Episode1−1『彼女Aとの出会い』

これは、星影(僕)が幼少期のことだ。
「やだ…!止めて!蹴らないで!叩かないで!」
僕は吐血しながら泣いて周囲の人に助けを求めた。
「嫌なこった!お前『忌み子』らしいじゃないか!親から聞いたぞ!『忌み子』は世の中から要らない。お前なんて消えてしまえ!」
この地域では古くから伝わる「伝説」があった。
それは、こんな話だった。
−忌み子から放たれた8つの天災。
それが集うとき世界は崩壊する。
それを止める方法はたった1つ。
その忌み子を彼岸花の毒で殺めるか、
神の生贄に捧げ、生き神とするしかない。−
その「伝説」が未だに残っていたこの地域では僕が「普通の人間」として生きることは難しかった。
毎日、地域の人たちからは暴力を振るわれ、親は僕が「忌み子」と知ってからとても態度が冷たくなり、もう死ぬしかないと思ったその時だった。
−「ちょっと!何してんの!この子…血吐いてる!それ以上この子に手を出したらウチが許さんよ!」−
遠のく意識の中でちょっと気の強い女の子の声が聞こえた。そして、その女の子に背中を擦ってもらったら自然と今まで痛かったところが何故か痛くなくなって、傷口も全部治っていた。その痛みが無くなったせいなのか、助けてくれる人がいたことに安心したせいなのかその場で僕は気絶するように眠ってしまった。

−これが僕の「命の恩人」であり「唯一の理解者」でもあり「先輩」である彼女Aとの最初の出会いだった。−

そして、僕が目を覚ましたときには夜で保健室のベットの上で寝ていた。
「ん…あ、あれ?僕、何でこんなところに…?」
「星影さん目が覚めた?さっきAさんがここに貴女を運んできてくれたのよ。Aちゃんは横でぐっすり寝てるよ。」
保健室の先生が言うとおり確かに隣のベットを見たら彼女はぐっすり寝ていた。
そう、僕を助けてくれたAちゃんは「回復特攻」。
いわゆる「ヒーラー」の能力者だったのだ。
そして、別の日に給食の時間に彼岸花の毒を盛られ危うく死にかけたときがあった。流石にもう助からないと死期を悟った僕だったが、それでもAちゃんは僕のことを全力で助けに来てくれた。そのときに僕はAちゃんにあることを聞いてみた。
「何でAちゃんはいつも忌み子である僕のことを全力で助けてくれるの?」
「ん〜特に理由は無いけど…何か零ちゃんのことほっとけないんだよね…」
「でも、僕を助けたことによってAちゃんがいじめられるのは…僕、耐えられないよ…だから…僕とは…」
「『これ以上関係を続けるのは危険』って言いたいん?大丈夫や!ウチはそこまで弱くないから!」
そのAちゃんの一言が僕はとても嬉しかった。
今まで僕が忌み子としての能力がゆえに周囲から避けられ、暴力を振るわれてきて「人の優しさ」を全く知らなかったせいからなのか、Aちゃんのその一言で僕は泣き崩れてしまった。
そういうことがあったからなのか、あの日を境に僕達はお互いの家を行き来したり、お互いの秘密を共有したりいろいろするようになった。
そして、Aちゃんが小学校卒業する前にAちゃんから
「ねぇ…?めっちゃ急なんだけどさ…ウチと付き合ってくれへん?女子同士で付き合うってのも変な話だけど…ダメかな?」
僕は、一瞬返事するのに戸惑った。
それでも僕はAちゃんとずっと一緒にいたかったし、僕のことを理解した上で付き合ってくれる人はAちゃんぐらいしかいなかった。
「Aちゃんとなら…付き合ってもいいけど…僕と一緒にいるとまた…」
「何?『またいじめられる』って言いたいの?大丈夫よ〜!ウチはそんなことでヘタれるような奴やないから!零ちゃんは心配しなくていいのっ!ウチが零ちゃんと一緒にいたくているんだからね!」
そして僕達はなんだかんだで付き合うことになった。
お互い学年が1つ違うこともあって、Aちゃんが中1で僕が小6のときは学校の行き帰りはできるだけ毎日一緒にしてた。
