子ども日本風土記 (福島) 「 冬の通学 」 1 江島 達也/対州屋 2023年5月10日 07:17 冬の通学冬の通学はつらい。わたしは六年生なので、幼ち園の子の手をひいて先頭にたったり、 一番後ろで下級生に注意をしたりする。そして注意をしたり、はげましたりしているときに、六年のわたしが、こんなことばかりしていていいのかと考える。でも他にやることはない。雪がたくさん降っても、風が吹いてない時はよっぽどよいが、風が吹いている日などは、わたしが幼ち園の子について、先頭になっている時に、後ろにならんでいる下級生が、おくれたり、すべったりするので、わたしは大声で注意をする。そのときは、すぐ走って来るのだが、また少し過ぎるとおくれる。いつもそういうことのくり返しだ。この前のふぶきはひどかった。道路のわきに除雪した雪が、北風に飛ばされて、わたし達の方ヘビュウビュウと向かってくる。呼吸もやっとだ。まわりはただ、ばくぜんと灰色で、道路はでこぼこ。 一メートルとはなれていないのに、すぐ目の前の人が見えなくなってしまう。雪は、砂のように、強くわたしの顔に、体にあたる。風のために風下へ飛ばされそうにもなる。よく目をあけて 見ることさえできなくなる時もある。わたしはそのとき、 幼ち園の子についた。幼ち園の子は、顔をまっ赤にして、今にも泣き出しそうだ。わたしはかたに手を回し、自分 のカバンを幼ち園の子の、顔の少し前に当て、顔に雪が あたらないようにしてやった。そして、「よっぽどよくなったべ」と聞くと、「うん」と返事をくれる。わたしはとてもうれしくなった。だが、わたしは、すぐに手がつかれてしまい、カバンをふつうどうりに持ってしまった。また、大きい車などが通るときは、後ろを向き、大声で、「車来たがら、なるべぐはじによげろよ」と言う。でもはじの方は、雪がはきためてあるので、思うようによけられず、車がすれすれに通っていく、車体がゆれて、ぶつかりそうになる。そのときは、はらはらだ。幼ち園の子は、「つみて」と言って、手をポケットにしまってしまう。わたしも手や足が、冷たいのを通りこして、手は痛くなり、足は感覚がなくなってしまうくらいだ。それでもちこくはしたくないので、いっしょうけんめい、幼ち園の子をひっぱりながら進む。そして学校についた時は、ホッとするのだ。 (耶麻郡 猪苗代町 月輸小 六年 土屋 桂子)子ども日本風土記(福島)自分が小学校低学年の頃は、上級生のお兄さん、お姉さんというのは、本当に頼りになるし、尊敬に値する存在だった。特に私には2歳年上の兄がいたので、兄の友だちと接することも多かった。誰もが、「たっちゃん、たっちゃん」と可愛がってくれた。遊びに混ぜてくれる時は、「お味噌ルール」というのか、ちゃんとハンデをつけてくれて、嫌な思いをしたことはなかった。そんな年上の存在が、まったく尊敬にも値しなくなってしまったのは、就職を機にであったように思う。 ダウンロード copy #子どもの作文 #日本子ども風土記 #福島県耶麻郡 #耶麻郡猪苗代町月輸小 1 ※「チップ」は有難く拝受させて頂きます。もし、この記事が多少でも役に立った、或いは「よかったので、多少でもお心づけを」と思われましたら、どうぞよろしくお願いいたします。贈って頂いたお金は1円たりとも無駄にせず大切に使わせて頂きます。 サポート