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東北大学法社会学研究会のヒストリー~学生主体のアクティブな学びを展開してきた26年~

東北大学法学部の自主ゼミ「法社会学研究会」の歴史については明らかでない部分が大いにあった。東北大学創立115周年・総合大学100周年という歴史的な節目にあたり、法社研のヒストリーを辿ってみようということになった。

そもそもいつ設立されたのかも不明だったところから、過去の資料や関係者へのインタビューをもとに、団体が何を目指してどう活動してきたのかを知ることができた。調査の過程では、毎年発行してきた会誌『轍』もほぼ見つかった。長きにわたる活動の軌跡を丹念にまとめることができた。

1.調査方法

調査は2022年8月に開始し、本稿を公開した2022年度末まで続いた。

  1. 『轍』の収集・分析
    東北大学法学部同窓会事務局や同窓生のご協力のもと、2003年度分以外については全て見つかった。内容を確認し、テーマやフィールドワークを年度ごとに整理した。そして、公開できる形にまとめたほか、どのような分野が多く取り扱われてきたか、フィールドワーク先の傾向について分析した。

  2. インタビュー
    元顧問教員や同窓生などに連絡をとり、在籍中の活動実態についてお話を伺った。同窓生2名、法社研と関わりのあった弁護士には対面でお会いすることができた。また、元顧問の皆様からはメールで情報提供いただいた。

2.法社研のあゆみ

まず、1996年に法社研が設立されるまでの経緯と、その後の展開を概略的にまとめた。

法社研では、毎年、活動報告誌『轍』を発行している。ある同窓生によれば、『轍』というネーミングは、サザンオールスターズ「希望の轍」に由来するとのこと。この楽曲は、1990年にリリースされ、今もライブで盛り上がるほど有名な一曲だと思う(担当者の感想です)。

3.これまでに取り上げたテーマとフィールドワーク

設立当初から現在に至るまで、通常活動で取り上げてきたテーマ、フィールドワークの内容と訪問先を年度ごとにまとめた。また、活動テーマやフィールドワークをカテゴライズし、グラフ化した。

統計(テーマ分野別、フィールドワーク訪問先別)

2021年度まで
2021年度まで

4.調査結果を踏まえて

『轍』の収蔵
同窓会室や法社研のロッカーで見つかった2004年度以降の活動報告誌『轍』は、東北大学大学院法学研究科・法学部図書室(法図書室)に定期刊行物として収蔵していただくこととなった。毎年『轍』が発行された際には、法図書室に1冊提供し、きちんとアーカイブしていきたい。
*所蔵状況(東北大学附属図書館OPAC):https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/ZZ31030776

現メンバーの受け止め
2023年3月某日、法社研では、今回調べて分かったことを共有したうえで、法社研史に対する感想や将来の展望について、現メンバーから思うことを書いてもらったので紹介してみたい。

憲法の研究会から始まり、そこから基礎法学・理論法学へと変遷を遂げて今に至ることが分かった。法律を学ぶ上では実用的な法解釈を重視することが多くなるが、別の視点からも法律を捉えることの重要性を再認識した。歴史の長い当ゼミを今後も継承していきたく思う。

多少の変化はあったものの、会の発足当時から現在まで活動内容が大きく変化していなかったのには驚いた。昔の活動で行っていて今は消滅したものでも、復活させたら面白そうなこともあったので、今後会を運営する中で参考にしながら、さらに活動を改善させていきたいと思った。

法社研の歴史を初めて知り、たいへん驚くとともに強い親近感を覚えた。特に興味深かったのは、過去に取り上げられたことのあるテーマとフィールドワークのまとめだ。多くの分野で興味深い先行活動がなされているので、轍を読んで知見を広げながら社会で果たせる法の役割や立ち位置についてより理解を深めていきたい。

調査担当者から

史料が僅かであったなかで、多くの方々のご協力のおかげで、法社研史を明らかにできたことに達成感を覚える。活動に多少の変化はあるものの、フィールドワークを重視する姿勢、その時々の社会を取り巻く諸問題に対するアンテナの高さといったことが変わらず継承されてきたと実感した。
過去に取り上げられてきたテーマをみると、社会保障や過疎化など、平成の間にずっと話題であり続けた事柄もあれば、憲法、夫婦別姓、外交・安全保障など、当時から進展がなかったり、現在進行形で重要性が高まってきていたりする問題もあった。
関係者へのインタビューでは、今も法社研が続いている事実に驚きつつ、嬉しいとのお言葉が相次いだ。後輩には、法社研の軌跡に思いを致しつつ、現代社会の様々な問題への関心を深め、学部で学ぶ法学・政治学がどのように関わり合っているのか意識して、いろんな方々のお世話になりながら長く活動を続けてもらえれば有難く思う。

謝辞

今回の調査にご協力いただきました東北大学法学部同窓会事務局、歴代顧問、元メンバー、関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。今後とも東北大学法社会学研究会を見守っていただきますよう宜しくお願い致します。


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