そして僕が中学に進学したとき、僕達は更に酷いいじめを受けた。僕が中1の頃はまだ「同性愛」ってのは差別の対象だったこともあり、もっと酷いいじめを受けた。それでも「彼女と一緒なら乗り越えられる」と思っていた。でも、彼女が受けていたいじめは僕が想像する異常に酷かった。僕はまだ叩かれたり蹴られたりの暴力と言葉の暴力だったけど、彼女の場合は性暴力だったのだ。それを目の前で見た僕は我慢できずにそこにいた先生、先輩を全員病院送りにしてしまった。
その時、駆けつけた他の先生達から「なんてことするの!」と怒鳴られたと同時に彼女の口から「零ちゃんは何も悪くない!むしろウチを守ってくれた!」と先生に立ち向かってくれたのだ。先生も他の先輩は口を揃えて僕のことを「忌み子」って言うけれど、Aちゃんだけは僕のことを「彼女であり唯一の親友」って言ってくれた。そんな彼女を僕は命を懸けて全力で守りたいって思った。でもその矢先、僕達はある「黒幕」と対峙することになった。
僕が中2の頃、彼女は中3で彼女の高校受験のために僕達は学校内ではできるだけ距離を置いてた。
それでも、通学の行き来は絶対一緒にいたけれど彼女の顔はどんどん窶れていき、最終的には彼女は笑えなくなった。僕が一緒にいたらまだ言葉の節々に嬉しいっていう感じは聞き取れるけど、表情はずっと暗い顔のままだった。彼女が確実に「辛い環境」に置かれていたのは事実だった。
僕は彼女がいないところで他の先生達に土下座して「彼女を助けてほしい」と頼み込んでも先生達は「『忌み子』の言うことなんて聞くわけないやん!」と言われ拒絶されてしまった。そう、あの黒幕にも土下座して頼み込んだが「私達の学年に『いじめ』なんてものはない」と言われてしまった。
しかし、そんな「辛い環境」に置かれて笑えなくなった彼女が唯一笑ったときがあった。
そう、それが7月21日の金曜日の帰り道。
いつものように一緒に下校していたときに彼女が笑いながら「来週の月曜日遊べへん?久しぶりにデートしたいんや!」って言ってきたときがあった。
僕は「午前中は三者面談で厳しいかもしれんけど、午後からなら遊べるよ?」と答えたとき一瞬彼女がまた暗い顔になった。でもまた彼女は笑顔で「なら月曜の午後からあのバス停で待ち合わせやね!」と言ってきた。僕は「うん!わかった!それじゃあまたね!」と言って彼女と別れて家に帰った。だけどその時、僕は何か嫌な予感がした。そう「あの音」がしたのだった。「あの音」が聞こえると僕の身に何かしら不幸が降りかかるのだ。
そして、約束の月曜の朝いつものようにLINEをしていた。僕から「今日のデートどこ行きたい?」と聞いたら「今日は朝から学校に呼ばれてるんよ〜だから13時ぐらいからデートしよ!」と返答がきた。「了解!じゃあ13時にバス停で待っとくね!」と返答した。
そう、これが僕と彼女との最後のLINEのやり取りになるとは思っていなかった。
僕が親と学校に行ったとき、門が閉まっててその場にいた先生達に事情を聞いたら、「また後日詳しいことを伝えます」と言われて家に帰らされたのだ。両親とも「何かおかしいね」と話しながら車に乗って父親が学校の周辺をぐるっと車で回ったとき、学校の4階の廊下からその真下の道路までなんとブルーシートで覆われていたのだった。でも僕はそのブルーシートの裏側を『透視』で見たときには血痕しかなかった。
そして、家に帰宅し昼食を取ろうと思って居間にあるテレビをつけてたまたま見たニュースで「広島市の中学校で『飛び降り自殺』があったようです」とテレビの画面に僕が行っていた中学校が流れていて両親とそのニュースを見て、「何があったんかね」と昼食を取りながら話していた。
そして、約束通りに13時にバス停のところに着いたけど、2時間待っても彼女が来る気配が無い。試しに彼女にLINE電話をかけた。
「…ねぇ、Aちゃんいつになったら…」と聞いた瞬間、
