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美馬森 八丸牧場で行われた ホースマンシップ・ショーは、日本ではめずらしいハイ・レベルなパフォーマンス

美馬森 八丸(みまもり はちまる)牧場は、宮城県東松島市にある馬の牧場。

オーナーである八丸 由紀子さんは、TVでも話題になった「馬車馬ダイちゃん」でも有名な方なのですが、仙台市の村上さんという方からご紹介をいただき看板のお仕事に少し関わらせて頂いたというご縁がありました。(八丸さんとダイちゃんについては、リンクを参照のこと)


その村上さんは、遠く仙台にありながら、私の飼養していた対州馬ひん太の為にいつも気がけて出身地である福島のリンゴや牧草などを贈って応援してくれていた方なのですが、去る11月3日に美馬森牧場において行われた「ホースマンシップショー&馬ルシェ」という催しにおいてホースマンシップのショーを披露されておられます。
過日、その時の動画を送っていただきましたが、これは本当にハイ・レベルのホースマンシップのショーでした。

私は以前、福岡のとある乗馬クラブで馬術の発表会を観覧したことがあります。(そのクラブにいた対州馬を買い取る交渉の為。結局、交渉は成立しなかった)
乗馬クラブは立派な施設を有しており、まるで工場のような「歩行場」では馬たちが機械的に円を描いて歩かせられていました。
最後にドイツから輸入したという体格のいい馬に騎乗したオーナーの御曹司は、見事な歩容の技を披露しましたが、私にとってそれらは「馬が成し遂げたこと」にしか見えませんでした。

村上さんから送られてきた動画を拝見して、あきらかに今まで見たことのある馬のパフォーマンスとは違うことに驚きました。

馬を知る人ほど、そのすごさはお判りいただけると思いますが、敢えてその観点を箇条書きにして表してみたいと思います。

①ショーでは、村上さんが脚にギプスをして登場という設定になっています。つまり、人の動きをミニマムにしながら最小限の動き・サインで馬とコミュニケーションを交わし、活動するという設定でこれこそクラウス・フェルディナンド・ヘンプフリンクがその著「馬と踊ろう」の中で述べている、「最小限の扶助で、美しく馬を動かす」という命題を設けているわけです。

②人が馬の後方から歩いて指示を与えるという位置関係は、馬と人との信頼関係が構築されていなければ成立しないことです。
最も、馬に制御の力を与えられるのは、馬のやや前方の位置で、基本は人が馬の優位に立つには、馬を自分より先に進ませないというのが初期の鉄則です。

③人が座ったまま、その周りを馬が旋回するという動きは、非常に高度な内容です。何故なら、馬に支持を出すのは声や音(舌鼓など)だけではなく、身体の向きと位置関係が非常に重要で、それらを総称して「馬語を話す」ことになるからです。
通常、馬を追っていくには馬の斜め後方から鞭や音を出して行っていきます。

④馬の後ろに立つことも馬がその人に対して、絶大な信頼を抱いていることを表します。何十年も馬に携わっている人でも、絶対に馬の後ろには立たないという人もいます。それは、馬が突然、強烈なキックを人にお見舞いしている姿をみた経験があるからです。
また、尻尾を軽く引いて交代させるということも、高度な信頼関係を表しています。もちろん馬にとっての死角である尻尾を引っ張られることは、恐怖なことだからです。

⑤丸い障害物を恐れずに押し返しすことも、馬にとってはなかなかできないことです。
馬はとにかく見慣れないものが怖くてたまりません。
森林の道を歩いていて、たまたま未知の脇に薪が積んであり、シートが被せてあるだけで馬は一歩もそこから進まなくなることだってあるくらいです。
大きな丸い球体は、初めてみたものでは無いはずですが、慣れさせるためには長く根気強い時間が必要なのです。

⑥台の上に乗ることもそうですね。馬は足元がよく見えません。だから自分の体より小さな部分に乗ることはとても難しいことなのです。
また台の上に乗ると、地面とは違う音がします。その音もまた馬にとって好ましくないことです。
ですから、この台に乗せる動きにも信頼をベースにした根気強い練習(慣れ)が必要なのです。


まだまだ要素はあるのですが、長くなるのでこれくらいにします。
これらの高度なパフォーマンスを行った村上さんは、馬を愛するホースマンですが、けっして馬のスペシャリストというわけではありません。

どちらかというと、在来馬などあまり陽の当らない馬たちを応援してくださる心のあたたかい本当の馬好きの方です。

よくここまで信頼関係を築き、パフォーマンスを成し遂げられたなと、もはや感動します。
最後、馬が台に乗るのを躊躇していて時、動画を見ながら心の中で「がんばれ!」と叫んでいました。そして乗った時は、ガッツポーズをしました。

そして退場していく時の馬の表情は実にうれしそうな顔をしているように見えました。


日本に、このように本当に馬に対しリスペクトの基本を持ちながら信頼関係を築いたホースマンシップが行わていること。そのことを知ることができたことは、本当にうれしいことでした。



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