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会社でバーをやったら意外とウケた

こんにちは。マクアケでIT戦略チームに所属している hoshikawas です。

昨年に続いてコミュニケーション不足に悩まされた一年となりました。これだけリモートがスタンダードとなり、仕事に臨む環境やツールが充実したとしても、パンデミック以前の世界を知っている人達にとってはやはりコミュニケーションは不足しているのだと思います。
なお、緊急事態宣言中はマクアケも基本的に在宅勤務となったものの職務上必要なスタッフは出社しており、私の所属しているチームはその急先鋒だったと自負しているわけです。

マクアケには多数の部活動があり、会社公認の部になると補助が支給されます。最近とんでもないエキスパートが入社してきた影響で俄に盛り上がっているボルダリング部や、密にならないように十分配慮してひっそり楽しんでいるゴルフ部の仲良しさ加減に対して羨望の眼差しを送っていました。逆にバスケットボールやフットサルなど活動を自粛している部もあり、社員同士のコミュニケーションが活発なマクアケでも濃淡ができています。対して私の普及させたいロードバイクなどは、未だ人数が集まらずに非公認活動状態だったりします。

そこで一部の有志がある部を立ち上げました。その名も「Bar部」。Slackのチャンネルの命名ルールに従い #club -bar というチャンネルが開設されたりして「クラブなのかバーなのか」などと揶揄されたりもしました。
バーテンダー役がカクヤスでお酒を注文する→届く→Bar開店を予告してオフィスの片隅で終業後にお酒を並べる→社員がやってきたらお酒を混ぜて提供する→飲んだら帰る というそれのどこか部活動なのかとお叱りの言葉をいただきそうなルーズっぷりですが、最近では思いの外盛況です。
活動を始めた当初は、告知を見た人もおそるおそるという感じで覗きにくるぐらいで、その存在を知らない人にいたっては「一体こいつはここで何をやってるんだ」というような奇異の目を向けられたりもしました。それがいつの間にか口コミで広まり、社内のラジオ番組(!)にCMを流したりして、忘年会シーズンに突入しようかという最近ではすっかりメジャーで、頻繁に活動している部の仲間入りです。

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バーのコンセプトは「1日に出すお酒は1種類だけ」「1杯飲んだら終わり」「飲みに来るなら退勤打刻してから」「飲んだら帰る」という、長時間労働削減に貢献するものになっています。一部の酒好きからは「2杯目を飲ませろ」というような要望が来たりしていますが、そこは心を鬼にしてお帰りいただくように努めています。もっとも役員クラスが乗り込んできた場合に、その決意が揺らがない自信はありません。

バーを名乗る以上、単純に缶ビールを渡して終了みたいなことはせずにカクテルを出すようにしています。「バーで一番売れるカクテルはジントニック」という話をどこかで聞いたことがあるのですが、私自身はジントニックを頼まないので「そんなものか」と思っておりました。試しに先日ジントニックを用意したところ、あっという間にトニックウォーターがなくなり品切れ御免となりました。バーで一番売れるのは本当にジントニックのようです。
面倒くさいので基本的にビルドで作れるカクテルを主にしています。それでも私のロッカーの中にはシェーカーも入っていて、XYZの回を開催したこともあります。シェークは作るまでに時間がかかるのと、作った後の氷のやり場に困るのでボウルなどを用意していかないといけないかもしれません。中にはタチ悪の「シェークとステアのマティーニを飲み比べたい」なんていうジェームズ・ボンドを気取ったリクエストが来たりしています。今のところお断りです。

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こんなBar部は不定期開催。バーテンダーが「今日はいい仕事をした」「仕事で失敗した」などの個人的な理由(勝手)で突発的に店を開ける場合もありますし、「地方勤務のレア社員が出張でやってくるから」「期も無事に締まったし」のような動機のときもあります。最近では他のチームの打ち上げ(こんな世の中なのでオフィスでひっそりやる慎ましさ)のお酒を振る舞うオペレーションだけ業務委託で請け負ったりもしています。

Barの賑わいを見ながら、タダ酒に惹かれて人はやってきているわけではないと実感します。いつもの常連がやってきたり、初めての人がやってきたり、ソフトドリンクしか飲めなくても様子だけ見に来る人がいたり。人はまだリアルなコミュニケーションの魅力に抗えないフェーズにいるのでしょう。「ひさしぶり」「はじめまして」などの言葉が飛び交うのを、お酒を混ぜながら本当に楽しく眺めています。私もまた抗えない種族の一人なのです。

「ぼくは店を開けたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、冷たくて、何もかもぴかぴかに光っていて、バーテンダーが鏡に向かって、ネクタイが曲がっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。酒の壜がきれいに並び、グラスが美しく光って、客を待っているバーテンがその晩の最初の一杯を振って、綺麗なマットの上に置き、折り畳んだ小さなナプキンを添える。それをゆっくり味わう。静かなバーでの最初の静かな一杯。こんな素晴らしいものはないぜ」

レイモンド・チャンドラーの名作「長いお別れ」の中でテリー・レノックスはこんな風に語ります。私はお客様を迎える方の立場ですが、オフィスの片隅でバーを開ける瞬間がやはり好きです。仕事を終えて、まだ業務を続けている人達の様子を窺いながら冷蔵庫からジュースと氷を取り出します。自分のロッカーからアイスペールやバースプーンやメジャーカップを出してきて、最後はデスクの足元にある箱からお酒を運んで、今日は一体何人が来てくれるのだろうかと考えたりします。誰か特別なゲストのための日だったり、他のチームの業務委託の時にはしなれないネクタイも締めたりして。
そして静かな時間が過ぎて、最初の一人がやってきてくれた時に「もう今日は他に誰も来なくてもいい」とさえ思うのです。もっとも、そんな思いは次第に賑わいが増してきて、人達の楽しそうなお喋りの熱気の中に霧散していってしまうのですけれど。

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自宅でカクテル遊びをやったことがある人はわかると思いますが、カクテルのレシピはリキュールやジュースを等量で消費していくわけではありません。XYZのようにラムとコアントローとレモンジュースのようなカクテルでは、ラムの半量しか使わないコアントローやレモンジュースは余ります。アンゴスチュラ・ビターズなど買おうものなら1杯に対して数滴しか使わないので、一生なくなりません。
そんなわけで今、私のデスクの足元は余ったお酒で溢れかえっています。具体的にはコアントロー(XYZの余り)、ピーチツリー(レゲエパンチの余り)、マリブ(マリブカクテルの余り)、アマレット(アマレットジンジャーの余り)などなど枚挙に暇がありません。いつか怒られるんだろうなと思いながらも、「アマレットとマリブは混ぜられないし仕方がない」と今はただ箱を奥の方にしまい込んで見えないようにしています。

こんなヤクザなバーテンダーは、今夜も皆様のご来店をお待ちしています。

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