「こちらは佐伯警察署です。Aちゃんのお知り合いの人ですか?」と明らかに若いお兄さんの声が聞こえてしまって僕はビックリしたけど、それ以上に「警察」というワードにもっと驚いてしまった。
「あっ…はい。そうですけど…」と僕が答えた瞬間
「今から事情を聞きたいので佐伯警察署の職員が貴女のところに向かうので今いるところを教えて下さい」と場所を聞かれたので、素直に場所を答えたら本当に警察の人たちが来て警察署の方で事情聴取をした。
その時に安置所に連れて行かれ、僕は変わり果てた彼女を見た。僕は思わず黙り込んでしまった。そして、彼女の体を見たときに全身の痣、そして首元にスタンガンの跡を見つけた。
そして、その時に遺族の人達とも会った。
遺族の人達と話をしたときに、「Aは星影ちゃんのこととなるとずっと笑顔だった。実はAも星影ちゃんと同じで『忌み子』と過去に呼ばれてたの。」とそのとき初めてAちゃんの過去を教えられた。
「Aちゃんが産まれてすぐの時は私達も凄くこの地元の人達から奴隷のように日々扱われてた。だけど、星影ちゃん…貴女が産まれてから私達に向けられていた目が全て貴女に向いたの。Aちゃんはそのこともあったせいなのか『星影ちゃんがいじめられてたら絶対に守る!』ってAは毎日言ってたのよ。」と言われた瞬間、僕はそんなわけないと思ってしまったが、遺族の人達はが言うには、「忌み子であり能力者同士がお互いを引き寄せ合ったのだろう」とも言っていた。
そして、学校も地域もニュース番組とかで取り上げられたことにより、この学校名を言うだけで仲間はずれになるようになり、僕だけでなく他の人たちも極力中学校名を出さないように気をつけた。
でも、そんな矢先黒幕は僕に声をかけてきた。
「やぁ、君が星影ちゃんかい?」
「えぇ、そうですけども…I先生が一体何の御用で?」
そう、当時このI先生はAちゃんの学年の主任だった。
でも、僕とは何も共通点はないのに、「なぜ僕に声をかけてきたのだろう」と僕が考え込むぐらいとても不思議に思った。
でも、どれだけ鈍感な僕でも、どれだけこの件に興味がない生徒や先生だって、このI先生が黒幕だと気づくのはそう遅くなかった。
このI先生はきっとAちゃんのことが心底嫌いだったんだろう。あのI先生からAちゃんのことを言うときや物事を話すときは全部「悪意」が込められてて、聞いた側はずっと嫌な思いをするって感じで、僕もずっと嫌な思いをしていた。
でも、僕の周囲の人達はこのI先生のことを疑ってたけど、警察の人達は誰も子供の言うことなんて誰も信じてくれなかった。
このこともあったが故に、僕は周囲の人を信じることができなくなり、学校に行くのをやめた。
塾にも行って、成績もそこそこ取って、委員会にも入ってたということもあり、親、塾の先生、学校から毎日説教や怒号、一番酷いときには「Aちゃんの代わりにアンタが死ねば良かったのに!」とまで言われ、暴力を受けるときもあったぐらいだ。
だけど、僕はAちゃんが亡くなる前にある『7つの約束』をし、「ある集いの場」を作っていた。
ちなみに、「集いの場」の約束事とは…
「その1、絶対に何があってもくじけないこと」「その2、やりたい事をできる事にすること。」「その3、感情を抑え込まないこと。」
「その4、『普通』を覆し、新しい『世界』を作り、後世に残すこと。」
「その5、常に『自分』というものを持つこと。」
「その6、ここに集う者は『助け合いの精神』を持ち、お互いに『信頼し合う』こと。」
「その7、何か困ったことがあれば『この場所』に集うこと。」
そして「『星』のように煌めく皆の夢や理想を『叶える場所』、『劇場』のようにどんな人でも『集える場所』」という意味を込めて、僕とAちゃんはこの『集いの場』の名を『星劇場【ステラシアター】』と名付けたのだった。
でも、この星劇場【ステラシアター】は一回実質的に『解散』になった。理由としては元々入ってる人が僕とAちゃんしかいなかったから。
