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子ども日本風土記 (福島) 「 冬の通学 」
冬の通学
冬の通学はつらい。わたしは六年生なので、幼ち園の子の手をひいて先頭にたったり、 一番後ろで下級生に注意をしたりする。そして注意をしたり、はげましたりしているときに、六年のわたしが、こんなことばかりして
いていいのかと考える。でも他にやることはない。
雪がたくさん降っても、風が吹いてない時はよっぽどよいが、風が吹いている日などは、わたしが幼ち園の子について、先頭になっている時に、後ろにならんでいる下級生が、おくれたり、すべったりするので、わたしは大声で注意をする。
そのときは、すぐ走って来るのだが、また少し過ぎるとおくれる。いつもそういうことのくり返しだ。
この前のふぶきはひどかった。道路のわきに除雪した雪が、北風に飛ばされて、わたし達の方ヘビュウビュウと向かってくる。呼吸もやっとだ。まわりはただ、ばくぜんと灰色で、道路はでこぼこ。 一メートルとはなれて
いないのに、すぐ目の前の人が見えなくなってしまう。
雪は、砂のように、強くわたしの顔に、体にあたる。風のために風下へ飛ばされそうにもなる。よく目をあけて 見ることさえできなくなる時もある。わたしはそのとき、 幼ち園の子についた。
幼ち園の子は、顔をまっ赤にして、今にも泣き出しそうだ。
わたしはかたに手を回し、自分 のカバンを幼ち園の子の、顔の少し前に当て、顔に雪が あたらないようにしてやった。
そして、「よっぽどよくなったべ」
と聞くと、
「うん」
と返事をくれる。
わたしはとてもうれしくなった。だが、わたしは、すぐに手がつかれてしまい、カバンをふつうどうりに持ってしまった。
また、大きい車などが通るときは、後ろを向き、大声で、
「車来たがら、なるべぐはじによげろよ」
と言う。
でもはじの方は、雪がはきためてあるので、思うようによけられず、車がすれすれに通っていく、車体がゆれて、ぶつかりそうになる。
そのときは、はらはらだ。
幼ち園の子は、
「つみて」
と言って、手をポケットにしまってしまう。
わたしも手や足が、冷たいのを通りこして、手は痛くなり、足は感覚がなくなってしまうくらいだ。
それでもちこくはしたくないので、いっしょうけんめい、幼ち園の子をひっぱりながら進む。
そして学校についた時は、ホッとするのだ。
(耶麻郡 猪苗代町 月輸小 六年 土屋 桂子)
自分が小学校低学年の頃は、上級生のお兄さん、お姉さんというのは、本当に頼りになるし、尊敬に値する存在だった。
特に私には2歳年上の兄がいたので、兄の友だちと接することも多かった。
誰もが、「たっちゃん、たっちゃん」と可愛がってくれた。
遊びに混ぜてくれる時は、「お味噌ルール」というのか、ちゃんとハンデをつけてくれて、嫌な思いをしたことはなかった。
そんな年上の存在が、まったく尊敬にも値しなくなってしまったのは、就職を機にであったように思う。
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