歌詞を追ってきいたら涙がでてしまいました。
「これもひとつの解」「自分を形作るものがひとつでも分かるように今日も話をしよう」「誰もが同じ選択をしないからこそ時間をかけて君と話をしよう」
(そうだよ、自分を形作るものが何なのかなんてはっきりと分かって生きているわけじゃないんだよ!だからこんなに悩み苦しむ(

たくさんのマコトさん、アユムちゃん、先生のやりとりは舞台という枠を超えて私に、自分の言葉で考えることの面白さを教えてくれました。
大事なのはその状況にいる当人の自分がどう思っているのか納得のいく意思を持つことなんだなぁと。

最初に繰り返された“ただのおしゃべり”の材料だった思考実験は物語の後半で、今、まさに"あなた"の人生を左右する重大な選択として改めて、マコトさん達に突きつけられる。演者の方によってその反応は様々で、覚悟を決めて潔く明け渡す方もいれば、大きく感情を乱されて拒否し、それでも最後にやはり譲ろうと決断する方もいる。また美空さんがきっぱりと言った返答にまさしく「これもひとつの解」だと思った。また、その決断に至る過程にそれぞれの信念があって、美空さんの決断は、見ている私にまた、新しい道を示してくれました。本当にとても格好良かった! 

千秋楽の今日、ショーンさんの回を見ながら二人の演技にまた涙がでて胸が熱くなりました。
時々入るズム栗の掛け合いにニコニコしていたら、扉を開いた先では空気が一変してマコトさんの様子に一気にこちらまで緊迫感が押し寄せました。医者を責めながら優しくアユムちゃんに手を添えるシーンが印象に残っています。
どうして即興でそんなに言葉を繋げられるのか…
最後の最後で憤りを露にしたディズムさんにまた圧倒され
全力で演じてくださったことに本当に感謝したい。

全力の演技というところでなな湖さんの回もまた、涙腺を持っていかれました。
彼の表情がその場の異常さを体現して、事の異常さに彼なりの反応で返す様子にハラハラドキドキでした。なな湖さんの気迫にこたえてハヤシ医者がアユムちゃんを起こそうと手を伸ばすところでは思わず声が出ました。そんな展開があり得るのかと。狼狽えながらも最後にはなな湖さんの信念を通した様子がとても素敵でした。

ハラハラドキドキという点でマフィア梶田さんの回はまた別な意味でハラハラドキドキしました。言葉選びや仕草がハードボイルドだったしあまりにキャラがたっていて、そんな様子に負けないアユムちゃんの返答がまたとても笑いを誘うもので、クセになりそうな回でした。
医)「暴力は…よそう」… ハラハラ…笑

アユムちゃん役の藍月なくるさんをこれまで詳しく存じ上げませんでしたが、回のマコトさんごとに返答を変えるなくるさんの即興にも尊敬の念を抱きました。特に名越康文さんの舞台で名越さんの鋭い分析に答える姿勢は、更に物語に深みを増して心に残るものになりました。繰り出されるストレートな名言!!

人間の本質に迫る名越さんの回では1時間半とは思えないほど濃厚な名言の数々があり、何度も繰返し自問自答したくなります。
「心の檻」「人間は神話を生きる時がある」「(人は犠牲を求めている、それは)人間が死の恐怖に打ち勝つ可能性を種族として担保しておきたいから」「物語だけが死を彫刻できるという 瞬間がある ー物語を渇望している」「無意識はそれ(運命)を肯定していた」「あなたが扉に見える」…………………… ((キリがない!!))

聞き慣れない言葉並びの数々が新鮮でした。
自分の犠牲に物語という意味付けをすることで受け入れる、というお話がもう、カタシロの中で決断するマコト達の心境を分析した言葉だ、と感銘を受けました。そしてそんな物語に強く惹かれる私のような視聴する側もまた…(以下略)

名越さん自身がかつて、そのような思考実験の問いに苦悩した過去がありその頃決着をつけたはずの難解なそれに図らずもまた向き合うことになった。そんな現場に、舞台という形でリアルタイムに目の当たりにすることができてとても有難い気持ちです。
「こういう運命を自分が生きることになるとは」と独白した名越さんの様子はカタシロという物語に真摯に向き合っていらっしゃるようでした。
また最後のディズム医者との約束事はあまりに…!名越さんならではな物語の結末で、名越さんの信念に感動しました。
豊富な知識と見解を惜しみ無く語る反面、コミカルなリアクションがとても愉快でした!


他にもぱんちゃんさんとでび様の可愛らしいやり取り、ぺれさんの舞台を楽しんで演じるような自然体な様子、やはり格好良くて優しいどこまでもヒーローなJBさんなどなどみなさん公演ごとにその人の人柄や考えの色がでていてどれも本当に面白かったです。
公開してくださったことで考えの多様性の面白さを再認識できる、素晴らしい作品だと思いました。
制作に携わった方全てに本当に感謝です。

(そういえば、動画の自動字幕でマコトの表記が“真”になっていたりして、ふと思ったのですが
“マコト” “ユウリ” “アユム” それぞれの名前にはやはり何か意味や希望が込められているのでしょうか…期待せずにはいられない…)

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