僕は「唯一の生きがい」であり、僕の「唯一の理解者」で「最初で最後の彼女」あったAちゃんを亡くしてから自責の念に苛まれ、周囲の大人達からの説教などもあり、この星劇場【ステラシアター】を僕の中で「このままいっそのこと彼女と一緒に過ごした時間と一緒に無かったことにしようかな」と思うぐらい正直辛かったし、苦しかった。僕の身体に支障が出るほど本当に辛く苦しかったが、そんな僕の状態を周囲の大人達は見てても誰も心配してくれなかった。
そして月日は流れ、僕が中3に進級し、受験する高校を決めるってなった際に僕はAちゃんとのある「会話」を思い出した。
「そういえば、Aちゃんはどこの高校を受験する予定なん?」
「この地元の高校を受けたいんや!この高校に受かったら絶対に進学したる!だから…零ちゃんも来年この高校の受験しなよ!零ちゃんなら絶対に受かるけん!」
僕はその言葉を思い出し、その高校を受験することに決めた。だけど、親や学校の先生からは「お前には無理だ。」と言われたが、その高校には無事受かり、本来ならAちゃんと「一緒に見るはずの景色」を僕は見て「最低でも、半年は頑張ろう」と思った。だけど、入学してクラス発表のときに同じ中学出身者がいないし、なんなら最初の自己紹介のときに出身中学校を言っただけで周りから避けられる始末。もっと酷いときは、その出身中学ってだけでいろんな雑用を押し付けられ、暴言を言われ、挙げ句の果に物も取られる始末。未だに返ってきてないものだってあるぐらいだ。
これが彼女と一緒なら乗り越えられると思っていたけど、僕の隣には彼女はもういない。
そう思った瞬間、僕はもうあの高校にはいる意味がないと思い、転校を決めた。単位やその他のことは全部今の学校に引き継げなかったが、それでもいいと思った。
そして、無事に転校して数カ月経った夏のある日、Aちゃんのお母さんから『今すぐ会いたい』と連絡があった。そのときに、Aちゃんの遺品整理で出てきたものだと思われるものを僕にくれた。
それは『青い三日月と星のストラップ』だった。
そして、そのストラップが入ってた封筒の中にある手紙も見つけた。そこには「この手紙を見てるってことは、高校受験成功したんやね!おめでとう!ついでに誕生日もおめでと!これからも一緒にいような!そして、一緒に夢を叶えようね!」と書いてあった。僕はこれを見て泣いてしまった。一瞬でもAちゃんとの思い出と星劇場【ステラシアター】の存在を消そうとした僕は本当に馬鹿で愚かだったんだなと思ったと同時に、再び星劇場【ステラシアター】を復活させようと改めて決意したのだった。

次回:Episode1-2『願いを込めて、再興!星劇場【ステラシアター】』

〜あとがき〜
Episode1-1『彼女Aとの出会い』を読んで下さりありがとうございます!(*´ω`*)
ちなみに全部事実なのでかなり重たい話になってたらスミマセン!(´;ω;`)ブワッ
僕はAちゃんから沢山いろんなことを学び、教えてもらい、「愛情」というものも沢山貰った。
だから今度は『僕なり』にだけど、Aちゃんや他の人にその「愛情」を届けたいし、伝えようと思う。
周囲の人に伝わりにくいかもしれない、もしかしたら気づいてくれない可能性だってあるかもしれないし、僕が『忌み子』だからってこともあり、拒絶されるかもしれない。だけど、それでも僕はこれからも僕のことを大切にしてくれる人達に「愛情」を届けたいし、伝えようと思います。
だから、この話を最後まで読んでくれている人にも伝えます。
『この作品を読んで下さりありがとうございます!そして、僕のことを見つけてくれて、ありがとうございます。これからも精一杯頑張るので、よろしくお願いします!』

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